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33.何で反対するんだ?

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 俺の言っていることは本当だ。だけど、話すことがヴァグデッドの不利益になるなら、言わないほうがいいのか……?

 ルオンは、俺に振り向いてたずねた。

「どうなんだ? フィーディ」
「それは……」

 言いかけた俺の言葉を遮って、ヴァグデッドはルオンの前を飛び回る。

「なんでもないよ。俺が誰かに脅されると思う?」
「むしろ、お前が脅していないか心配だ……」
「ルオンは心配性だなあ……」
「……お前がそうさせているんだ」

 ルオンはため息をついて、俺に向き直る。

「彼のことは私が城で見ている。何かあったら、すぐに私が対応するから、安心してくれ」
「は、はい……あの、そ、それなら、お願いがあります」
「お願い?」
「……ヴァグデッドの魔力を回復させることはできないんですか?」
「それは、時間が経てば回復する」
「でもっ……」

 食い下がろうとした俺を、なぜかヴァグデッドが止めた。

「フィーディーー……どうしたのー? 俺なら大丈夫だよー?」
「で、でも、お前っ……」
「俺の魔力なら、すぐに回復するから! だから、気にしないで!」
「でも……」
「ね? 気にしないで?」
「……」

 彼に顔を近づけられて、なんだか凄まれている気がした。そんなことをされるいわれがないと思うのだが、一体、どうしたんだ?

 戸惑って、数歩下がる俺に、ルオンがたずねた。

「フィーディ、本当に、森へ行きたいのか?」
「え!? あ、は、はいっ……俺に行かせてください。殿下だって、俺に行くように言ってるんです……い、いかせてください!」
「……」

 ルオンは、しばらく考えているようだった。彼の気持ちもわかる。俺の実力を、彼は知っている。危険なだけだと分かるはずだ。

 そして、ヴァグデッドまでもが同じことを言い出した。

「……フィーディは行かない方がいいよ」
「な、なぜそんなこと言うんだ? さ、さっきからおかしいぞ!」
「おかしいのは、フィーディの方だ。だってフィーディは、魔法が使えないだろ?」
「それはっ……!」
「俺がいなかったら、ウィエフの魔法でとっくに吹き飛んでる。危ないから、城でおとなしくしてた方がいい」
「それはっ……そうかもしれないがっ……! 俺だって、少しくらいっ……一人でも大丈夫だ! キノコ探しに行くだけだし……俺……き、キノコ取り名人なんだ……」
「……さっき違うって言ってなかった?」
「だ、だからそれはっ……!」

 何で彼まで反対するんだ? 俺のことが心配なのか? それで、こんなことを言うのか?

 確かに俺が使える魔法じゃ、魔物に対抗するのは難しい。
 不安になるのも当然だと思うが、このままでは、キノコがウィエフのものになってしまう。彼が破壊の魔法を完成させて力をつければ、ここだって危ない。何より、これ以上、ウィエフがヴァグデッドに手を出すのは嫌だ。

 だけど残念なことに、俺に魔法はほとんど使えない。唯一使える眠りの魔法ですら、しょっちゅう失敗する。
 こんな俺を行かせたくないって言うヴァグデッドやルオンの意見の方が正しいんだろう。

 引き下がる……べきなのか……? だけど……俺がここで引き下がったら、ヴァグデッドはどうなるんだ。彼には世話になったのに。

 魔物に対する対抗手段がないから森へ行けないのなら、それを身につければいいんじゃないか? 少なくとも、森へ行ってキノコを取ってくるまで、自分の身を守れる程度の魔法があればいいんだ。

「ご、ご心配もごもっともです……だったら、もしかして、俺の魔法が強化できたら、許可していただけますか?」
「……なにか、当てがあるのか?」
「…………ティウルに……頼んでみます……ティウルも、眠りの魔法が得意なんです」
「ティウルが?」
「…………以前、ヴァグデッドを眠らせたこともあるので、多分、魔法強化のための道具を使っていたんだと思います。それで俺の魔法も強化できれば、俺でも、魔物が寝てる間にキノコ狩りができるかなって……」
「……そうか」

 本当は、主人公には絶対に近づきたくないんだけど……だけど、今はこれしか思いつかない。

 さっきひどいことされたんだし、俺の魔法の強化くらい、引き受けてもらいたい。だけど、あの時邪魔をした俺をさぞかし怒っているだろうし……や、やっぱり無理、かな……?

 ウィエフが「そんなに簡単に強化などできるものか」なんて呟いている。

 そしてヴァグデッドは、小さな竜の姿で俺の背中を半ば無理やり押しながら言った。

「じゃあ、行こー!! ティウルのところ!!」
「は!? ち、ちょっと待て! まだ、話の途中っ……!」
「眠りの魔法を強化してもらうんだろ? それが終わったら、君も寝ててよー」
「な、なに言ってるんだっ……俺は、キノコをとりにっ……」
「早くー」
「お、おいっ……ヴァグデッド??」
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