誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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89.嫌がらせ

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 僕とフュイアルさんは、ウィウントに連れられて、城の地下まで来た。そこにあった大きな扉の前で、十数人が僕らを待っている。何人かは、魔物の討伐隊のようだ。
 そして、彼らと一緒にいる数人のうち、背中に竜の羽がある男と、数人の妖精族のことは、僕でも知っている。首都とその周辺の街を統治する竜王と妖精族だ。
 もう一人は、黒い真珠のような生地のマントを身につけた背の高い男で、背後に二人の男を従えている。ウィウントが、魔族の王だって教えてくれた。
 魔族の王だったら、フュイアルさんが仕える人ってことなんだろうけど、フュイアルさんは、微笑んで近づいてくる王に、恐ろしく冷淡な目を向けて口を開いた。

「こんなところまで付き纏って、嫌がらせか? 絞め殺すぞ」

 王であるはずの人に、そんな口をきいて、周りのみんなが驚いている。僕もびっくりした。フュイアルさんって、いつでもこうなんだ……

 それは魔族の王も知っているようで、怒り出すことはなく、少し困った顔をしたくらいだった。

「フュイアル……そう言うな……この前引き止めたことを怒っているのか? ひどいのは、急に帰ったお前の方ではないか。魔界の城の窓も、お前の魔法のせいで吹き飛んだままだ」
「ひどい? 俺が? あれのせいで、トラシュが危険な目にあってる時に到着が遅れたのに?」

 フュイアルさんがそう言うと、床から鎖が湧いてくる。それはあっさりと、そこにいた魔族の王を縛り上げた。

 倒れる王に、その背後にいた護衛とウィウントがすぐに駆け寄る。護衛たちは鎖を切ろうと魔法をかけているけど、フュイアルさんの鎖はそう簡単には切れない。いきなりフュイアルさんがそんなことをして、みんな大騒ぎだ。

 ウィウントは大慌てで、フュイアルさんを怒鳴りつける。

「フュイアル!! やめろ!! 今すぐ鎖を解け!!」
「ちっとも頼んでおいたことを終わらせないくせに、俺にだけ盗賊の捕縛押し付けた挙句、いつまでも城に足止めしたんだ。悪いのはそっち」
「フュイアル!!!!」

 ウィウントが怒ってる。

 フュイアルさんは腕を組んでそっぽを向いているけど、相手は魔族の王。絶対そんなことしていい相手じゃないはずってことは、僕にも分かる。

 フュイアルさんって、いつでもどこでも嗜虐的なんだな……

 魔族の王は、床に転がったまま、フュイアルさんに叫んだ。

「フュイアル! 落ち着いてくれ!! あの時引き止めたのは、ここ最近、強化された魔物が暴れているからでっ……!」
「横流しに協力した連中をいつまでも放っておいた方が悪いんじゃない?」
「しかしっ……高官の息子だったんだ! そう簡単にはっ……と、とにかく落ち着いてくれっ!!」
「とりあえず、お前失脚させるための嘆願書書いたから」

 そう言ってフュイアルさんが出したのは、一枚の書類。それには、こいつ殺しましょうとだけ書かれている。

 僕は、それを取り上げて、焼き尽くした。
 それから、王を縛る鎖を焼き切った。僕を縛る時の鎖に比べて、やけに脆い。
 フュイアルさん、僕のときだけ、ずっと強固な鎖で縛ってたな……変態め。どれだけ僕を嬲りたいんだ。

 僕は、フュイアルさんを見上げた。

「こういうの、よくないです。あと、僕に会いたかったって理由、やめてください。そんなこと言うから、ウィウントみたいに誤解する人が増えるんです。それと、偽造婚姻届はどこですか?」
「ここ」

 フュイアルさんが魔法で出した書類を、僕はフュイアルさんごと全部焼いた。
 書類は燃え尽きたのに、やっぱりフュイアルさんだけ燃えない。なんでいつもこの人だけ不燃物なんだよ。

 とりあえず、書類だけでも焼き払った僕は、床で倒れている魔族の王に手を貸した。

「大丈夫ですか?」
「…………今、どうやったんだ……?」
「え?」
「なぜフュイアルの用意したものが焼けるんだ? 鎖も焼き切っただろう……君は一体何者だ?」

 驚くその人に、僕は答えようとしたけど、隣のフュイアルさんに抱き寄せられてしまう。

「トラシュは俺の伴侶です」
「違います」
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