上 下
35 / 105

35.食事の準備

しおりを挟む

 僕らは服を買ってから、城のあったところに戻って来た。すると、クレーターがあったところに湖ができている。それに月が写っていた。もう夜だ。

 レヴェリルインは、その湖の水に手をつけて言った。

「水の魔法をかけておいてよかった……これで、食事を作れる。ドルニテット」

 レヴェリルインに言われて、ドルニテットは買ってきた鍋と、調理道具を伯爵の背中から下ろしていた。

「いい野菜が手に入りました、兄上。ちょっと新鮮すぎますが……」
「今日はそれをスープにするか」

 レヴェリルインはそう言って、魔法で薪を集めて火をつける。ぼっと、小さな音がして、火が上がった。

 焚き火に照らされて、レヴェリルインが僕に振り向く。

「コフィレグトグス」
「は、はい!!」
「……食事を作る。野菜を洗ってくれるか?」
「はい!!」

 頷くと、レヴェリルインはやけに嬉しそうに笑った。

 なんだか、今日のレヴェリルインはよく笑う。

 こうしていると、城の中にいた時とは、ずいぶん雰囲気が違う……って言っても、僕、毒の魔法を教わっていた時も、それが失敗してからも、ほとんどレヴェリルインと話していないんだ。

 レヴェリルインは、僕にカゴいっぱいの、変な形の野菜を渡してくれる。なんだか変わった形の野菜ばっかりで、めちゃくちゃ重い! 人参みたいなのは、僕の身長の半分くらいある……こ、これ、洗うの!??

 重さに負けて、今にもカゴを落としそうな僕に、レヴェリルインが心配そうに声をかけてくれた。

「……大丈夫か?」
「は、はいっ……!」
「………………本当に大丈夫か?」
「は……い……」

 答えながらも重い……よくレヴェリルインはこんなの片手で運んでたな……
 だけど、はいって言っちゃったし、今さらできないなんて言えない。

 ずっしり重いものをフラフラしながら湖に向かって運ぶ。だけど結局無理で、カゴを落としてしまう。

「わっ……」

 落ちたカゴから、ころころボールみたいに丸い芋が転がっていく。慌てて追って、それをカゴに乗せた。

「も、申し訳ございませんっ……!」
「気にせずゆっくり運べ」
「は、はい……」

 なんだかレヴェリルイン、楽しそう……?

 背後では、ラックトラートさんが、「では僕たちは森で何か食べられそうなものを探してきます!!」と言って、警備隊の人と森へ入っていった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

初めて僕を抱いたのは、寂しい目をした騎士だった

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:178

お嬢様の身代わり役

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:84

騎士団長の幼なじみ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,328pt お気に入り:635

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:958pt お気に入り:1

車いすの少女が異世界に行ったら大変な事になりました

AYU
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,036pt お気に入り:50

処理中です...