7 / 61
7.どこから入ってきたんだ!?
しおりを挟む本当に、この人は一体、どう言うつもりなんだろう……
騙されたりなんかしない。今さら、期待もしない。だって、何度そうして酷い目にあってきたか分からない。
僕は、その男から顔を背けた。
するとヴァトズフィウズ様は不思議そうに言う。
「どうした? 食べながらでいい。少し、話を聞かせてくれないか?」
「…………だめ……です……」
「なに?」
「……僕にそんなことをして、フォルゲソスの一族と、喧嘩になっても知りませんよ」
言って僕は扉に振り向くと、体の魔力を引っ張り出して、扉に魔法をかけた。
激しい、爆発のような音を立てて扉は吹っ飛んで、僕は外に放り出される。
今しかないと思った僕は、その場を走って逃げ出した。
*
死ぬ気で階段を駆け上がり、魔法で空を飛んだ僕は、自分の部屋に飛び込んだ。
まだ胸がひどくドキドキしてる。痛いくらいだ。
そこをぎゅっと抑えて、ふらふらと部屋に立った僕は、部屋に鍵の魔法をかけた。何重にもかければ、きっともう、あの人だって入ってこない。
僕にあてがわれた部屋は、城の端にある、もともと倉庫だった部屋。フォルゲソスの部屋がそばにあるのがすごく嫌なんだけど……
だけど、今あの人から身を隠せるとしたら、ここしかない。
なんなんだ……一体、どういうつもりだ? 帰ってきたばかりだから、分からないのかな……
こんなことをして、フォルゲソスの一族と仲違いしたら、ヴァトズフィウズ様だって困るはずだ。
だけど……いきなり飛んで逃げること、なかったかな…………
突然逃げ出すなんて、だいぶ失礼なことをしたんだし、腹を立てたはず。きっと、これでもう、ヴァトズフィウズ様はあんなことをしないだろう。今ごろ、護衛や従者たちが注意しているはず。僕にそんなことをすると、フォルゲソスの一族に怒鳴られるって。
とにかく、今日はもう早く魔力を回復させて寝よう……
ふらふらとベッドに近づくと、背後から足音がする。
振り向いたら、ヴァトズフィウズ様が、さっきとまるで変わらない様子で、パンの入った袋を持って、そこに立っていた。
何してるんだ、この人っ……!!
僕、ちゃんと鍵かけたはずなのに。
それも、本気で何度も鍵の魔法をかけたのに!!
扉に駆け寄ると、僕が扉にかけた魔法は全部解かれている。
なんでっ……ヴァトズフィウズ様の魔法か!? こんなことができるなんてっ…………!!
驚く僕の前で、ヴァトズフィウズ様はキョトンとしたような顔をして、首を傾げる。まるで、勝手に部屋に入ってきた人にびっくりしている僕の方がおかしいと言わんばかりの仕草だ。
「どうした?」
「どうしたって……だ、だって、ここ、僕の部屋……」
「もしかして、部屋に入ったことを怒っているのか?」
「…………い、いえ……お、怒ってるっていうか……びっくりして……か、鍵の魔法をかけたのに…………なんで、ここに……」
「鍵の魔法なら解除した」
するなよ。
なんで僕が僕の部屋にかけた鍵を勝手に開けるの?
ここ、狭くて汚くてボロボロだけど、一応僕の部屋だぞ!
ノックも一度もなかった。あれだけの鍵の魔法を、全部解除して、しかも僕の背後に立っていたんだ。
なんなんだ、この人……
フードをかぶってローブを着て、顔が見えないからか? なんだか、得体が知れない。
でも、フォルゲソスたちが、「ヴァトズフィウズ様」って呼んでたし、本人で間違いないはず。侯爵家の御令息は、恐ろしい魔力を持っているって聞いたけど……なんだか……よく分からない人だ。
もう唖然とするしかない僕に、その人はさっきと同じようにパンを差し出してくれる。
「逃げることはないだろう? 食事にしよう。そのままだと、倒れてしまう」
「…………」
食事のために、ここまできたのか? 鍵も全部開けて?
「で、でもっ……い、いいんですか!? こんなことをしてっ……フォルゲソスの一族は腹を立てるんじゃ…………」
「放っておけ。そんなもの。俺は、腹が減った」
「…………」
その男は、テーブルに勝手にまたテーブルクロスをかけている。
テーブルクロスも持ってきたんだ……
放っておけって…………いいのか?
105
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる