性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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9.絶対に諦めそうにないな……

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 急に僕を誘うなんて、一体どういうつもりだ?

 驚いている僕に、ヴァトズフィウズ様はますます迫ってくる。

「部隊だ。明日また、魔物退治に行くだろう? 一緒に行こう!」
「…………えっと……い、行きません。僕、いつも一人で魔物退治しているので…………」
「だが、俺はリュイウェリレクのことを調査しろと、一族から言われているんだ。一緒に魔物退治に行けば、それもやりやすくなる」
「……………………あの……調査って、僕がフォルゲソスに手を上げたことを調査しにきたんじゃないんですか?」
「ああ…………そうだな。だがもう、そっちはどうでもいい」
「どうでも!?」

 どうでも良くはないだろ。だって、そのために来たって、僕に言ったじゃないか。フォルゲソスのためにここに来たんじゃなかったのか?

 それなのに、ヴァトズフィウズ様は、本当にどうでもいいかのように、僕に迫ってくる。

「もしかして…………もう、他の一族から誘われているのか?」
「い、いえ……そんなことはありません。ただ、その……僕は、ずっと一人で魔物退治をしていたので……そ、それより、本当にいいんですか? フォルゲソスに僕が手を上げたこと……」
「ああ。フォルゲソスは、リュイウェリレクが自分に拘束の魔法をかけたと言って喚いていたが、そんなことができるほど、器用に魔力は使えていない。鍵の魔法も、本当はそんなに得意ではないのだろう?」
「は、はい……どちらかと言うと、苦手です……」

 だから、扉にはいくつも魔法をかけていたんだ。一つ破られても、簡単に侵入されないように。

 ヴァトズフィウズ様は「だろうな」と言って続けた。

「攻撃の魔法も、広く壊す魔法は得意なようだが、使い魔を打ち落とそうとはしていなかったし、小回りのきく魔法は苦手なようだ。そんな奴に、護衛たちを足止めしてフォルゲソスを縛り上げ、斬りつけるような魔法は使えないだろう」
「…………あの……その、斬りつけるとか縛り上げるとか、フォルゲソスが言ったんですか?」
「ああ、そうだ」
「…………」

 あいつ……本当に好き勝手なこと言ってたんだな……どれだけ僕を凶悪犯にしたいんだよ!!

 腹立たしく思うけど……それなら……

「あ、あの…………じゃあ、僕がフォルゲソスに手を上げたんじゃないって分かってくれたんですか?」
「ああ」
「ほ、本当に!? 本当に……わかってくれたんですか!?」
「ああ。何があったのか、教えてくれるか?」
「…………はい」

 僕は、恐る恐る、少しずつ、あの日あったことを話した。

 すると、ヴァトズフィウズ様は心底呆れたように言った。

「なんだ…………そんなことか……相変わらずだな。あのゲスは」
「…………」
「それなら、リュイウェリレクは単にあいつを振り払っただけだ。手を上げたりなどしていないし、まして、炎の魔法で脅すなど、あり得ない。そういうことだろう?」
「…………あの……その、炎の魔法で脅すというのも、フォルゲソスが言ったんですか?」
「ああ。そうだ」
「…………」

 あいつ……本当に、いい加減なこと言ってるな……そんなに僕を陥れたいのか。

 イラッとしていると、急に彼は僕に向かって手を伸ばしてきた。

「は!!?? な、何っ……!?」
「ああ…………すまない。回復の魔法をかけようとしたのだが……」
「い、いいです…………そんな……一応、回復の魔法は使えますから……」
「だが……魔力も減っているじゃないか」
「い、いいんです!! 本当にっ……!! あ、ありがとうございます……気にかけていただいて」
「そんなことに礼はいらない。それより、こちらこそ、申し訳なかった。さっき廊下で、フォルゲソスを殴っただの、悪党だのと言ってしまった」
「え……」
「さっきはああ言ったが、俺の一族も、リュイウェリレクのことをそんな風に思っているわけじゃない」

 ……本当に?

 本当に本当に、信じてくれたのか?

 急すぎて、なんだか僕の方が信じられない。

 だって今まで誰に言ったって、話なんて聞いてくれなかったのに!!

 けれどヴァトズフィウズ様は、鋭い目をして言う。

「もっと早く俺がここに来て、連れて行けばよかった」
「…………連れて行く?」
「…………連れて行きたくなるくらい、リュイウェリレクの魔法は素晴らしいということだ」

 ……今、少し慌てなかったか?

 やっぱりさっきから、なんとなく危ないものを感じるのだが……

 そんな僕の疑う目に気づいているはずなのに、ヴァトズフィウズ様は微笑んで言う。

「それに、婚約者に手を上げるために魔法を使ったりもしない。さっきフォルゲソスと揉めていた時や、俺に縛られた時にすぐに反撃の魔法を撃つこともなかったし、俺の拘束を切りもしなかったからな…………もっと早くここに来て、砦の主に説明しておけばよかった」
「……あの方は、大体何があったのか、分かっています。ただ、フォルゲソスには逆らえないみたいで……」
「そうか…………だが、待遇を改善するように話しておく」
「ま、待ってください!! いいんです!!」
「だが……」
「本当に、いいんです!! あ、あの……いつか自分で言おうと思っていたので……」
「そうか…………だが、揉めるようなら言えよ。俺も手伝う」
「……あ、ありがとうございます……」
「それと、俺の一族には今話したことを説明しておく。リュイウェリレクは何もしていないとな」
「ありがとうございます…………」
「それで、部隊のことは考えてくれたか?」
「……」

 まだ諦めてなかったのか……

 僕は、誰とも組む気はない。それに、ヴァトズフィウズ様は本当に分かってくれたみたいだけど、他のみんなもそうって訳じゃないし……

「申し訳ございません。とても光栄な話ですが、僕……誰とも組む気はありません」
「そうか…………」
「ご、ごめんなさい……」
「構わない。また誘う」
「…………」

 しばらく諦めそうにないな……
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