誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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4.一大事!


 外へ出たら、二度とオフィスになんか戻りたくなくなりそうだったけど、何度かそれをやって、後でフュイアルさんにひどい目に遭わされてきた。だから今日は、ちゃんとオフィスに戻った。

 買ってきたのは大量のファーストフード。僕はこれが好きだ。片手で食べながらダストを観察できるから。
 フュイアルさんに買っていくのも毎回同じもの。フュイアルさんは、それを知っていて、僕に買ってくるように言うんだ。

 冷めないうちに急いでオフィスに戻ると、デスクで作業していたフュイアルさんは、一人満足げな笑顔で僕を迎えた。

 そして、僕が買ってきたものを笑顔で受け取る。最初の頃は「毒でも入れた?」なんて聞かれたけど、僕は毒は使わない。

 ダストは毒が嫌いなんだ。僕が持っていた瓶を、毒の瓶と勘違いしたらしいダストが、「俺は毒は嫌いだからな」って言ってたから。
 彼は、僕が元彼を毒殺したと思っているみたいなんだ。もちろん、僕はそんなことしない。フュイアルさんが魔法で消しちゃったんだ。きっと、魔法で街の外に放り出したんだろうけど、昔の彼のことなんてどうでもいいし、その生死にだって、僕は全く興味ない。それなのに、僕が殺すはずない。

 だって今僕は、ダストのことで頭がいっぱいなんだから。

 僕は、ダストに嫌われたくない。

 それにフュイアルさんに「毒なんか仕込んだらもう家に帰してあげない」って脅されたことがある。家に帰れなかったら、ダストに会えない。
 せめてフュイアルさんが塩分とりすぎて死ぬように、買ってきたポテトに塩を振ろうとしたら、魔法でおでこに塩の塊をぶつけられた。

 ムカつく上司にハンバーガーが入った袋を渡して、僕は、自分のデスクでポテトをかじりながら、ダスト観察の続きを始めようとした。

 そしたら、またすぐにフュイアルさんに見つかって、手錠をかけられてしまう。

 僕はダストがいないと、生きていられないのに。

 ダストに会いたい……ダスト見てないと死にそう……

 その一心で、フュイアルさんに手錠を外されるたびにダスト観察を繰り返していたら、ついに手錠を外してもらえなくなった。

 こっそりやってたつもりなのに、全部バレてる。
 フュイアルさんは、仕事しながらでも僕を監視することができるらしい。

 やっと休憩時間になり、フュイアルさんは、笑顔で手錠をはずしてくれた。

「もう悪いことしないようにね」
「……はい……」

 やっと自由だ。休憩時間だし、今なら何をしていても、フュイアルさんに邪魔をされない! ダスト観察できる!!

 早速魔法の双眼鏡を作り出す。窓に駆け寄ってダストを探すけど、パチンコ屋にはいなくなっていた。

 じゃあ、きっとパチンコ屋の近くの定食屋だ。ダストはいつもそこで食事をするから。

 早速、魔法の双眼鏡をのぞくけど、そこにもダストはいない。

 じゃあ、近くの立ち飲み屋か! ダストはパチンコに負けたらそこでやけ酒するんだ。

 今度はその立ち飲み屋を探したけど、ダストはいない。周辺を探してもいない。家にもいない。

 大変だ……ダストがいなくなった!!

「どこ行くの?」
「わっ!!」

 早速ダストを探しに行こうとしたら、またフュイアルさんの鎖に縛られた。足の先まで縛り上げられ、ぐるぐる巻きにされて床に転がされてしまう。

「離してくださいっ! 休憩時間じゃないですか!!」
「ダスト探しに行くんだろ? だめ」
「なんでですか!!??」
「だって、一回探しに出ていったら、トラシュ、もうここに戻ってこないでしょ?」
「ダスト見つけたら戻ります」
「仕事終わってから行って」
「ダストが行方不明なんです!! 休憩時間にどこへ行こうと、僕の勝手です!!」
「ダメ」

 くっそ……ダストがいなくなったっていうのに、こんなところに転がっていられるか!! こんな鎖、力尽くで切り刻んでやる!!

 全身の魔力を振り絞り、鎖を切るために集中する。けれど、フュイアルさんの鎖を僕が打ち破れたことは一度もない。

 反発した魔力が、鎖と一緒に僕を締め付けてくる。

「いっ……ぐっ……!!」

 とにかく鎖を切るために足掻いていたら、フュイアルさんは長いため息をついて、初めて鎖を消してくれた。

 なんで……いつもは絶対外してくれないのに……

 見上げると、その男は呆れたように言った。

「仕方ないな……俺も一緒に行ってあげる」
「結構です! 僕一人で行きます!!」
「それならまた鎖で縛る」
「はっ!? ぼ、僕が何したっていうんですか!!?? 行方不明の恋人探しに行くことの、何が悪いんですか!!」
「行方不明じゃないでしょ。トラシュがダスト探せなくなっただけでしょ」
「だから、それが一大事なんです!! ダストを探さなきゃ……」
「待ちなさい」

 走り出そうとしたら、後ろから襟首を掴まれてしまう。

「離してくださいっ!」
「だから、俺も行くっていってるだろ? 見張り役として」
「こないでください! フュイアルさんと行くなんて、絶対嫌です!!」
「じゃあ、いかせてあげない」
「そんなっ……!」

 こっの……クソ上司!! 最低だっ!!

 もう、今日という今日こそは殺してやる!!

 振り上げた手を、ギリギリのところで下げる。

 今、フュイアルさんと戦っても勝てない。それどころか、また魔力を取り上げられる。そんなことしてたら、ダストを探しに行くのが遅くなってしまう。

「わ、分かりました……ついてきたいなら、勝手についてきてください!!」

 やけくそで怒鳴ると、フュイアルさんはにっこり笑う。

「偉い偉い。じゃあ、行こうか。車出してあげる」
「結構です! マンション戻ってダスト探してから、自分の車で行きます!!」

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