誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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72.気持ちはバレないように

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 僕は、フュイアルさんを見上げた。なんでフュイアルさん、こんなに緊張感ないんだ。

「と、とにかく、相手は、フュイアルさんを殺す毒を持っています………………不完全なうちに、取り上げた方がいいと思います……」
「俺はそんなの、怖くないよ」
「魔力取られてもいいんですか!?」

 エイリョーゾと一緒にいる奴の魔力は、かなりのものだ。エイリョーゾも、魔力だけならもう一人に劣るけど、フュイアルさんの部屋に何度も潜り込んでいる。仲間がいるみたいだし、魔力を奪う毒なんて、放っておいていいわけないのに。

 じっと見上げていたら、フュイアルさんは、僕の頭を撫でた。

「トラシュがそこまで言うなら、俺が取り上げてくるから、トラシュはオーイレールたちと一緒にいて?」
「……魔力奪う毒を取り上げに行くのに、なんでフュイアルさんが行くんですか……僕が行きます」
「トラシュはそんな危ないとこ、行っちゃダメ」
「フュイアルさんの方が行っちゃダメです!!」

 怒鳴る僕を、フュイアルさんは驚いて見下ろしていた。

「……やっぱり、俺の魔力で癒す?」
「やめてください……あれ、苦手なんです!!」
「……トラシュ……」
「……なんですか?」
「あいつらは、魔物の処理に関与している。その手懐けにもね」
「……!」
「トラシュは来なくていいよ」

 なんで……そんなことを言うんだ?

 僕は奴隷の時に、魔物の処理に使われ、逃げてからは、魔物の気を引くことに使われていた。奴らは、僕に何をしているのか言わなかったけど、魔物の処理を隠れ蓑に、魔物の手懐けをしていたに違いない。
 フュイアルさん、僕が魔物の処理と手懐けに使われていたこと、知ってるのか?
 ゾッとする。だってそういう奴らは、フュイアルさんの敵なのに。

 けれど、フュイアルさんは僕に珍しく優しく微笑んでいる。

「トラシュはそういうのを見るの、嫌だろ?」
「……」

 僕は、首を横に振った。確かにあれは、二度と思い出したくない記憶。

 でも……

 もう一度、フュイアルさんを見上げた。僕はもう、この人に囚われている。フュイアルさんがいなくなったら……そんなことを考えるだけで苦しい。
 今フュイアルさんを一人で行かせるなんて、嫌だ。

「……僕も行きます」

 ダメだって言うんだろうと思ったら、フュイアルさんは、僕に微笑んだだけだった。

「じゃあ、俺から離れちゃダメだよ?」
「いいんですか?」
「うん」

 その返事に、勝手に顔が綻んでしまう。そんな態度が、フュイアルさんを戸惑わせているみたいだった。

「今日のトラシュは素直だなー。可愛いなー」
「は!? やめろキモいっっ!! お前なんかっ……別に、心配じゃない…………心配じゃないけどっ……! 行くだけだから!!」

 やっぱり、この人は僕を嬲っているだけだ。
 分かっていた。僕が愛されるなんてあるわけない。フュイアルさんは僕を好きって言うけど、あれは僕を嬲って遊ぶのが好きって意味だろう。すでにいっぱいいやらしいことされたし、縛られたし、ずっと喘がされたから、それくらい、分かってる。

 僕の気持ちは、バレないようにしよう。

 見上げると、フュイアルさんと目が合う。絶対に、好きになんか、なりたくなかった。この人だけは嫌だったのに。もう、自覚しないなんて、できなくなっちゃったんだ。

 フュイアルさんは、僕を抱きしめたまま、エイリョーゾともう一人に向き直った。

「じゃあ、俺のトラシュが心配するから、俺たちを仲間のところに連れていってもらおうか?」

 けれど、そんなことを言われて、二人がいいですよと言うわけがない。二人が構えて、フュイアルさんも構えた。

「俺はトラシュと早く家に帰りたいから、早く終わらせる。そっちの彼には、俺のトラシュが世話になったみたいだしね……」
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