性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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18.それはやめてください!

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 何を言っても、ヴァトズフィウズ様は引き下がってくれない。

 ここまで頑なに断られたら、普通の貴族は腹を立てる。ヴァトズフィウズ様は広い領地を持つ力のある貴族だし、それなら僕をこうして部隊に誘わなくても、問答無用で連れて行って、脅して協力させることもできる。それか、生意気だと言って、僕の前から去っていきそうなのに。
 それでもそうしないってことは、無理矢理連れて行こうとは思っていないのかも知れないけど……

 僕が何を言っても、ヴァトズフィウズ様はどこ吹く風。

 僕、監視して拷問部屋に連れて行く人とは怖くて部隊を組みたくないって言ってるだけなのに……

 だけど、ここで押し問答を続けていても仕方ないのは、ヴァトズフィウズ様の言う通りだ。

 今日は、言い付けられた魔物退治を一つはこなしておきたい。だったらここでヴァトズフィウズ様と揉めていても、お互い困るだけか……

「……わ、わかりました……部隊は組めませんが、一緒に行きます……」
「頑なだなー……」
「か、頑なっ……!? だ、だって……あ、あの! 一緒に行くので、監視と、突然出てくるのはやめてください!!」
「ああ、そうだな。リュイウェリレクが俺の部隊に来るなら、やめる」
「それ、止める気ないですよね!? ずるいですよ!」
「ずるくはない。俺はただ、部隊に来て欲しいだけだ」

 まだ話の途中なのに、ヴァトズフィウズ様は僕に背を向けて先に歩き出してしまう。

「ま、待ってください!!」

 先にどんどん歩いていってしまうヴァトズフィウズ様に慌ててついていく。

 今日だけだ。部隊には入れないし、捕まりもしないけど……今日は、グレヴロオル様から言われた魔物退治をこなさなきゃならないんだから!!







 こうして僕は、ヴァトズフィウズ様と魔物退治を続けることにした。

 目的の魔物は森の奥に最近巣食っているらしいけど、そこへ行くまでにも魔物は出てくる。放っておくわけにもいかないから、僕らはそれを退治しながら進んだ。

 だけど、誰かと魔物を追うなんて初めて。どうしてもどこかぎこちないまま、僕は森の中を魔物を追って走った。

 すると背後から、ヴァトズフィウズ様の魔法が飛んできた。

 それがなんの魔法か分からず飛び退く僕。

「わっ!! な、なんですか!? 今の!!」

 怒鳴って振り向いたら、少し離れたところに立っているヴァトズフィウズ様は微笑んで、僕に聞こえるように声を大きくして言った。

「強化の魔法だーー。避けるなーー」
「そんなこと言ったって、後ろから魔法が飛んできたら怖いです!! 僕は僕でやるんで!! 気にしないでください!」
「強化の魔法を使った方が、魔法も強力になるぞ」

 そう言った彼が今度放ったのは、森全体を光で包むような、膨大な量の強化の魔法。

 ヴァトズフィウズ様……どれだけ魔法撃ってるんだよっ……!!

 それだけの光、避けるなと言われなくても避けられない。
 僕を包む光に飲まれたら、急に魔力が湧いてきた。

 強化の魔法……? これが?
 僕にも強化の魔法は使えるけど、こんな強化は初めてだ。

 強化されたのは体だけじゃない。魔力まで湧いてくる。いつも自分で強化の魔法をかけて走る時とは全然違う。

 僕は、魔法で剣を作り出した。それだって、いつものものよりずっと大きい。剣を構成する魔力だって、いつもよりずっと膨大だ。

 剣を振りかぶり、僕は、魔物を切り裂いた。

 普段はもっと時間がかかるのに、魔物は簡単に崩れて消えていく。

 嘘だろ……こんなに魔力が溢れてくるなんてっ……!!

 振り向くと、ヴァトズフィウズ様は、僕に手を振ってくれている。

 強化の魔法……? これが? ただの強化なんかじゃない。おそらく、魔力も魔法を使う技術もずば抜けてるんだ。

「あ……ありがとうございます!!」

 お礼を言うと、ヴァトズフィウズ様はどこか楽しそうに「もっとやってみろ」って言いだす。

 ヴァトズフィウズ様……森に入ってから、ずっと楽しそう。

 何度か二人で魔物を倒していくと、ヴァトズフィウズ様は僕の背後から魔法を撃つことはなくなり、僕も彼の魔法を避けることはなくなった。
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