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しおりを挟むラックトラートさんは、何だか楽しそう。レヴェリルインにどれだけ冷たい目をされても怯まない。
「レヴェリルイン様!! 冒険者になるんですか!?」
「あそこに用があるだけだ」
「用? なんですか?? 腹いせに冒険者ギルドを破壊するんですか?」
「……そんなはずがないだろう。あそこにいる剣術使いに用がある」
レヴェリルインがそう言うのを聞いて、少し離れたところで焚き火を見つめていたソアドルトが顔を顰めていた。
ラックトラートさんも、怪訝な顔をして言った。
「剣術使いって……あそこの剣術使いは、魔法使い嫌いが多いんです。レヴェリルイン様、知ってますよね? 元伯爵の弟とは言え、もう貴族じゃないんですから、何されるか分かりませんよ? 行かない方がいいと思います……そ、それに、あまり街をうろつかない方がいいです! 王子殿下だって、お怒りなんです。貴族が集まる城を爆破しようとした……っていうか、爆破したんですよね? 僕の情報網によれば、レヴェリルイン様は、貴族を虐殺しようとした狂人として、明日には手配される予定だそうです。もう少し、気をつけて行動されるべきです!」
「さすが、情報が早いな……手配は明日か?」
「はい。一部の貴族からの反発があったようです。王子殿下も、陛下から毒の魔法の成功を求められているとは言え、貴族たちからの協力は得られていないのが実情のようです」
「だったらちょうどいい……明日にはもう一度、街へ向かう」
「な、なんでそこまでして……僕の話、聞いてました? このままじゃ、一生王子殿下に追われちゃいますよ?」
「だからこそ、ギルドで剣術使いを借りて、隣町へ向かう」
「隣町!? もっとやめた方がいいですよ!! あっちには、魔法使い嫌いの剣術使いがいーぱいいるんです!!」
「だからだ。冒険者ギルドには、剣術使いが多い。そこで剣術使いを一人借りて、隣町まで案内させる」
それを聞いていたのか、ソアドルトが近づいてくる。背中の剣を両手で握り、ひどく敵意のこもった目をして。
「お前たちはいつもそうだっ……! 俺たちをものの様にっ……」
その切っ先が、レヴェリルインに向けられて、僕はとっさに二人の間に入ってしまった。まるで、レヴェリルインに抱きつく様な格好になってしまい、レヴェリルインが目を丸くしている。だけど、このままじゃレヴェリルインが刺されてしまうと思ったんだ。だって、レヴェリルインは微動だにしていない。相手はその身長程もある大剣を抜いて、レヴェリルインに向けているのに。
それなのに、レヴェリルインは、焚き火の方を見たまま、平然と言った。
「座れ。俺は剣術使いと喧嘩がしたいんじゃない」
「るせえっ……! 俺は警備隊だ!! お前の手配は明日からだが、なんなら今ここで捕縛してもいいんだぞ!」
「それができないからそうしているんだろう? とにかく、座れ。俺はお前たちをものだと思ったことはない。ただ、力を貸してほしいだけだ」
「…………魔法使いがか? 馬鹿らしい! 誰が貸すか!! 何企んでんだよ! 魔法使い!!」
「俺は、コフィレグトグスに魔力を返したいんだ」
そう言ってレヴェリルインは、僕に振り向いた。
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