誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
1 / 106

1.僕の大好きな恋人


 欲しいものは絶対に欲しいし、いらないものは見るのも嫌。

 そんな僕、トラシュには大事な恋人がいる。ダストという名前で、僕よりちょっと背の高い、世界で一番格好いい人。彼から告白された時はすごくびっくりしたけど、今では寝ても覚めてもダストのことを考えている。

 そろそろ、朝食の用意をしなきゃ。

 2LDKの部屋はダストと一緒に住むために、ダストが選んで僕が借りた。ダストの意見だけで借りた部屋だけど、この広いキッチンは僕のお気に入り。

 とろとろの卵をいっぱいかけたオムライスに、ケチャップでいつも描いているダストの似顔絵を描き上げ、ついでに魔法もかけて、完成度を上げる。

 ちょっと離れたところから眺めて、出来栄えを確認。

 完璧だ。本物には敵わないけど、その次くらいに格好いい。

 最後にサラダを盛り付けて、ダストが待っている彼の部屋に急いだ。

 ダストの部屋は、キッチンを出てすぐ。部屋のドアをこんこんノックしながら、僕は中にいるはずのダストに声をかけた。

「ダスト。朝食、できたよ。特製ダストオムライス」

 だけど、誰も出てこない。

 いつも自分の部屋のベッドでテレビ見ながら寝てるのに。どこか行ったのかな……

「ダスト……どこ……?」

 呼びながら、トイレや洗面所、おふろに玄関まで確認したけど、いない。せっかくのオムライスが冷める……

「なんだよ……トラシュ……」

 あ、いた。僕の部屋から出てきた。
 ダストは綺麗な金髪で、背が高くて、とっても優しいけど、ちょっと朝が苦手。そして、僕の部屋でよく寝てしまう。

「ダスト、朝ご飯。特製ダストオムライス」
「いらね。出かけてくる」
「……どこ……行くの?」
「パチンコ」
「……またかよ……オムライスは……?」
「ん? 食うよ」

 ダストは振り返って、僕が持っていた皿の上に乗ったオムライスの真ん中を、スプーンですくって食べてくれる。

「じゃあな」

 彼は、僕に手を振って家を出て行った。

 ダストの仕事はギャンブラー見習い。まだ見習いでお金ももらえないから、ギャンブル代は全部僕が出している。

 小柄で非力な僕だけど、魔法が使えるから、魔物退治の仕事で稼げる。

 ここは、しょっちゅう魔物が暴れ回り、魔物の魔力で汚染された砂で砂嵐が起こる、危険な街。

 人族の僕が生きるには難しい街だけど、彼がいるから僕は毎日楽しい。

 ダストが出かけるのは寂しいけど、彼がいつも行くパチンコ屋なら、全部知っている。仕事中に監視しておかなきゃ……

 ダストは仕事で忙しいみたいだし、残ったオムライスは僕が食べるか。大切なダストオムライスだから。

 リビングに戻って、ダイニングテーブルにつく。

 ダストは出かけてしまったけど、テーブルの上には、僕がいっぱい撮ったダストの写真がずらっと並んでいる。

 ん……? 十個あるはずの写真立てが、五つしかない。中央に並べていたはずのそれが、全部テーブルの端に避けられている。

 ダストだな……

 ここにあるのは、僕のお気に入りのダストの写真。二人で撮ったのも、僕が勝手に撮ったのもある。
 それを、ダストはよく邪魔だと言って、テーブルの端にどけてしまう。一体何が邪魔なのか……

 写真立てをきれいに並べなおしていたら、また異変。大事なダストの写真が端からなくなっていく。何かと思えば、いつの間にか勝手に部屋に入ってきていた男が、持っているゴミ袋に、僕の大切な写真たてを次々放り込んでいた。

「何をしているんですか!! フュイアルさん!!」

 怒鳴りつけても、勝手に家に入ってきて勝手にリビングのテーブルの横に立ったフュイアルさんは、怒る僕を無視して、写真たてを全部ゴミ袋に放り込んでしまう。

「捨てるよ」
「捨てません。返してください」
「もうない」

 フュイアルさんがゴミ袋を開いて見せてくる。そこにはもう、ダストの写真も写真立てもない。魔法でどこかへやってしまったんだ。

「返してください。魔法で元に戻せますよね?」
「焼き尽くした。二度と出てこない」
「……」

 最低だ。フュイアルさんはいつもこういうことをする。

 フュイアルさんは、人の姿をしているけど、正体は魔族。真っ赤な炎みたいな長髪に、金色の目、凶悪な人相をしていて、いつも真っ黒な服を着ている。強力な魔法をいとも簡単に操ることができるから、こうしてたまに勝手に僕らの部屋に入ってくる。一応、僕の職場の上司でもある。

 この人がこうやって入ってくるから、ダストはよく怒って出て行ってしまう。お気に入りのダストの写真まで焼かれてしまうし、もう、僕が魔法でこの男を焼いてやるっ!!!!

 怒りを込めて放った全力の炎の魔法は、あっさりフュイアルさんに吹き散らされる。フュイアルさんの魔法は強力。僕では歯が立たない。

 僕は、魔法の鎖でぐるぐる巻きにされてしまった。

「離せよっ!!! おい!!」

 くっそ……外れない!!

 床に転がされて、もがきながら見上げると、フュイアルさんは勝ち誇った笑みを浮かべ、僕を見下ろしていた。

「トラシュにその鎖は外せない。大人しく、あの男と別れろ」
「またその話っ……別れません! 絶対に!!」
「……トラシュは人と付き合わない方がいいし、ダストはトラシュを利用しているだけだよ?」
「利用なんてしてません。なんでダストを悪く言うんですか?」
「ダスト。二十五歳。無職。現在トラシュのマンションに同棲という名目で居候中。生活費など、金は全てトラシュが出している。趣味、ギャンブル。トラシュが貢いだ金額、五百万。全てギャンブルに注ぎ込まれている。別れな」
「だから、なんでですか?」
「……今言ったことだけで、なんで別れろって言うか、分かるんじゃない?」
「分かりません。僕はダストが好きです。ダストも僕が大好きです。別れる理由なんてありません」
「あるでしょ。トラシュにもダストにも。ありすぎで溢れかえってるでしょ」
「ないです! 帰れっ! 不法侵入だっ!!!!」

 思いっきり怒鳴ると、怒らせてしまったらしく、フュイアルさんの目が冷気を帯びる。

「それなら無理やり連れて行く……」
「え? あ……や、やめろっ!!」

 制止した時には、もう遅い。

 フュイアルさんは、僕に向かって手を伸ばしてくる。またいつもみたいに魔法を使う気だ。

 すぐに逃げ出したかったけど、僕が逃げるための魔法を使うより、フュイアルさんが僕に魔法を浴びせる方が早くて、僕は気を失ってしまった。

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL要素までとても遠いです。前半日常会多め。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。