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14.繰り返して
しおりを挟む「ごめんね……もうしないよ」
殴られた頬を押さえながら謝ると、彼は僕に唾を吐いて、背を向ける。
僕が勝手に部屋に置いてあった箱に触ったことを怒っているんだ。
新しくできた彼と、僕が一緒に住み始めてから、二週間が経った。
この部屋は彼と二人で住んでいるんだけど、彼はいつも、僕が勝手に部屋にあるものに触れると、すごく怒る。
少し前までなら、それくらいの言いつけは守れたのに、最近できなくなった。
何でなのかは分からない。
ダストと付き合ってた頃はできたのに。
彼と別れて、次の人と付き合って、フュイアルさんに邪魔されて、僕が冷めて、別れて、また別の人と付き合って、またフュイアルさんに邪魔されて、また僕が冷めて、別れて……
繰り返すうちに、僕は、下手になっていく気がする。
だんだん、前はできていたのに、うまくできなくなってる。
前は、恋人に合わせて、彼といる時間だけを楽しめたのに。そうしていれば、それでよかったのに。
なんでだろう。
振り返ると、僕を今し方殴った男が、僕に背を向けて、玄関の方に歩いていく。きっとまたギャンブルだ。
あれは、僕が大好きなはずの恋人の後ろ姿だ。
それなのに、なんでだろう。今は別の人に見えてくる。
愛した人がそばにいてくれれば、それだけで良かったはずなのに。
なんで、僕は今、こんなに気持ちが悪いんだろう。
僕は、怒られたはずの箱に、もう一度手を伸ばした。本棚に並んだ本の後ろに、隠すようにして置いてあったもので、古い木でできた、何か特徴があるわけでもない、普通の箱だ。
「……これ……一体なに?」
そっと、それを開こうとしたら、彼がドカドカと足音を立てて、大股で僕の方に近づいてきた。
見上げると、彼はこれまで見たことがないような顔をしていて、両手を僕の首に向かって伸ばしてくる。
「ど、どうしたの? 怖いよ………………ぐっ!!」
息ができない。
首が痛い。
何が起こっているんだ?
僕の首は、彼の両手で潰すように押さえられている。
もしかして、最愛の彼に首を絞められているのか?
「く……るし……やめっ……ぐっっ!!」
締め付けられた首からは、もう空気が入ってこない。
喉が焼けるように痛くて熱い。
頭まで熱くなって、かわりに他のところからは血が失われていく。
涙が溢れてきた目の向こうに、僕が大好きだったはずの人の顔。だけど、その顔からは愛を感じない。怒りと憎しみで汚れている。
なんで?
僕のこと、好きって言ってくれたのに、なんでこんなことするの?
僕を殺すの? 僕のこと、もう好きじゃないの?
涙が落ちていく。
その時、僕の首を絞めていた男の体が、消えた。
長く押さえつけられていた首から、一気に空気が入ってくる。何度も咳き込んで、勝手にボロボロ出てくる涙を拭って、僕は顔を上げた。
彼はどこにいったんだ?
キョロキョロして彼を探したら、僕の首を絞めた彼の体が、そばの押し入れの襖を突き破って、倒れていた。誰かに殴り飛ばされたみたいだ。
体も心も苦しくて、動けずにいたら、いきなり背後から、別の男に抱きしめられた。
「トラシュ!!」
ぎゅっと、僕の体は強くその男の胸の中に抱き寄せられる。身動きが取れないくらいに僕を捕まえている腕は、異様なほど力が強い。
その男に抱きしめられた痛みが、呆然としていた僕に、冷静さを呼び戻してくれた。
なんで僕、こんな奴に抱きしめられてるんだ。
「ちょ……離せ! フュイアルさん!!」
振り払おうとしたけど、フュイアルさんの腕はびくともしない。
どこから出てきたのか、勝手に僕と彼の部屋に侵入してきた最低な上司は、僕が離せと繰り返せば繰り返すほど、強く僕を抱きしめていた。
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