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16.これ、なに?
しおりを挟むねぐらにしている倉庫に入った僕は、最初に大事な狼のぬいぐるみを隠したところへ走った。
良かった。ちゃんとある! 他のものはランキュ様に持っていかれちゃったみたいだけど、これが無事ならいい。
これ、持って行こうかな……ずっと僕が持っていれば、ランキュ様に捨てられる心配はなくなる。そうしよう!
僕は、ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
あとは地下へ行って、ペロケが言ってた糊を探すだけだ!
確か、倉庫の一番奥に、地下へ降りる階段があったはず……あ、あった!
僕は、奥の壁に、大きなドアがあるのを見つけた。ドアを開くと、長い階段が地下へ伸びている。ここから降りれば、地下へ行けるはず……
だけどその階段は、壁に小さな明かりがあるとはいえ、だいぶ暗い。足を踏み外さないように、ゆっくり階段を降りよう。
ドキドキしながら階段を降りて、やっと地下に着いた。
廊下の壁に、一応明かりはかけてあるものの、やっぱりここも暗い。それに狭い……早く糊を見つけて帰ろう!
少し行くと、丁字の分かれ道に行き着いた。
えーと……ペロケが言ってたのは……右、だな! あれ……そのあとはなんだっけ? いいや! 一部屋ずつ探そう!!
丁字路を右に曲がると、すぐに一つ目の扉についた。それを開けてみるけど、そこは何もない、がらんとした部屋だった。
この部屋、使ってないみたい……糊もないし、次の部屋へ行こう。
しばらく廊下を進むと、二番目の扉が見えた。この扉は、さっきと違って真っ黒だ。その扉をゆっくり開ける。
わ! なんだこれ! 大して広くもない部屋に、ずらっと棚が並んでいる。それに並べてあるのは、全部香炉だ。なんでこんなに香炉があるんだ? オーフィザン様、香炉マニアなのかな?
香炉はどれもこれも、僕が壊したものに似てる。あ、同じものまである! それもいくつも!
なんだ……オーフィザン様、同じ香炉をいっぱい持ってるんじゃないか。それなのに、なんで割れた香炉を取って置いたんだろう。あれだけはすごく大事なものなのかな?
オーフィザン様って、不思議な人だ。
ここへ来て、一年経つけど、僕はオーフィザン様のことをほとんど知らない。猫耳好きで、エッチな魔法を使う変な魔法使いってことくらいだ。
オーフィザン様って、普段、何してるのかなあ……香炉を直すことができたら、聞いてみたい。多分無理だけど……
この棚に糊の瓶、ないかな……
あ、あれ? 糊の瓶って、どんな瓶って言ってたっけ? えーっと……瓶ってことしか覚えてない。まあ、いいや! 瓶を探せばいいんだ!
棚を見て歩くけど、香炉がいっぱい並んでるだけで、瓶なんてない。
ないのかなー? あ、一番奥に机がある。だけど、そこにも瓶はない。大きくて分厚い本がいっぱい置いてあるだけだ。
なんの本だろう? 開いてみるか!
早速、その古い机に駆け寄った。使い込まれた燭台と、幾つも並んだ本が散らかる机から、僕のてのひらの長さより分厚い本を選んで開く。
む、難しいことがいっぱい書いてあって分からない。
あれ……これ……狐妖狼族についての記述がある。狐妖狼は、群れを作って森に住んでいる種族だ。なんでそれについて書いてある本を、オーフィザン様が読んでるんだろう……??
しばらくその本を読んでいると、なんだか懐かしくて、辛くなってきた。
僕も本当は狐妖狼族で、昔は狼の耳と狐の尻尾があったんだ。だけど、群れからはぐれてしまってから、ずっと狐妖狼の仲間には会ってない。みんな、何をしてるかな……
もう本読むのはやめよう……糊を探さなきゃ!! 隣の部屋へ行こう!!
僕は部屋から飛び出して、隣の部屋まで走った。これで、角を曲がってから見つけた部屋は三つ目だ。
部屋の扉を開けようとしたけど、鍵がかかってる。仕方ない。次の部屋へ行こう。
四番目の部屋のドアは、二番目の部屋と同じように真っ黒だった。その黒い扉を開けると、中まで二番目の部屋と似ていた。棚が並んでいて、今度は香炉の代わりに瓶が並んでいる。この中に糊の瓶、ないかなあ……
一番近くにある瓶の蓋を開けてみる。中に入っていたのは黒い液体だ。
これが糊かな? 一応指で触れてみると、指に液体がまとわりついてきた。
なんだこれ! 振り払おうと、手を振ってみても、全然とれない!
