性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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31.俺にそんなことを言ったのは

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 警備隊の人たちが連れ立って通りの奥へ去って行ってから、ヴァトズフィウズ様は肩をすくめて言った。

「ずいぶん邪険にされたな……」

 彼の言うとおり、警備隊にはだいぶ鬱陶しいと思われているようだ。原因は分からないけど……僕ら、何かしたかな……?

「砦の魔法使いと街の警備隊は、そんなに仲が悪いのか?」

 聞かれて、僕は首を横に振った。

「いいえ……いがみあったことなんてないんです。そもそも僕ら、ほとんど会いません。管轄が違うし、していることも違います。もちろん魔物に関する連絡は取り合っていますが、それだけで……」

 それなのに、あの敵意……僕ら、よほど気に入らないことしちゃったのかな……

 考え込んでいると、背後からヴァトズフィウズ様がバンッと僕の背中を叩いた。

「そう落ち込むな!!」
「でも……」
「ほとんど会ったこともないくせに、あれだけ攻撃的な態度を取られれば無理ないが、何か理由があるのだろう!」
「……」

 確かに……そうかもしれない。

 彼らにこれ以上聞いても教えてくれなさそうだし、街の違うところで聞いてみるか……

 僕は、ヴァトズフィウズ様に振り向き、そして頭を下げた。

「……すみませんでした」
「……? リュイウェリレク? どうした? 何がだ?」
「だって……その…………け、結局、助けてもらって…………」

 任せてください、なんて大きなこと言っておきながら、ヴァトズフィウズ様がいなかったら、多分殴られていた。ここまで無鉄砲に飛んできたのは、僕なのに。

 けれどヴァトズフィウズ様は平然とした様子で言う。

「そんなことは気にしなくていいぞ? 俺が勝手にしただけだ」
「でも……ここに飛んできたのは僕なのに…………危険な目に遭わせてしまって……」
「俺が勝手についてきただけだ。それに、部隊じゃないか」
「……部隊ではないです…………でも、ありがとうございます…………あのっ……今回のことは僕に付き合わせてしまっているので…………僕がヴァトズフィウズ様を守ります」
「………………」

 彼は少し驚いていたけど、どこか優しい顔をして、急に笑う。

「な、なんですか!? ぼ、僕……そんなに頼りないですか?」
「いや……そうじゃない。だが俺はずっと、一族を守る魔法使いだったからな……その俺に、そんなことをそんなに堂々と言うとは…………」
「え!?」

 そうなのか……?
 だったら少し、図々しかったかな……僕よりヴァトズフィウズ様の方が魔力だってあるのに、こんなことを言ったりして。

 な、なんだか、ヴァトズフィウズ様、楽しそうに笑ってるし……

「あ……あの、変でしたか? す、すみません…………図々しかったですよね……」

 だけど笑わなくてもいいのにっ…………ますます恥ずかしい!

 多少口を尖らせて俯くと、髪に、ヴァトズフィウズ様の手が触れた。

「えっ……? な、なんですか?」
「撫でたくなった」

 そう言ってヴァトズフィウズ様は、やけに嬉しそうに僕の頭を撫でている。

 な、なんなんだろう……

 僕を撫でても、楽しくもなんともないと思うけど……ヴァトズフィウズ様はずっと笑顔だ。
 なんだか、恥ずかしくなってきた。

「あ、あのっ…………く、くすぐったいです!」
「いいじゃないか。少しくらい」
「で、でもっ……なんだか、恥ずかしいですっ……!」

 その手から逃れようと暴れていたら、自分が、ずっと小さな袋を下げていたことを思い出した。

 あ……そうだ。お礼……しようと思っていたんだ。

 僕は、彼の手から逃れて、追ってくる彼に代わりにドーナツの入った紙袋を差し出した。

「あ、あのっ……こ、これっ……!!」
「……? なんだ? これは」
「あ、あのっ…………ドーナツなんです。あのっ……これ、昨日のお礼です!」
「お礼?」
「は、はい……」

 ヴァトズフィウズ様は驚いているようだった。

 受け取ってもらえるのか、それだけでひどくドキドキする。顔を上げることもできなくて、俯いていたら、ヴァトズフィウズ様はそれを受け取ってくれた。

「ありがとう…………」
「い、いえ……すみません…………な、悩んだんですけど、なかなかいいものが思いつかなくて…………ん!!」

 全然自信がなくて言うと、口の中に、ドーナツが入ってきた。突然そんなことをされて驚く僕を、ヴァトズフィウズ様は見下ろしている。

「……俺は嬉しいぞ。こういうものが好きなのか?」

 頷きながら平らげる僕。やっぱり甘くて美味しい……
 これを買った時、すごく美味しそうだったから、ヴァトズフィウズ様にも食べてほしかったんだ。

 ヴァトズフィウズ様も、紙袋から取り出したドーナツを咥えて嬉しそうにしてくれている。その顔を見ると、僕も嬉しかった。

「いいな……甘くて。俺もこれが好きだ」
「本当ですか!? よかった……ぼ、僕もこれ、すごく気に入ってるんです!! ヴァトズフィウズ様にも食べてほしくて…………よかった……わっ!」

 なんだか嬉しい僕の肩を、ヴァトズフィウズ様が抱き寄せる。

「今度は二人で買いに行くぞ!」
「え? えっと…………は、はい……でもっ……」

 肩は抱かなくていいような気がするけど……

 だけど、ヴァトズフィウズ様はずっと楽しそうで、僕をそのまま連れて行った。
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