【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
142 / 174
番外編13.恩返しします!

142.負けない!

しおりを挟む

 僕だって、セリューには負けないもん!! 僕の方が役に立って、オーフィザン様の隣に行く!!

 決意する僕の隣で、兄ちゃんも、ぐって両手を握って言った。

「じゃあ、クラジュ!! 行くぞ!」

 兄ちゃんがドアをこんこんってノックする。すると、すぐに返事があったけど、オーフィザン様、なかなか出てこない。

 まだかな……?

 さすがに今度は覗きながら待っているわけには行かなくて、兄ちゃんと二人で、ドアから少し離れて、誰かが出てきてくれるのを待つ。

 なんだか待ってる間にドキドキしちゃう。今日は失敗できない!! 絶対にオーフィザン様のお役に立つんだもん!

 ぎゅうって両手を握ったら、ビリって嫌な音。

 スカートの裾が破れてるううううう!!

 爪がスカートに引っかかって切れちゃったんだ!! うわああああん! どうしようーーーー!!

 隣にいる兄ちゃんは、ドアの方を向いていて、緊張しているのか、ジッと前を見つめたまま。僕の方には気付いていないみたい。

 兄ちゃんと約束したんだ。僕はオーフィザン様の役に立つって! だから自分でなんとかしなきゃ!!

 とにかく、扉が開くまでになんとかする!!

 でも……どうしようーーーー!!

 うわああああん!! ドアの方に足音が近づいてきた!! は、早くなんとかしなきゃ!! だけどどうしていいか分からないーー!!

 おろおろしているうちに、扉が開いちゃう。も、もう最初からこういう服ってことにしちゃえ!!

 僕は何にもなかったことにして、前を向く。

 扉を開いて出てきたのは、執事のセリュー。彼は廊下に僕がいるのを見つけて、めちゃくちゃ怖い目で僕を見る。

 いつもなら震えあがっちゃうところだ。だけど、今はその顔を見たら、さっきオーフィザン様がセリューをこちょこちょしてた時のことを思い出しちゃう。

 うううーー……今日はセリューにだけは絶対負けない!!

 決意する僕に、セリューはいつもの調子で、嫌悪感たっぷりに言った。

「……クラジュ…………なぜ部屋から出ているのです? ここはお前のような者が来ていいところではありません。失せなさい」
「な、なんでですか!?」
「なんで? よく言えますね。普段、オーフィザン様に散々迷惑をかけているあなたが」
「う、ううう…………そ、それは確かにそうなんですけど、き、今日の僕は、それを挽回しにきたんです!! せ、セリュー様こそ、さっきのあれ、な、何なんですか!!?」
「……何のことです?」
「さっきオーフィザン様にこちょこちょされてましたよね!?」
「はっ!?」

 セリューはいきなり真っ赤になる。そんな顔されたらますます気になる!!

「さ、さっき、オーフィザン様にくすぐられてたじゃないですか!! 猫じゃらしで!!」
「……なんのことでしょう?」
「とぼけないでください!! ず、ずるいです!! セリュー様ばっかり!! あれでこちょこちょされるの、いつも僕なのにっ……!」
「知らんといっているだろうっっ!! このバカ猫!!」
「バカ猫じゃないもん! 僕、見たもん! せ、セリュー様が、オーフィザン様に首とかほっぺとかお尻とかこちょこちょされてるの! ず、ずるいっ……!! あれでこちょこちょされるのは僕の役目です!!」

 つい叫んじゃうと、兄ちゃんが慌てて僕の口を手で覆う。

「や、やめなさい! クラジュ!! 見なかったことにするんだ!!」
「しないもん!」

 僕は怒りの力で兄ちゃんを振り払い、セリューを指差した。

「セリュー様!! 今日の僕は、セリュー様にだけは負けません!! セリュー様よりオーフィザン様のお役に立って、隣に座ってこちょこちょしてもらうんだもん!!」
「お前が私よりだと……? このクソ猫がっ……!! 今すぐ消えないとこの場で切り刻むぞ!!」
「き、消えないもん!! 僕絶対、オーフィザン様の役に立つもん!!」
「そんなことができるはずがないだろう!! また何かを壊す前に失せろ!」
「僕、壊したりしないんもん!! ど、どいてください!! セリューの意地悪!!!!」
「黙れクソ猫!!」
「黙らないもん!! 意地悪執事ーーー!!」
「何だとこのバカ猫!!」

 言い合いになっちゃう僕らの間に、兄ちゃんが入ってくれた。

「ま、待ってください!! セリューさん!!」
「ディフィク……」
「クラジュは本当に、オーフィザン様のお役に立ちたいと思っているんです!! ここを通してください!!」
「……あなたの気持ちはわかります。そこのバカね…………クラジュは、バカ……少々注意が足りないところがあるとはいえ、あなたにとっては家族です。くずね……クラジュを庇いたくなる気持ちは理解しますが、ここは通せません」

 セリューって、僕以外の人の前では言葉を選ぶなあ……特に、兄ちゃんの前では。さっき目の前でバカバカ言ってたくせにーーー!!

 ひどいって言い返そうとしたけど、兄ちゃんは前に出ようとした僕を止めて、セリューに向かって言った。

「セリューさん! 無理を言っているのは重々承知の上です! で、ですが、クラジュだって、ものすごくドジでバカでもオーフィザン様のお役に立ちたいと頑張っているんです! 俺がずっと横について、ドジを防いで見せます! ここを通してください!!」
「……あなたの努力は認めます。しかし、クラジュのドジを防ぐなんて、絶対に無理です。諦めてください」
「セリューさん!!!! お願いします!!」
「ディフィク……」

 いつもなら引き下がる兄ちゃんが、絶対に引こうとしないところを見て、セリューもちょっと気圧されている。今日の兄ちゃんは、隣で見ている僕もびっくりするくらい、すごい迫力だ。

「俺たち兄弟にとって、オーフィザン様は恩人です!! だからこそ!! クラジュだってオーフィザン様のお役に立ちたいと思っているんです! お願いします! 今日は一日中、俺がクラジュのそばについています!! 決してオーフィザン様にご迷惑はおかけしません!!」
「……そう言いますが、城の掃除はどうしたのです?」
「全て終わりました!」
「全て!?」
「はい!! これも、ご恩をお返しするためです!! セリューさん!! お願いします!!」
「で、ディフィク……落ち着いてください……」

 兄ちゃんのあまりの勢いに、さすがのセリューも一歩下がる。

 僕もお願いしますって言ったら、セリューには「あなたは黙っていなさい」と言われて、兄ちゃんにまで「クラジュは静かにしていなさい」って言われちゃう。

 うううー…………僕だって、セリューを説得したいのに!

 だけど、僕が何か言っても、セリュー様をますます怒らせちゃうのかな……

 口を閉じていたら、セリューは根負けしたようにため息をついて、奥からオーフィザン様の声がした。

「セリュー、入れてやれ」
「しかしっ……! オーフィザン様っ……!」
「クラジュのことなら俺が見ている」
「…………承知しました……」

 セリューはすごく嫌そうだけど、僕らに向き直った。

「……ディフィク……決して、クラジュから目を離さないように。クラジュ、あなたは決してディフィクの前に出ないように!」
「はい! ありがとうございます!!」

 僕らは元気に同じ返事をして頭を下げて、お部屋の中に入った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

処理中です...