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番外編13.恩返しします!
142.負けない!
しおりを挟む僕だって、セリューには負けないもん!! 僕の方が役に立って、オーフィザン様の隣に行く!!
決意する僕の隣で、兄ちゃんも、ぐって両手を握って言った。
「じゃあ、クラジュ!! 行くぞ!」
兄ちゃんがドアをこんこんってノックする。すると、すぐに返事があったけど、オーフィザン様、なかなか出てこない。
まだかな……?
さすがに今度は覗きながら待っているわけには行かなくて、兄ちゃんと二人で、ドアから少し離れて、誰かが出てきてくれるのを待つ。
なんだか待ってる間にドキドキしちゃう。今日は失敗できない!! 絶対にオーフィザン様のお役に立つんだもん!
ぎゅうって両手を握ったら、ビリって嫌な音。
スカートの裾が破れてるううううう!!
爪がスカートに引っかかって切れちゃったんだ!! うわああああん! どうしようーーーー!!
隣にいる兄ちゃんは、ドアの方を向いていて、緊張しているのか、ジッと前を見つめたまま。僕の方には気付いていないみたい。
兄ちゃんと約束したんだ。僕はオーフィザン様の役に立つって! だから自分でなんとかしなきゃ!!
とにかく、扉が開くまでになんとかする!!
でも……どうしようーーーー!!
うわああああん!! ドアの方に足音が近づいてきた!! は、早くなんとかしなきゃ!! だけどどうしていいか分からないーー!!
おろおろしているうちに、扉が開いちゃう。も、もう最初からこういう服ってことにしちゃえ!!
僕は何にもなかったことにして、前を向く。
扉を開いて出てきたのは、執事のセリュー。彼は廊下に僕がいるのを見つけて、めちゃくちゃ怖い目で僕を見る。
いつもなら震えあがっちゃうところだ。だけど、今はその顔を見たら、さっきオーフィザン様がセリューをこちょこちょしてた時のことを思い出しちゃう。
うううーー……今日はセリューにだけは絶対負けない!!
決意する僕に、セリューはいつもの調子で、嫌悪感たっぷりに言った。
「……クラジュ…………なぜ部屋から出ているのです? ここはお前のような者が来ていいところではありません。失せなさい」
「な、なんでですか!?」
「なんで? よく言えますね。普段、オーフィザン様に散々迷惑をかけているあなたが」
「う、ううう…………そ、それは確かにそうなんですけど、き、今日の僕は、それを挽回しにきたんです!! せ、セリュー様こそ、さっきのあれ、な、何なんですか!!?」
「……何のことです?」
「さっきオーフィザン様にこちょこちょされてましたよね!?」
「はっ!?」
セリューはいきなり真っ赤になる。そんな顔されたらますます気になる!!
「さ、さっき、オーフィザン様にくすぐられてたじゃないですか!! 猫じゃらしで!!」
「……なんのことでしょう?」
「とぼけないでください!! ず、ずるいです!! セリュー様ばっかり!! あれでこちょこちょされるの、いつも僕なのにっ……!」
「知らんといっているだろうっっ!! このバカ猫!!」
「バカ猫じゃないもん! 僕、見たもん! せ、セリュー様が、オーフィザン様に首とかほっぺとかお尻とかこちょこちょされてるの! ず、ずるいっ……!! あれでこちょこちょされるのは僕の役目です!!」
つい叫んじゃうと、兄ちゃんが慌てて僕の口を手で覆う。
「や、やめなさい! クラジュ!! 見なかったことにするんだ!!」
「しないもん!」
僕は怒りの力で兄ちゃんを振り払い、セリューを指差した。
「セリュー様!! 今日の僕は、セリュー様にだけは負けません!! セリュー様よりオーフィザン様のお役に立って、隣に座ってこちょこちょしてもらうんだもん!!」
「お前が私よりだと……? このクソ猫がっ……!! 今すぐ消えないとこの場で切り刻むぞ!!」
「き、消えないもん!! 僕絶対、オーフィザン様の役に立つもん!!」
「そんなことができるはずがないだろう!! また何かを壊す前に失せろ!」
「僕、壊したりしないんもん!! ど、どいてください!! セリューの意地悪!!!!」
「黙れクソ猫!!」
「黙らないもん!! 意地悪執事ーーー!!」
「何だとこのバカ猫!!」
言い合いになっちゃう僕らの間に、兄ちゃんが入ってくれた。
「ま、待ってください!! セリューさん!!」
「ディフィク……」
「クラジュは本当に、オーフィザン様のお役に立ちたいと思っているんです!! ここを通してください!!」
「……あなたの気持ちはわかります。そこのバカね…………クラジュは、バカ……少々注意が足りないところがあるとはいえ、あなたにとっては家族です。くずね……クラジュを庇いたくなる気持ちは理解しますが、ここは通せません」
セリューって、僕以外の人の前では言葉を選ぶなあ……特に、兄ちゃんの前では。さっき目の前でバカバカ言ってたくせにーーー!!
ひどいって言い返そうとしたけど、兄ちゃんは前に出ようとした僕を止めて、セリューに向かって言った。
「セリューさん! 無理を言っているのは重々承知の上です! で、ですが、クラジュだって、ものすごくドジでバカでもオーフィザン様のお役に立ちたいと頑張っているんです! 俺がずっと横について、ドジを防いで見せます! ここを通してください!!」
「……あなたの努力は認めます。しかし、クラジュのドジを防ぐなんて、絶対に無理です。諦めてください」
「セリューさん!!!! お願いします!!」
「ディフィク……」
いつもなら引き下がる兄ちゃんが、絶対に引こうとしないところを見て、セリューもちょっと気圧されている。今日の兄ちゃんは、隣で見ている僕もびっくりするくらい、すごい迫力だ。
「俺たち兄弟にとって、オーフィザン様は恩人です!! だからこそ!! クラジュだってオーフィザン様のお役に立ちたいと思っているんです! お願いします! 今日は一日中、俺がクラジュのそばについています!! 決してオーフィザン様にご迷惑はおかけしません!!」
「……そう言いますが、城の掃除はどうしたのです?」
「全て終わりました!」
「全て!?」
「はい!! これも、ご恩をお返しするためです!! セリューさん!! お願いします!!」
「で、ディフィク……落ち着いてください……」
兄ちゃんのあまりの勢いに、さすがのセリューも一歩下がる。
僕もお願いしますって言ったら、セリューには「あなたは黙っていなさい」と言われて、兄ちゃんにまで「クラジュは静かにしていなさい」って言われちゃう。
うううー…………僕だって、セリューを説得したいのに!
だけど、僕が何か言っても、セリュー様をますます怒らせちゃうのかな……
口を閉じていたら、セリューは根負けしたようにため息をついて、奥からオーフィザン様の声がした。
「セリュー、入れてやれ」
「しかしっ……! オーフィザン様っ……!」
「クラジュのことなら俺が見ている」
「…………承知しました……」
セリューはすごく嫌そうだけど、僕らに向き直った。
「……ディフィク……決して、クラジュから目を離さないように。クラジュ、あなたは決してディフィクの前に出ないように!」
「はい! ありがとうございます!!」
僕らは元気に同じ返事をして頭を下げて、お部屋の中に入った。
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