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66.振り解けない快楽
なんなんだ! なにが同棲だ!!
これというのも、いちいち手を止めてしまう僕が悪いんだ。今度こそ、あの男を殺す!
僕は、あの瓶を握りしめた。
もう今から風呂とか寝室とか、フュイアルさんがいないところから撒き初めてやろうか。
「トーラシュ」
「うわああああああああーーーーーっっ!!!!」
急に声をかけられて、びっくりして、僕は天井まで突き抜けてしまいそうな声で叫んだ。
びっくりした……すごくびっくりした!! だってこの人、さっきまでリビングにいたはずなのに!!
心臓が潰れるくらい僕をびっくりさせたフュイアルさんは、なぜか脱衣所に立っていた。いつの間に来たんだ!?
慌てて持っていた瓶をポケットにしまう。バレてないよな?
見上げても、フュイアルさんは、僕に微笑んだだけだった。
「そんなに大きな声を出したらダメだろ? 近所迷惑じゃないか」
「フュイアルさんがそれを言わないでください! いつも僕を嬲るくせに!! 離せよ!!」
「抱きしめるくらい許してよ。トラシュの体が回復するまで……しないから」
「……」
また、そんなことを言うんだ。僕は僕の体なんか、どうでもいいのに。
どうせフュイアルさんだって、そうなんだろ。
「嘘ばっかり……」
「え? 何か言った?」
「なんでもありません。我慢するなら、出て行ってください。お風呂入って来ます」
フュイアルさんに背を向ける。背を向けたりなんかしたら、後ろから襲われそうだけど、そんなことすら、どうでも良くなったみたいだ。
「……トラシュ…………」
背後から僕を呼ぶ声が、微かに掠れている。
だけどそれだけ。
いつまで経ってもフュイアルさんは何もしてこなくて、僕はフュイアルさんに振り向いてしまった。
そしたらフュイアルさんは僕を抱きしめてくる。だけどそれだけで、彼はその先に行こうとしない。
「フュイアルさん……? は、離してください……」
居心地が悪くなって、振り払おうとした。だけど強く振り払うどころか、微かに体を動かしただけ。これじゃ抵抗にならない。
なんだか冷たく感じる。フュイアルさんは、手だけじゃなくて体まで冷たい。
動こうとするのに動けなくて、しばらくそのままでいたら、僕の背中に微かに熱いものが触れた。
これって……媚薬の魔法?? 似てるけど……あれより辛い! 全身をくすぐられて快楽が噴き出してくるみたい。
「んっ……ふ、フュイアルさんっっ!! 何するんですか!!」
怒鳴る間も、体は高揚していく。喘ぎ声を抑えるだけで必死なのに、フュイアルさんは、僕を見下ろして言った。
「この際、手っ取り早く俺の魔力で癒そう」
「はあ!? や、やだっ……! それだけは嫌っ……!! ふ、フュイアルさんっ……!? こ、こんなのひどい!!」
「ひどくない。むしろこれ、俺のほうが辛いんだよ? こんなに美味しそうなトラシュを前に、お預けなんて」
「知るかっ……! 馬鹿!! あ、あっ……!」
「トラシュ……」
「な、なにっ……!? も、もうっ……!! 無理っ……!!」
「後でいっぱい、エッチなことしようね」
「するかっ……馬鹿っ!!」
殴ってやりたいのに、快楽に侵されているせいで、体に力が入らない。離せって言いながら見上げたら、フュイアルさんと目があった。
この人の目に映るのは、いつも見たくもない自分の姿。
それなのに、それを見た僕の手はフュイアルさんの背中に回っていた。
そうすると苦しいって分かっているはずなのに、しがみつくように抱きつく僕に、フュイアルさんは少し驚いたようだ。けれど、すぐに僕を抱きしめてくれる。
少ししてフュイアルさんが僕を離すと、途端に快感も消えた。
僕はその場にへたり込んでしまう。
魔力で無理矢理体を癒された影響だろう。まだ全身が気持ち良くて、夢心地だ。
そんな僕にフュイアルさんは微笑んで、ぼーっとしている僕の頭を撫でた。
「このくらいにしておこうか。トラシュ、辛そうだし。お風呂に入って、ゆっくり休んで」
「……」
気を抜けば熱くなりそうな体を抑えながら、せめて何か仕返ししてやりたくて睨んでも、フュイアルさんは僕に手を振って出ていくだけ。
くそ……なんなんだ、あいつ!! やっぱり殺す! 僕が殺す!!
立ち上がろうとした僕の体から、エイリョーゾに渡された瓶がこぼれ落ちる。こん、と音を立てて床に落ちたそれを見たら、今度は別の怒りが噴き出してきて、僕はそれを踏みつけた。
瓶は、僕の魔力で、中の砂ごと溶けて消えてしまう。
僕はそのまま、フュイアルさんを追った。
「フュイアルさん!! 待ってください!! 今度こそ、お前を殺す!!!!」
「トラシュ程度の魔力じゃ、俺は殺せないよ。諦めなさい」
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