23 / 61
23.連れて行ってください!
しおりを挟む「あの…………フォルゲソスたち、大丈夫なんですよね?」
そう聞いて僕が首を傾げると、ヴァトズフィウズ様は、もちろんだ! って言ってくれた。
だけど……
フォルゲソス様が背後に歩かせている、巨大な使い魔の竜の背中に乗せたフォルゲソスたちは、ずっとぐったりしていて動かない。眠りの魔法をかけられただけの人もいるけど、フォルゲソスはヴァトズフィウズ様の魔法を受けてから、もがき苦しみ出して倒れたまま。
ヴァトズフィウズ様と初めて会った時、キャマバラーデが倒れたこともあるし、だんだん不安になってくるんだが……
だけど、ヴァトズフィウズ様は「もちろんだ!」としか答えない。
生きてはいるみたいだし……殺してないって言ってたから…………とりあえず、砦に運ぶか。
「あの……本当に、大丈夫なんですよね?」
「ああ。もちろんだ。リュイウェリレクの前だからな」
「…………」
僕の前じゃなかったらするわけじゃないよな……
*
フォルゲソスたちは砦に運んで、一応回復してから、彼の部屋に放り込んだ。
その日の魔物退治は順調に終わり、グレヴロオル様に今日の報告をすると、驚いていたけど、特に咎められることはなかった。フォルゲソスのことで何か言われるかと思っていたのに……
それから自分の部屋に戻った僕は、明日の準備を始めることにした。
外で泊まるのに必要なものを用意して、明日からは、森で野宿できるようにしよう。森の中は危険だけど、その方が、早くグレヴロオル様に言い付けられたことをこなせるんだから。
そう思って準備を始めたけど、なぜかヴァトズフィウズ様まで部屋についてきた。こんなところ、ヴァトズフィウズ様が来るような場所じゃないような気がするんだけど……
本人にはそう伝えたけど、やっぱり彼は聞いてくれない。そして、僕を諦めてもくれない。
「なあ。部隊に入らないか?」
「…………」
もしかして、ずっと諦めてくれないつもりだったら、どうしよう……僕、本当に部隊に入る気はないのに。
「あの……ご自分のお部屋に帰らなくていいんですか?」
「俺はリュイウェリレクといたい。リュイウェリレクこそ、さっきから何をしているんだ?」
「外で眠る準備です。明日からは、森で寝ようと思って……」
「魔物が出て危険なんじゃないのか?」
「結界を張って、夜は魔物が来ないように見張ります。今日は随分魔物退治ができたし、早く言われたことをこなしたいんです」
「………………だったら、街へ行ってみないか?」
「へ??」
「少し飛べば街があるだろう? そこで装備を整えた方がいい。それに、リストにあった集める素材だが、それなら、街の方から森に入った方が早くて安全にそれがある場所に辿り着けるぞ」
「でも……僕、お金を持っていません。街になんか行っても……」
「今日魔物を退治して手に入れた素材を売れば、これからの旅費にもなる。それだけあれば、食事も宿も取れるだろう」
「……」
そうか…………
そんなこと、考えたこともなかった……
いつもは手に入れた素材は部隊のものだけど、今日は僕の手元にある。これがあれば……もうここを出ていけるのかもしれない。
ここを出るって言ったけど、僕……これからどこに行こうとか、何をしようとか、まだ具体的に決まっていない。
「でも……僕…………街を歩いたこと、ありません」
「全くないのか?」
「全くってことはありません。と、通ったことはあります……」
「通った……そうか………………だったら、一緒に行こう」
「へ!?」
「このそばの街は、多少魔物が現れたりもするが、賑やかで多くの珍しい商品が並ぶ、何度行っても飽きない街だ。一緒に行くなら、案内もできる。食事もうまいぞ? あのあたりでしか取れない食材を使っているから、それを目当てに街を訪れる観光客も多いんだ。この先、ここを出てからのことを考えるための資料も手に入るはずだ」
そんなの聞いたら……俄然行きたくなってくる!! 僕が見たことも聞いたこともないものが、いっぱいあるんだろう。
楽しそう……
でも、いいのかな……
また少し緊張していた。
だって僕、ろくに街なんて歩いたことない。用事を言いつけられて歩いたことはあるけど、あの時は早く帰らなきゃ殴られるから、周りになんて構ってる暇がなかった。
恥晒しって言われていた僕は、一族の屋敷にいる時はあの屋敷に、砦に来てからはずっと砦と森の行き来だけしかしていなかった。それが……街に行く??
少し怖いけど……
「わ、分かりました!! つ、連れて行ってください!」
82
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。
夏笆(なつは)
BL
公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。
ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。
そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。
初めての発情期を迎えようかという年齢になった。
これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。
しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。
男性しか存在しない、オメガバースの世界です。
改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。
※蔑視する内容を含みます。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる