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17.あれとは取引できない
しおりを挟む捕まえてって……僕をか? なんで僕なんだ?
確かに魔法は使えるけど、同じような魔法を使える人は砦にもいるし、何より、ヴァトズフィウズ様はフィリフェント家の方。それなら、一族の城に帰れば、絶対にもっと強力な魔法使いがいるはずなのにっ…………!!
僕だって、そんなすごい貴族に誘われたら嬉しい。僕に声をかけてくれる人なんて、これまでいなかったんだから。
だから、嬉しいけど……
でも、使い魔を使って監視されるのは怖いっっ……!!
だいたい、初めて会った日から、毒の魔法でキャマバラーデを倒しちゃうし、拷問部屋には連れてかれたし、鍵は勝手に開けて、いつのまにか後ろに立ってるしっ……!!
さすがに怖いよ!! 映像って、なに!?? 何でそんなの勝手に記録してるんだよ!!
ご飯とか、たびたび助けてくれたことは、本当に嬉しかった。感謝もする。そのお礼ができたら、僕だって嬉しい。
だけど、部隊に入るのは無理です!
「あ、あの……ヴァトズフィウズ様…………」
「どうした? 声が震えているぞ」
それは怖いからだよ……
なんだか、こんな風になる僕の方がおかしいと言わんばかりの態度だけど!!
「き、気にしないでください……昨日のことを思い出しただけです。あの…………」
「なんだ?」
……普通に断っても、また部隊に入れ、入らないの言い合いになるだけだ。
「えっと…………戦うのは構わないのでっ…………も……もう、こうして一緒に魔物退治に出てしまったし…………あの! き、今日だけ、今日だけ一緒に魔物退治しましょう!! そしたら、部隊は諦めてくれませんか?」
彼にはお世話になった。監視と拷問部屋と僕の部屋への侵入は困るけど、彼だって、一族に言われて来ているなら、簡単には引き下がれないはず。
これから強力な魔物退治に行くんだし、この人を危険なところに連れて行くことはしたくないけど、多分そう言っても聞いてくれない。だったらせめて、魔物と戦う時に魔法を見せて、彼の魔法の調査に協力しよう。そうすれば、ヴァトズフィウズ様だって、納得してくれるはず!!
すごくいいアイデアだと思ったのに、ヴァトズフィウズ様には、あっさり断られてしまう。
「諦めない」
「…………」
「俺の部隊に入れ。リュイウェリレク。その魔法が欲しい」
「……そんなことを言われても…………僕、まともに他人と一緒に戦ったことないし…………きっと期待はずれだと思ってガッカリしますよ?」
「昨日俺と使い魔を倒したのにか?」
「…………」
そういえば……そうだ。
僕、あの時も今も、誰かと魔物退治に出てるんだよな……
フォルゲソスたちとは部隊だったけど、魔物退治をしていたわけじゃないから、僕は、誰かと一緒に戦うなんて、初めてかもしれない。
でも昨日倒したあれは使い魔で、強力な魔物とは違う。
それでも、ヴァトズフィウズ様は僕に顔を近づけて来て言った。
「試しに部隊に入ってみないか?」
「……でも……僕に関わると、ろくなことないですよ? 僕、これから強力な魔物を退治しなきゃならないんです。それに、僕に手を貸したりしてっ……一族の方に怒られるんじゃないんですか? 僕はもう家の名前を名乗るなとすら言われてるし…………」
「気にするな。俺の一族も、そんなことまるで気にしない」
「…………気にすると思います。それに、フォルゲソスの一族と喧嘩になったら、あなただって困るはずです。隣同士の領地なんですよね? ずっと協力してきたって聞きました。それなのに…………」
けれどヴァトズフィウズ様は、首を傾げて言った。
「じゃあ聞くが、共に領地を守る一族の当主にあれがふさわしいと思うか?」
「それは……」
僕だったら、嫌かもしれない……というか、絶対に嫌だ。
僕が黙り込むと、ヴァトズフィウズ様は、ニヤリと笑った。
「だろう? フォルゲソスの一族が文句を言ったら、俺が黙らせる。俺があいつらに気を使うこともない。リュイウェリレクも。もうそんなこと、気にしなくていいぞ」
「……ヴァトズフィウズ様は、フォルゲソスに当主になって欲しくないんですか?」
恐る恐るたずねると、彼は肩をすくめる。
「あいつが当主の一族とは、これ以上取引できないな」
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