性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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19.そんなことを言われても困ります

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 しばらく二人で魔物を倒して森を歩いて、僕は、ヴァトズフィウズ様に振り向いた。

「すごいですね……ヴァトズフィウズ様の魔法。どうやって学んだんですか?」
「俺のこれは、一族で受け継がれてきたものだ。リュイウェリレクもやってみるか?」
「今一族って言いましたよね!? 僕に教えちゃっていいんですか!?」
「いいだろう。別に」
「…………よくないと思います……暗殺者に狙われたりしたら嫌なので、絶対に教えないでください」
「部隊に入れ。そうしたら、そんなものに狙われることもなくなる」
「……お断りします……」

 これ、何度言ったか分からない……

 だけどヴァトズフィウズ様は、何度も僕に部隊に入らないかって言ってくれた。必要としてもらえるのは嬉しい……
 それに、あんまり断るのも、申し訳ないような気がしてくる。

 ヴァトズフィウズ様は肩をすくめて言う。

「……本当に頑なだな……ここを出たら、何かしたいことでもあるのか?」
「…………僕、スローライフを送りたいんです」
「……スローライフ……?」
「はい。もっと静かなところに行って、静かに暮らしたいんです。美味しいご飯を食べながら!!」
「それで、出て行くと言い出したのか?」
「出て行くことは、ずっと考えていました。でも、昨日、あなたを僕のことに巻き込んでしまって……それで、決意できたんです。こんなところにとどまる理由も、もうないかなって……」
「俺は、巻き込まれたなんて思っていないぞ」
「それでもです。僕のことに誰かを巻き込んで怪我をさせるのは、嫌だったので」
「それで、俺と魔物退治に行くことも頑なに断ったのか?」
「それは…………」

 言いかけたところで、大きな悲鳴が聞こえた。確かに、人の悲鳴だった。だけど、こんなところに人はいないはずだ。

 この辺りは強力な魔物が出るから、普段は人は来ない。僕たちは、グレヴロオル様が出した条件があるからここにきているだけ。だから、好きに魔法を振るっても大丈夫だと思っていたのに。それなのに、何でここで悲鳴がするんだ?

 なんだか聞いたことがあるような声だったけど……気のせいかな?

 だけど、人がいるなら、砦の魔法使いとして放っておけない。もしかしたら、街の人が道に迷ってこの森に来てしまったのかもしれないし、魔物から逃げてきた冒険者である可能性もある。

 僕は、それが聞こえた方に走り出した。

 木々が倒れて道を塞ぎ、地面の土は捲れ上がり、その上に生えていたのであろう草木は倒れている。岩が砕けて、小さな石のようになっていた。

 それを飛び越えて走ると、声の主はすぐに知れた。

 フォルゲソスたちが魔物に襲われている。

「な、何してるんですか!!」

 叫んで聞いても、フォルゲソスたちは突然現れた魔物に焦っているようで、誰も何も聞いてくれずに、逃げ惑っている。

 相手にしているのは小型の虫のような魔物が数匹。

 フォルゲソスと一緒にいるのは、僕と普段魔物退治をしていた奴らだけど、一体何してるんだ?

 あいつらに割り当てられた魔物退治なら、僕が終わらせた。だから今日は森には来なくていいはずなのに、何でこんなところ入ってきてるんだ?

 僕は、飛んでくる魔物たちを剣で切り裂いた。

 すると、へたり込んでしまったフォルゲソスは僕に向かって叫ぶ。

「き、貴様っ……こ、ここで何をしている!! 早く助けろ!!」
「助けろって……」

 見たところ、怪我もしていないし、魔物の毒にやられた様子もない。腰を抜かしているだけじゃないか。そんなの、どうやって助けろって言うんだ。

 呆れていると、激しい叫び声のようなものが聞こえた。だけど今度は悲鳴じゃない。巨大な魔物が、僕の方に迫ってくる音だ。

 森から頭を出してこちらに近づいてくるのは、巨大な泥の塊のような魔物だ。それが僕らに向かって泥の弾のようなものを飛ばしてくる。

 そんなものくらい、僕が撃ち落としてやる!!

 けれどそれより早く僕の前にヴァトズフィウズ様が立って、僕らを守る結界を張ってくれた。

「怪我はないか?」

 振り向いてたずねるヴァトズフィウズ様に、僕のそばで腰を抜かしていたフォルゲソスは叫んだ。

「……ヴァトズフィウズ様っ……お、遅いですよっ……!!」
「お前には聞いてない」

 冷たく言って、僕に振り向くヴァトズフィウズ様。

「怪我はないか?」
「は、はい。ありがとうございます。ヴァトズフィウズ様……」
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