性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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24.楽しい!!

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 僕は、ヴァトズフィウズ様と空を飛んで、街まで飛んできた。
 夜は魔物も多いし、空で魔物に会うこともある。もしかしたら夜通し飛ぶことになるんじゃないかと心配したけど、彼が魔法の道具を貸してくれて、それで飛んだら思っていたよりずっと早く、一番近くの街にまでついた。

 そうして街に到着した僕は、その広さに、目を丸くしていた。

 すごい……もう夜なのに、人がいっぱいいる!

 空から見下ろした時も思ったけど、この街、すごく広い。
 いくつも屋根が並んで、街の中心には川が流れて、大きな建物もいくつもある。ギルドや大きな商店も多いらしい。夜なのに空から見下ろしたら明かりがキラキラ輝いて眩しかった。

 僕は、ヴァトズフィウズ様に手を引かれ、二人で街の大通りに降りたけど、そこには多くの人が行き交っている。

 すっかり人の多さに怯えてしまった僕は、大通りの端で震えていた。

 人がこんなにたくさんいるところに来ちゃうなんて……そういえば僕、人が多いところ、苦手だった……用事を言いつけられた時は裏通りを必死に走っていたことくらいしか覚えてないし……

 顔色の悪い僕に、ヴァトズフィウズ様がたずねた。

「どうしたんだ?」
「あ……す、すみません…………ひ、人がたくさんいて……あんまりこういうところ、歩いたことなくて……」

 こんなに人が集まっているなんて、思わなかった。人が多いところも、すぐそばに人がいるのも、苦手なんだよな……
 一族の屋敷でも砦でも、常に逃げていたし、特に知らないところに来ると、怖くて隠れてしまう。
 せっかく街に来たのに……! やっぱり落ち着かない!

 すると、ヴァトズフィウズ様が僕の手を引いて、角を曲がって行く。その先は大通りからは離れていたけど、美しい街灯が並ぶ、静かな通りだった。

「こっちの方が、人が少ない。案内する」
「い、いいんですか?!」
「何がだ? せっかく一緒に来たんだ。案内させろ」
「……は……はいっっ!!」

 答える僕に、ヴァトズフィウズ様は人の少ない静かな道を案内してくれた。

 すると、少し僕も落ち着いて、あたりを見渡すことができた。

 ……大きな街だな……

 いくつも店が並んでいて、食事を売る店からはいい匂いがする。
 魔物が多い森の近くにあるからか、武器や防具、魔法の道具を売る店も多い。他に、魔法の薬や書物もたくさん売られているみたいだ。
 歩いている人は、魔法使いもいるけど、剣士や魔法の道具の整備を担うような人もいるみたい。こんな時間ということもあってか、足早に帰路に着く人、酒場に向かうのか、連れ立って楽しそうに歩く人が多かった。

 きょろきょろしながら、あたりを見渡す。

 こんなところを、こんなふうに歩くのは初めてだ……

 やっぱりまだ怖いけど、ヴァトズフィウズ様と歩くのは楽しい。
 こんな時ばっかりヴァトズフィウズ様を頼りにしてしまっている……彼が一緒に歩いてくれていることに、安心してしまっているんだ。部隊を組まない、なんて、あれだけ頑なに断っておきながら……

 けれど、ヴァトズフィウズ様は嬉しそうに笑う。

「案内してほしいところがあったら、どこへでも行くぞ」
「は、はい!! ありがとうございます!」

 疲れているはずなのに、あたりを見ているだけで楽しい。周囲の店にはまだ明かりがついている。
 あまりにキョロキョロして歩くから、前を歩いていたヴァトズフィウズ様の背中にぶつかっちゃったみたい。

「わっ……!」
「大丈夫か?」

 振り向いたヴァトズフィウズ様に聞かれて、少し恥ずかしい。夢中になっていたのがバレたみたいで……

「す、すみません……僕、ぼんやりしてて……」
「ぼんやり? 街に夢中だったんじゃないのか?」
「……ぅ…………はい……すみません、珍しいものばかりで……無礼な真似を……」
「無礼じゃない。そこまで喜んでもらえれば、俺も嬉しい」

 そう言って、ヴァトズフィウズ様が笑う。なんだか恥ずかしいけど……そんな顔をしてもらえて、ホッとした。
 ここは砦から近くて、よく砦の人たちも来ている。だから、砦の人にとってはそんなに珍しいものじゃないはず。それなのに僕はいちいち騒いだして、また迷惑をかけたかと思った。

 だけど、そんな顔をしてもらえたら、少し肩の力が抜けた。楽しいって思って、喜んでいてもいいんだ……

 せっかくヴァトズフィウズ様が連れて来てくれたんだ。これから砦も出るんだし、たくさん見て回りたい。

「……来ることができて…………本当に、よかったです。あ、ありがとう……ございます…………」
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