手についた液体を取ることに夢中になってたら、振り回した手が当たって、瓶を落としてしまった。割れた瓶の破片が床に飛び散って、中に入っていた液体が床に広がる。
ど、どどど、どうしよう! また壊した!! 壊すなよって言われたのにーー!!
えーっとえーっと……とりあえず、割れた破片を集めて、床を拭こう!!
えーっと……雑巾……雑巾は……
部屋をキョロキョロ見渡すけど、雑巾は見つからない。代わりに、背後で音がした。
え!? なに? なに?
振り向くと、液体が落ちて黒くなったところから、灰みたいなものが飛び出している。なにこれ!!
灰は床からどんどん湧いてきて、それは噴水みたいに天井まで噴き上がる。このままじゃ部屋が灰だらけになっちゃう!
ま、まずい……棚もそこに置いてある瓶も、すでに灰だらけだ!!
わわわわわわっっ!! どどどどうしよう!! 雑巾……雑巾どこー!?
探している間にも、頭の上から灰が降ってくる。そして、急にそれが止まった。
何が起こったの?
見上げたら、灰がだんだん固まって、噴き上がっていた灰は太い幹に、四方に飛び散っていた灰は枝になり、最終的に、大きな木になった。その木には、柿がいっぱいなってる。
か、柿の木を作る液体だったの?? あの瓶の中身、魔法の道具なのかな? なんで柿の木を作る液体なんて作ってるんだろう?
やっぱりオーフィザン様って、変な魔法使いだ。
ん? あ、あれ!? 僕の大事なぬいぐるみがない!!
キョロキョロして、あのぬいぐるみを探す。あれ、大事なものなのに!!
すぐそばの柿の木を見上げたら、その枝に、何かが引っ掛かってるのを見つけた。
あ! 木の上だ!! 枝に引っかかってる!!
僕はすぐに木に登ろうとした。だけど、幹に足をかけた瞬間、急に頭がクラっとした。
え……え? な、なにこれ……か、体が熱い……だ、だけど、あのぬいぐるみだけは取り返さないと……
フラフラしながらも、必死に幹にしがみつく。それなのに、体に生まれた熱はますます増していく。な、なにこれ……敏感なところが、ピクピクしてる。
「う……あ、ああ! や、やだあ!!」
なんだこれ……オーフィザン様の泡でいじめられた時みたいだ。頭の猫耳がピクピクしてる。うう……体の中が熱いよお……な、なんで急に……
「ひううぅ……あ、あ!!」
もう無理ーーーーっ!!
我慢することをやめて、木から離れて力を抜くと、体の中でめちゃくちゃに膨らんだ欲望が噴き出していく。呆然と射精を繰り返す僕。
うわああ……気持ちいい。それに、なんだか頭がぼーっとしてきた。もう全身が快感で溶けていくみたい。射精もまだ終わらない。
ドロドロ精液を溢れさせながら、僕はフラフラ木に近づいた。
ぬいぐるみ……取り返さないと……
木に登ろうと幹に触れると、僕が触ったところだけ、灰に戻ってしまう。
しかも、灰に戻ったところから、またさっきみたいに、いっぱい灰が噴き出してきた。と、止まらない!!
噴き出した灰は僕の体に降りかかってくる。このままじゃ灰に埋もれちゃう!
射精も止まらないし、もう立っていられない。僕は、その場に倒れこんでしまう。それでも体の昂揚はおさまらない。射精しながら灰に埋もれていく僕の体。
もう、頭には灰が積っちゃってるし、体は動かないし力が入らない。なんとかしなきゃって思うのに、ふわふわした夢心地の中にいる。もうこのままでいいかな……
だけどその時、バン、と乱暴に扉が開いた。
オーフィザン様だ!!
一気に頭が夢心地から現実に戻る。
え、ちょ、ま、まずい……
わけがわからない状態になった部屋を見て、オーフィザン様は一瞬固まり、灰に埋もれた僕を睨みつけ、怒鳴った。
「このバカ猫!! なにをしているっ!!」
「ご、ごめんなさいぃ……これ、止めてください……」
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