誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
90 / 106

90.知らない

しおりを挟む

 即座に否定するけど、フュイアルさんは聞いてないし、陛下も「伴侶だと!?」って、驚いている。フュイアルさんの言うことなんか、信じちゃダメだ。それなのに、もうこのまま無理矢理結婚させられそうな勢いだ。僕は絶対に嫌だぞ。

 だけど魔族の王は、僕に微笑んで言った。

「そうか……フュイアルの伴侶か……めでたいことだ。是非、魔界に顔を出してくれ」
「出さないし伴侶じゃないし結婚も婚約もしてないし恋人でもありません! お願いですから、そこだけは誤解しないでください!! 誰がこんな奴とっ……!!」

 すぐに否定しても、やっぱり誰も聞いてない。今度は、竜王が言った。

「トラシュ、魔界より首都に来てほしい。首都でも魔物が増えて、困っているんだ。フュイアルと式を挙げたら、ぜひ首都に顔を出してくれ」

 一緒にいた妖精たちも頷いているけど、今度は「トラシュはフュイアルと来てもらう」って言う魔族の王と睨み合いになっている。

 いつのまにか、僕がどこかに行く話になっている。僕はあの砂漠の街から出て行くつもりはないのに。だって、あそこには、フュイアルさんがいる。フュイアルさんのそばにいたいのに。だけど結婚はしないし伴侶でも恋人でもない。

 フュイアルさんは、僕を勝手に抱き寄せて、全員に向かって言った。

「トラシュは俺といるんです。俺はトラシュを離す気はないので、そのつもりでいてください」

 フュイアルさんが冷淡な笑顔で言うと、そこにいたみんなが黙ってしまう。フュイアルさんに睨まれて、何か言える人なんて、いるはずないんだ。

 静かになって満足したのか、フュイアルさんは、僕の肩を抱いたまま、微笑んだ。

「じゃあ、行こうか。トラシュ」
「どこにですか?」
「新婚旅行」
「死ね」

 何言ってるんだ、この人。僕、結婚するなんて言ってない。婚姻届も全部焼いたはずなのに、ふざけんなよ。まさか、まだ持ってるんじゃないよな……

 すっかり本題から離れた僕たちに、ウィウントが、とにかくこっちを先にお願いしますと言って、扉を開いた。

 ウィウントが重そうな鉄の扉を開くと、扉の向こうは地下牢だった。
 ウィウントに案内され、奥まで進むと、大きな牢があって、中に数人の人が入れられていた。僕らの足音に気づいて、中の奴らが振り返り、そのうちの一人が、僕を指差して叫ぶ。

「お前っ…………お前がトラシュか!?」
「…………っ!」

 びくっと、体が震える。
 怯える僕を、フュイアルさんが抱きしめてくれた。
 見上げたフュイアルさんは、いつもと全く変わらない。その顔を見上げて、フュイアルさんの冷たい体に包まれていたら、気持ちも落ち着く。

 振り向いて、牢の中の男と顔を合わせるけど、誰なのかは分からなかった。

「誰……? 僕を知っているの?」
「……人族の魔法使いだろう!! 誰でも知っている! お前が……トラシュ…………」

 そんなこと言われても困るんだけど……僕、知らないのに……
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...