性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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7.どこから入ってきたんだ!?

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 本当に、この人は一体、どう言うつもりなんだろう……

 騙されたりなんかしない。今さら、期待もしない。だって、何度そうして酷い目にあってきたか分からない。

 僕は、その男から顔を背けた。

 するとヴァトズフィウズ様は不思議そうに言う。

「どうした? 食べながらでいい。少し、話を聞かせてくれないか?」
「…………だめ……です……」
「なに?」
「……僕にそんなことをして、フォルゲソスの一族と、喧嘩になっても知りませんよ」

 言って僕は扉に振り向くと、体の魔力を引っ張り出して、扉に魔法をかけた。

 激しい、爆発のような音を立てて扉は吹っ飛んで、僕は外に放り出される。

 今しかないと思った僕は、その場を走って逃げ出した。







 死ぬ気で階段を駆け上がり、魔法で空を飛んだ僕は、自分の部屋に飛び込んだ。

 まだ胸がひどくドキドキしてる。痛いくらいだ。
 そこをぎゅっと抑えて、ふらふらと部屋に立った僕は、部屋に鍵の魔法をかけた。何重にもかければ、きっともう、あの人だって入ってこない。

 僕にあてがわれた部屋は、城の端にある、もともと倉庫だった部屋。フォルゲソスの部屋がそばにあるのがすごく嫌なんだけど……

 だけど、今あの人から身を隠せるとしたら、ここしかない。

 なんなんだ……一体、どういうつもりだ? 帰ってきたばかりだから、分からないのかな……

 こんなことをして、フォルゲソスの一族と仲違いしたら、ヴァトズフィウズ様だって困るはずだ。

 だけど……いきなり飛んで逃げること、なかったかな…………

 突然逃げ出すなんて、だいぶ失礼なことをしたんだし、腹を立てたはず。きっと、これでもう、ヴァトズフィウズ様はあんなことをしないだろう。今ごろ、護衛や従者たちが注意しているはず。僕にそんなことをすると、フォルゲソスの一族に怒鳴られるって。

 とにかく、今日はもう早く魔力を回復させて寝よう……

 ふらふらとベッドに近づくと、背後から足音がする。
 振り向いたら、ヴァトズフィウズ様が、さっきとまるで変わらない様子で、パンの入った袋を持って、そこに立っていた。

 何してるんだ、この人っ……!!

 僕、ちゃんと鍵かけたはずなのに。

 それも、本気で何度も鍵の魔法をかけたのに!!

 扉に駆け寄ると、僕が扉にかけた魔法は全部解かれている。

 なんでっ……ヴァトズフィウズ様の魔法か!? こんなことができるなんてっ…………!!

 驚く僕の前で、ヴァトズフィウズ様はキョトンとしたような顔をして、首を傾げる。まるで、勝手に部屋に入ってきた人にびっくりしている僕の方がおかしいと言わんばかりの仕草だ。

「どうした?」
「どうしたって……だ、だって、ここ、僕の部屋……」
「もしかして、部屋に入ったことを怒っているのか?」
「…………い、いえ……お、怒ってるっていうか……びっくりして……か、鍵の魔法をかけたのに…………なんで、ここに……」
「鍵の魔法なら解除した」

 するなよ。

 なんで僕が僕の部屋にかけた鍵を勝手に開けるの?

 ここ、狭くて汚くてボロボロだけど、一応僕の部屋だぞ!

 ノックも一度もなかった。あれだけの鍵の魔法を、全部解除して、しかも僕の背後に立っていたんだ。

 なんなんだ、この人……

 フードをかぶってローブを着て、顔が見えないからか? なんだか、得体が知れない。
 でも、フォルゲソスたちが、「ヴァトズフィウズ様」って呼んでたし、本人で間違いないはず。侯爵家の御令息は、恐ろしい魔力を持っているって聞いたけど……なんだか……よく分からない人だ。

 もう唖然とするしかない僕に、その人はさっきと同じようにパンを差し出してくれる。

「逃げることはないだろう? 食事にしよう。そのままだと、倒れてしまう」
「…………」

 食事のために、ここまできたのか? 鍵も全部開けて?
 
「で、でもっ……い、いいんですか!? こんなことをしてっ……フォルゲソスの一族は腹を立てるんじゃ…………」
「放っておけ。そんなもの。俺は、腹が減った」
「…………」

 その男は、テーブルに勝手にまたテーブルクロスをかけている。

 テーブルクロスも持ってきたんだ……
 放っておけって…………いいのか?
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