16 / 61
16.これでも我慢していた
しおりを挟むヴァトズフィウズ様は、フードを下ろした。それと同時に、着ていたローブも、黒い装備に変わっていく。さっきより、少し動きやすくしたようなもので、攻撃されるのかと思ったけど、彼は、何もしなかった。下ろしていた長い黒髪も、魔法なのか、勝手に黒いリボンで結ばれていく。だけど、結び方が下手なのか、全く結べていない髪もあって、かなりバラバラ。単に、髪が落ちてこないようにしただけって感じだ。
「確かに……見ていた。これでも我慢したんだ。本当は、直接見たかったんだぞ? あんな強力な魔法が使えるなんてな…………一族の面倒な依頼も……聞いてやる価値はあったな……」
そう言って、彼は楽しそうに笑い出す。
「だが、まさかこんなに警戒心が強いとは…………一族の情報以上だ」
「……それはどういうことですか? 僕に何の用ですか?」
「言っただろう? 俺は、魔法に興味がある。一族からも、魔法を調査するように言われてきた」
「僕のですか? じゃあ、フォルゲソスのことは??」
「あれもだ。想像の通りだった。あれはここの実権を握る気でいたようだが…………すぐに結論が出た。あれは、当主の器ではない」
さも当然のように言うヴァトズフィウズ様。
僕もそう思うけど……
「じゃあ……本当に、僕の魔法を調べるために来たんですか?」
「ああ、そうだ」
答えるヴァトズフィウズ様は、嘘をついているようには見えない。
そのために、使い魔を使って僕を見張らせていたって言うのか?
まだ半信半疑な僕に、ヴァトズフィウズ様は近づいてくる。
「一族から言われたのは、激しい爆破の魔法を使う奴がいるから、調べてこい、それだけだ」
「…………」
「一族から言われたのはな」
「…………え?」
顔を上げたら、ヴァトズフィウズ様は、すぐそばまで迫っていた。
そして、僕に向かってニヤリと笑う。
「俺自身も、リュイウェリレクの魔法が欲しくなった」
「へっ…………?」
「激しい爆破の魔法を使う奴がいると聞いていたんだ……一度は会ってみたくなるだろう?」
「…………」
そうかな? 僕が同じことを聞いても、別に会いたいとは思わないけど……
だけど、ヴァトズフィウズ様は楽しそうに近づいてきて、もう、僕のすぐそばまで来ていた。
「昨日リュイウェリレクがあの部屋で使い魔を破壊した魔法……平然と使っていたが、俺の結界に包まれていてあの威力……あんなものは、なかなか見れない」
「……え、えっと…………魔法だけなら何度でもお見せしますが……あ!! 魔法の調査にも、もちろん協力します! お世話になったし……そしたら部隊の件は諦めてくれますか?」
「嫌だ」
「な……なんで…………」
だって、魔法の調査に来たなら、僕が部隊に入る必要はないんじゃないか?
そう思うのに、ヴァトズフィウズ様は、ずいっと僕に迫ってくる。
つい、後ろに下がろうとしたら、手を握られた。
「俺は……リュイウェリレクと部隊を組みたい……」
「なんで…………僕なんですか?」
たずねると、僕の手が、一層強く握られた。
「この魔法が、欲しくなった。それに……リュイウェリレクのこともだ」
「……? 僕?」
「一緒に魔法で戦いたい。昨日二人で使い魔と戦ったとき、そう思った。絶対に……捕まえておきたいと」
92
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる