好きな人の婚約者を探しています

迷路を跳ぶ狐

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5.絶対渡す!

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 寮を出た俺は、すぐにあのお弁当屋さんに行ったけど、大事なことを忘れていた。あのお弁当屋さん、日が沈むと閉まってしまうんだ!

 仕方なく、俺が思いつく限り美味しい店で、殿下が好きなものを買ったけど、よく考えたらそれは殿下が好きなもので、これは婚約者に渡すもの。だから婚約者が好きなものも買った。紙袋は二つになって、焼き肉と、サラダの山だ。

 こ、これで……謝ればなんとかなる……かな?

 これを持って、まずは……えっと、殿下に返したほうがいいか。

 部屋はあの地図でわかってるけど、勝手に部屋に行って誤解されたら、婚約者と殿下が喧嘩になって、婚約破棄になって王位を継ぐことができなくなるかもしれない。

 殿下だって迷惑だろうし……どうしよう……

 このさい、親友に渡そうか。だけど、これが原因で、殿下と親友が喧嘩になったりしたら……

 殿下に迷惑はかけたくない。こっそり部屋に行こうか? いや、そのほうが誤解される。俺と殿下が噂になったりしたら、殿下も親友も傷つけてしまう。

 やっぱり、親友の方に行こう。あいつ宛なんだし、俺はお弁当屋さんに行っただけで、殿下は間違えただけ。不注意で食べちゃったことをちゃんと謝れば許してくれるはず。

 俺は、意を決して、歩き出した。

 親友は、いつも俺のそばにいてくれた。俺に唯一声をかけてくれて、殿下と二人でいる時も、よく俺を誘ってくれた。三人で食事もしたし、休日はよく誘ってくれたんだ。俺がいないほうが、殿下と二人で楽しめただろうに。

 俺のダメなところ、あいつは全部知ってる。知ってて、親友でいてくれる。

 早く返さなきゃ……

 そんなことを考えながら歩いていたら、大きなパン屋さんの前まできた。

 ここ、殿下の行きつけの店だ。ここのハムサンドが、殿下は大好きなんだ。

 ちょっと寄っていこうかな……

 パン屋の窓から中を覗いていたら、そこにいたお客さんの中に、見たことある背格好を見つけた。

 あ、あれって……殿下!? な、な、な、なんでここに……!?

 あ、そうか。ここ、殿下の行きつけの店だ。いても不思議じゃない。

 こんなところで会えるなんて、ラッキーじゃないか。ちょうど、殿下に返さなきゃならないもの、全部持ってる。

 食べちゃったこと、ごめんなさいって言って、返すもの返そう。

 殿下に話しかけるのはめちゃくちゃ勇気がいるけど……

 買ったものを見下ろしたら、少し落ち着く。

 これ、全部殿下に渡すために買ったんだ。あ、いや、違う。殿下の婚約者だ!! とにかく、これ、全部渡すために買ったんだ。絶対に渡す!

 俺は、それを持って、パン屋の中に入った。
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