18 / 61
18.それはやめてください!
しおりを挟む何を言っても、ヴァトズフィウズ様は引き下がってくれない。
ここまで頑なに断られたら、普通の貴族は腹を立てる。ヴァトズフィウズ様は広い領地を持つ力のある貴族だし、それなら僕をこうして部隊に誘わなくても、問答無用で連れて行って、脅して協力させることもできる。それか、生意気だと言って、僕の前から去っていきそうなのに。
それでもそうしないってことは、無理矢理連れて行こうとは思っていないのかも知れないけど……
僕が何を言っても、ヴァトズフィウズ様はどこ吹く風。
僕、監視して拷問部屋に連れて行く人とは怖くて部隊を組みたくないって言ってるだけなのに……
だけど、ここで押し問答を続けていても仕方ないのは、ヴァトズフィウズ様の言う通りだ。
今日は、言い付けられた魔物退治を一つはこなしておきたい。だったらここでヴァトズフィウズ様と揉めていても、お互い困るだけか……
「……わ、わかりました……部隊は組めませんが、一緒に行きます……」
「頑なだなー……」
「か、頑なっ……!? だ、だって……あ、あの! 一緒に行くので、監視と、突然出てくるのはやめてください!!」
「ああ、そうだな。リュイウェリレクが俺の部隊に来るなら、やめる」
「それ、止める気ないですよね!? ずるいですよ!」
「ずるくはない。俺はただ、部隊に来て欲しいだけだ」
まだ話の途中なのに、ヴァトズフィウズ様は僕に背を向けて先に歩き出してしまう。
「ま、待ってください!!」
先にどんどん歩いていってしまうヴァトズフィウズ様に慌ててついていく。
今日だけだ。部隊には入れないし、捕まりもしないけど……今日は、グレヴロオル様から言われた魔物退治をこなさなきゃならないんだから!!
*
こうして僕は、ヴァトズフィウズ様と魔物退治を続けることにした。
目的の魔物は森の奥に最近巣食っているらしいけど、そこへ行くまでにも魔物は出てくる。放っておくわけにもいかないから、僕らはそれを退治しながら進んだ。
だけど、誰かと魔物を追うなんて初めて。どうしてもどこかぎこちないまま、僕は森の中を魔物を追って走った。
すると背後から、ヴァトズフィウズ様の魔法が飛んできた。
それがなんの魔法か分からず飛び退く僕。
「わっ!! な、なんですか!? 今の!!」
怒鳴って振り向いたら、少し離れたところに立っているヴァトズフィウズ様は微笑んで、僕に聞こえるように声を大きくして言った。
「強化の魔法だーー。避けるなーー」
「そんなこと言ったって、後ろから魔法が飛んできたら怖いです!! 僕は僕でやるんで!! 気にしないでください!」
「強化の魔法を使った方が、魔法も強力になるぞ」
そう言った彼が今度放ったのは、森全体を光で包むような、膨大な量の強化の魔法。
ヴァトズフィウズ様……どれだけ魔法撃ってるんだよっ……!!
それだけの光、避けるなと言われなくても避けられない。
僕を包む光に飲まれたら、急に魔力が湧いてきた。
強化の魔法……? これが?
僕にも強化の魔法は使えるけど、こんな強化は初めてだ。
強化されたのは体だけじゃない。魔力まで湧いてくる。いつも自分で強化の魔法をかけて走る時とは全然違う。
僕は、魔法で剣を作り出した。それだって、いつものものよりずっと大きい。剣を構成する魔力だって、いつもよりずっと膨大だ。
剣を振りかぶり、僕は、魔物を切り裂いた。
普段はもっと時間がかかるのに、魔物は簡単に崩れて消えていく。
嘘だろ……こんなに魔力が溢れてくるなんてっ……!!
振り向くと、ヴァトズフィウズ様は、僕に手を振ってくれている。
強化の魔法……? これが? ただの強化なんかじゃない。おそらく、魔力も魔法を使う技術もずば抜けてるんだ。
「あ……ありがとうございます!!」
お礼を言うと、ヴァトズフィウズ様はどこか楽しそうに「もっとやってみろ」って言いだす。
ヴァトズフィウズ様……森に入ってから、ずっと楽しそう。
何度か二人で魔物を倒していくと、ヴァトズフィウズ様は僕の背後から魔法を撃つことはなくなり、僕も彼の魔法を避けることはなくなった。
102
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる