虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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71.魔法のことだけ

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 あれから、買っておいた食事を腹一杯食べたライイーレ殿下は、すっかりお腹いっぱいになったらしく、二段ベッドの上に飛び乗って、ぐっすり眠ってしまった。
 気持ちよさそうに寝息を立てる彼の隣に座って、彼を見下ろしていると、なんだか落ち着く。

 こうして寝ている姿を見ていると、異才と呼ばれながらも強力な魔法に魅入られ追放された第一王子なんて思えない。

 ライイーレ殿下は、昔からこんな風に無邪気だった。

 お城にいた時のライイーレ殿下は、いつだって魔法の研究に夢中で、寝食なんて元々頭になかったみたいに地下にこもっては魔法の書物を読み漁り、強力な魔法で部屋を壊してしまうような人だった。
 彼に魔法を学ぶために集まった貴族の魔法使いたちも、よく困惑していたけど、ライイーレ殿下は、まるでそんなこと気にしてない。
 僕は家からライイーレ殿下に取り入るように命じられていたけど、早々にそんなことをするのはやめた。
 ライイーレ殿下は本当に、純粋に魔法が好きだったんだ。
 城でたまに会うと、「やあ、また会ったね。君はこの城の魔法使いなのかな? 調子どう?」なんて聞いてくれた。だけど僕が返事をしているうちに、ふらふらと去っていってしまう。僕の返事なんて全く聞いていないのは明らかで、数日経って城でまたすれ違うと同じことを言う。その度に僕は「城の魔法使いじゃなくて、あなたに魔法を習いに来たレクレットです」って説明するのに、「城の」くらいまで言ったところで、すでにライイーレ殿下は僕の前にいない。
 多分、その時のライイーレ殿下は、魔法のことしか考えてなかったんだろう。

 反逆を疑われて、魔力を失ってからは、しばらくぼーっとしていたみたいだけど、僕が再会して、ごはんあげたりしているうちに「ごはんっておいしー」なんて言いながら、僕にも笑ってくれるようになった。だから、ライイーレ殿下が美味しそうに食べていると、僕も少し安心する。本当は、魔法を使いたいのかな……

 寝ているライイーレ殿下に、指で触れる。

 僕はこうして自由になれたけれど、ライイーレ殿下はまだ小さな犬の姿のまま。彼自身は、このままの姿も気に入っているらしいけど、たまには元に戻してあげたりできないのかな……

 あの時ライイーレ殿下を取り押さえた、第五王子のロヴァウク殿下は、フィンスフォロースたちへの報告と、伯爵の城に向かうための準備に行ったきり、まだ戻らない。早く帰ってこないかな……

 そんなことを考えながら、しばらくライイーレ殿下の寝顔を見下ろしていたら、僕まで眠くなってきた。

 頭が重いような気がして、つい、目を瞑ってしまうと、窓を閉めてあるはずの部屋に風が吹いて、二段ベッドの下に、かすかな光が見えた。

 まさか、敵!??

 伯爵がまた刺客でも送ってきたのか!?

 寝ているライイーレ殿下を布団で隠し、彼の周りに結界を張る。
 それから、二段ベッドから飛び降りた。

 すると、背後から僕を呼ぶ声がした。

「レクレット……」

 即座に魔力の剣を作り出し、振り向く。

 だけど、そこにいたのはロヴァウク殿下で、二段ベッドの下のベッドで、書類を読んでいた。

 しかも、変装用の姿ではなく、元の姿に戻っている。藍色の長い髪の間から大きな黒い狼の耳をのぞかせた彼は、すでに寝巻きを着ていて、尻尾をゆらゆら振っていた。

「し、失礼しました!!」

 僕は慌てて、彼の喉元に突きつけていた剣を消す。

 びっくりしたびっくりした!! 絶対、賊だと思って、王族の首に剣を突きつけてしまった!

 飛び退く僕に、殿下はニコニコしながら言う。

「気にしなくていい。レクレットはそうでなければ」
「ち、ちゃんと偽名で呼んでください! な、なんで……いつのまに……!」
「門も扉も閉まっていたからな。魔法で飛んできた」
「そ、そんな時は、使い魔でも飛ばしてくだされば、お迎えにあがります……本当に、申し訳ございませんでした……」

 頭を下げて、ライイーレ殿下を起こさないように小声で言うと、ロヴァウク殿下は首を傾げる。

「どうした? 二人しかいないんだ。普通に話せばいい」
「二人じゃありません。ライイーレ殿下が上で寝ているんです」
「……あいつが?」
「疲れたみたいで……気持ちよさそうに寝てるから、起こさないようにしてあげたいんです……」
「……そうか………………叩き起こそう」
「ダメですっっ!!!!」
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