性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
20 / 61

20.それは禁止です!

しおりを挟む

「それより、あれじゃないか? 倒す予定の魔物」

 そう言ってヴァトズフィウズ様は、フォルゲソスたちを追ってきた魔物を指差している。

 え……? そうだったかな?

 リストを見て確認してみる。

 あ……本当だ!! あの魔物も、リストに入ってる!!

 そんなことをしていたら、フォルゲソスが悲鳴みたいな声を上げる。

「な、何をしているんだ!! 早くあれを倒せっ……!!」
「……そんなに怖いなら、こんなところに入ってこないでください。あの魔物に手を出そうとしたんですか?」
「うるさい!! なんでこんなところにあんなものがいるんだ!!」
「…………」

 ……知らなくてきたのか……

 なんで知らないんだ? 森には魔物退治のために入っているし、危険な魔物がいる場所も、その都度確認するはずなのに。

 さては迷ったな……

 僕ら砦の魔法使いは、ずっと砦と森を行ったり来たりしている。だけど魔物が多い森の中で魔物退治をしていると方向を見失うことがたまにある。普段は方向を示してくれる魔法を使って魔物を探すけど、多くの魔物に襲われると退治の方に夢中になって、なんとか倒した後には魔力が尽き、自分がどこまで来たのか分からないって、たまにあるんだ。

 でも……フォルゲソスも一緒にいる奴らも、魔物と戦った後には見えないな……
 じゃあ一体、何してたんだよ……

 早く魔物を退治しに行きたいし、正直言って、放っておきたい……だけど、そんなことしたら、またフォルゲソス様がグレヴロオル様に泣きついて面倒臭いことになりそう。

 庇いながら戦うと馬鹿にしてるのかってうるさいだろうし、眠りの魔法をかけて魔物を退治したら砦まで運ぶか? だけどそれだと魔物に彼らが襲われそうだし、一旦連れ帰るか……どっちにしろ、面倒臭い。

 悩んでいると、ヴァトズフィウズ様が僕の隣に並んで言った。

「ここは俺が何とかする」
「えっ……?」
「好きに倒してこい。だいぶ慣れてきたようだし、後方支援は任せろ」
「い、いいんですか? そんな……侯爵家の方に、僕のサポートをさせるような真似をして……」
「侯爵家の方じゃない。部隊の仲間だ」
「……」

 違うって言ってるのに……

 だけど、ヴァトズフィウズ様が背後を任されてくれるなら、ありがたい。フォルゲソスとヴァトズフィウズ様を置いて行くことになるけど、フォルゲソスも、ヴァトズフィウズ様に手を出すことはしないだろう。フォルゲソスは自分より力のある人には、絶対に手をあげないから。

「あ、ありがとうございます!! すぐに戻ります! 何かあれば、使い魔で知らせてください!!」
「ああ。もちろんだ。使い魔なら、すでにリュイウェリレクにつけている」
「………………え?」

 突然の告白に、慌てて辺りをキョロキョロしたら、そばを飛んでいたものが羽ばたき、少し大きくなった。小さな竜のようなそれは、確かに使い魔だ。小さくしてあった上に、透明なガラスみたいな姿をしているから、気づけなかったんだ。

 僕は、一気に引っ張り出した魔力を使って体を強化して、その使い魔を捕まえた。

「ヴァトズフィウズ様!! これ、やめてください!! 監視は禁止です!!」
「何を言ってるんだ? リュイウェリレクが使い魔で連絡を取ることを提案した今作ったんだぞ?」

 ヴァトズフィウズ様は、当たり前だろ? みたいな風に話すけど、本当か!? 何だか、やけに楽しそうだし、僕と目を合わせようとしないし……

「や、約束ですよ!! もう使い魔を使っての監視は禁止です!」
「そうか……残念だが……」

 何が残念なんだよ! 何が!! 高名な侯爵家がわざわざ使い魔作って僕を監視って、何してるんだ!!

「リュイウェリレクがそう言うなら、仕方ない。分かった。使い魔は、連絡用だ」

 そう言って、ヴァトズフィウズ様は僕に使い魔を摘んで差し出した。彼がそれに魔法をかけると、それは光を失っていく。

「魔力を込めてみろ。俺とリュイウェリレクの思い通りに動くようになる」
「は、はい!」

 魔力を込めると、それは僕の周りを飛び回り始めた。

「それで、俺とリュイウェリレク、二人の思い通りに動くようになった。その上、使い魔が何をしているか、リュイウェリレクにも分かる。それで安心だろう?」
「…………安心ではありませんが……分かりました。か、監視は禁止ですからね!!」

 釘を刺した僕は剣を握り、魔物に向かって行った。

 背後から、ヴァトズフィウズ様の魔法が飛んでくる。それが、体に力を与えてくれる。強化の魔法だ。

 やっぱり……この強化の魔法はすごい……魔力までこんなに強化できるなんて。こんな力、僕の強化の魔法では出せない。

 一族に受け継がれてきた魔法って聞いたけど、やっぱり聞いてみたくなりそう。

 体が思い通りに動く。いつもより魔力が溢れて、巨大な魔力の剣で、魔物が放つ弾を斬り払い、魔物に駆け寄った。

 溢れた魔力で空を飛ぶように飛び上がれて、剣を振れる。剣に込められるだけの魔力を込めて、僕は魔物の中心を一刀両断にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

処理中です...