虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
70 / 117

70.仲がいい!?

しおりを挟む

 ロヴァウク殿下は、結界維持の道具を眺めながら楽しそうに言った。

「これはフィンスフォロースに調べさせる」
「……? 何か、おかしなところでもありましたか?」
「さあな。俺はあまり魔法の道具には詳しくないんだ」

 そう言って殿下が笑ったところで、屋根の下から、僕らを呼ぶ声がする。

「おい!! レク!! ロヴァウ!! 降りてこい!!!!」

 屋根の下を見下ろせば、クロウデライが、僕らを手招きして呼んでいた。

「なにしてんだ!! 戻るぞ!」
「は、はい!! 今行きます!」

 答える僕らの横をすり抜けて、空から降りてきたニュアシュが、クロウデライのもとに降りて行く。第一部隊が魔物を退治していたあたりから飛んできたんだろう。

「クロウデライ!!」
「なんだよ……めんどくせえ奴が帰ってきた」
「誰が面倒なんですか!! それより、ここにいた魔物はっ……! 恐ろしい数の魔物がいたはずです!」
「……いねーよ……そんなの」
「ですがっ……」
「とっくに退治したって言ってんだよ……」
「まさか……あれだけの数の魔物を……?」
「そっちはどうなんだよ? 怪我人が出たんだろ…………お前は……どうなんだよ…………」
「どう、と言われましても……私は、回復の魔法が得意ですから。大したことはありません」

 そう言って微笑むニュアシュだけど、それって、かなりひどい怪我をしたけど治してきたってことになるんじゃないか? 着ている服も、大きく破れているし……

 それを聞いたクロウデライが、いきなりニュアシュに掴みかかる。

「そういうのは無事って言わねえんだよ! 早く帰るぞ……バカ貴族!!」

 怒鳴りつけているのに、彼はニュアシュの手を取って、飛行の魔法で空に飛び上がり、砦の方に飛んでいく。

 罵る割に、ニュアシュのことを連れて行っちゃうし、仲がいいのか悪いのか、分からないな……







 魔物退治が終わり、報告の書類が終わる頃には、もう日が暮れた後だった。何しろ、市民に手を出し、警護されるべきチミテフィッドに勝手に協力を要請してしまったんだから、始末書も合わせるとすごい量だ。
 頭を抱える隊長と、文句あるなら聞いてやるから人を寄越せと言い出したクロウデライが、つかみ合いの喧嘩を始めて、ニュアシュが止めに入っていた。

 こんな時ばっかり殿下はどこかに行っちゃうし、書類を何とか終わらせる頃には、僕はくたくただった。

 この警備隊にいる間は、寝泊まりのために砦の一室を貸してくれるらしい。
 ここの警備隊はみんな住み込みで、砦の中にそれぞれ部屋を持って暮らしているようだ。
 僕らが使う部屋へは、クロウデライが案内してくれた。
 古い廊下を歩いて行くと、一つの扉の前で彼は立ち止まって、僕に振り向く。

「ここ。前に辞めていった奴が使ってた部屋。中はその時のままだから。好きにしていい」
「……はい…………ありがとうございます……」
「風呂は飯の前。時間とか砦の中でのルールは、さっき渡したノートに書いてある。飯の時間に遅れんなよ」
「はい……あの……」
「なんだよ……貴族様には狭くて汚いか?」
「……僕が前にいたところに比べれば、豪華すぎて泣きたいくらいです…………」
「……この荒れた部屋がか? どんな部屋に住んでたんだ……」

 部屋っていうか、納屋です。雨漏りしたし寒いし、それに比べたら、こんないい部屋がもらえるなんて、ちょっと泣けてくる。

 だけど、問題は別にある。
 案内された部屋は、二段ベッドがひとつに、机とクローゼットが二つの二人部屋……これって、僕と殿下が二人でこの部屋を使うってことだよな……いいのか……? ロヴァウは本当は、第五王子なのに。

「あ、あの……ロヴァウとここで、二人……ですか?」
「そうだ。問題でもあるのか?」
「ありませんけど……ロヴァウは嫌じゃないかなって……思って……」
「……何言ってんだよ。あんなに仲良いのに」
「はっ!!?? な、仲良い!!???」

 つい、大きな声を出してしまう。

 僕と殿下の仲がいい??? そんな風に見えていたのか!??

「べ、別にっ……ぼ、僕らは……な、仲がいいと言うわけではなく……好敵手で……」
「なに焦ってるんだ? お前」
「だ、だから、僕はっ……!」

 話していたら、急に首筋がぞくっとした。何だ今の……冷たくて柔らかくて……誰か後ろで僕の首、舐めてる!?

「うわっ……!」

 びっくりして振り向けば、リュックから出てきたらしいライイーレ殿下が、僕を見上げている。変な悪戯したの、絶対にこの小さな犬だ……

「ら、ライイーレっ……じゃなくて、ライーレ……い、いたずらしたらダメだろー」

 引攣った顔で言いながら、首にくっついていたライイーレ殿下をつまみ上げる。

 小さな犬の姿の彼は、口を尖らせ小さな声で反論してきた。

「だって、お腹すいたんだもん」
「だからって僕を舐めないでください!」

 あ……そういえば、ライイーレ殿下のご飯がまだだった。書類仕上げるのに夢中だったし、殿下もリュックの中で寝ていたから、つい……

 突然僕のリュックから出てきたライイーレ殿下を見て、クロウデライは首を傾げている。

「なんだそれ……」
「へ!? あっ……え、えっと……こ、これは…………えーっと……ペット? みたいなものです……」
「ふーん……うわ!」

 驚くクロウデライに、ライイーレ殿下は飛びついていく。そして、彼が持っていた紙袋に鼻先を近づけて、尻尾をぶんぶん振っていた。

「こ、こらっ……ライーレ! だ、だめだろ!」
「……別にいい。お前らのだから」

 そう言って、クロウデライは僕に紙袋を押し付けて来る。

「やる」
「え!?」
「……今日の討伐はお前らのおかげで助かった…………別に礼じゃねえけど……」
「で、でも……」

 僕らは彼にいっぱい迷惑かけたのに。
 受け取れないでいると、彼は僕に紙袋を無理やり渡して走っていく。

「とっとと寝ろ! クソ貴族!!」
「は!? え、えっと……お、お疲れ様でしたーーーー!!」

 彼の後ろ姿に向かって言うけど、彼は振り向かずに行ってしまった。

 もらった紙袋を開けると、入っていたのはたっぷりクリームが乗っているカップケーキ。果物をたくさん使っていて、カップにはリボンが結んである。めちゃくちゃ可愛らしい……

 紙袋から取り出して見上げていたら、僕の肩に乗っていたライイーレ殿下が、カップケーキに飛びついて、クリームをたくさん舐めてしまう。僕だってまだ食べてないのに!!

「ちょっ……! 殿下!! 食べないでください! 殿下のご飯は今から用意しますから!」
「待てない。お腹すいた」
「や、やめてください!! それでも第一王子ですか!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...