誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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番外編

101.僕はまだ不満

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 結局、昨日魔物が出たビルの検証には、ヴァルアテアが行くことになり、彼は先に僕らが乗ってきた車に乗って、オフィスに戻って行った。

 残ったみんなで魔物退治に行くことになり、ズモアルケは、なぜそんな奴を連れていくんだと、ずーっとぶつぶつ言いながら先頭を行き、オーイレールは、その後ろを、さっきからポテトチップをバリバリ食べながら歩いてる。その後ろを仏頂面で僕がついていき、僕の首輪につながる鎖を握って、フュイアルさんはニコニコしてる。

 この辺りは廃墟も多く、魔物が出る前は人通りはあったんだけど、今はしんとしてる。

 誰もいない、車すら走っていない大通りを歩きながら、フュイアルさんが言った。

「オーイレールー。仕事中だぞー。せめてお菓子をしまえー。魔物が出るぞー」
「なんか言ったかー? フュイアル」
「魔物が出るかもしれないから、ちゃんと警戒しておけ」

 フュイアルさんに何を言われても、お菓子を食べるのをやめないオーイレールに、ズモアルケも「お前はいい加減にしろ」と言い出し、それでもまるで聞いてないオーイレールが、彼にお菓子を差し出している。

 楽しそうな三人を睨んで、僕はイライラしていた。

 フュイアルさんめ……何で僕だけ首輪つけられて鎖で繋がれてるんだ! これじゃ、僕だけ連れてこられた飼い犬みたいじゃないか!!

「……フュイアルさん……」
「どうしたの? トラシュ」
「……鎖を外してください」
「だめ」
「なんでですか!!」

 怒鳴りつけて聞くと、フュイアルさんは、僕の首の鎖を強く引いた。お陰でそいつに引き寄せられて、顔を近づけられちゃう。

 オーイレールたちがいるのに、キスできそう。僕、怒ってるのに。鎖を握って魔力を込めるけど、やっぱり鎖は燃えない。

 僕を捕まえたフュイアルさんは、僕を見下ろして、凶悪な顔で笑う。

「…………俺、妬いてるんだよ?」
「妬くって…………僕は何もしてません」
「だって、俺じゃない奴と仲良さそうにしてただろ?」
「知りません。そんなの」
「俺じゃない奴と、車の中で仲良さそうに話していたくせに? あんなに近くで何話してたの?」
「何を言っているのか分かりません。運転席と助手席に座っていただけです。全然近くありません。魔物退治の話してただけです! そっちこそ!! ズモアルケと二人で行っちゃったくせに!」
「俺は魔物退治を済ませたかっただけ。本当は魔法使って、トラシュのこと撒くつもりだったけど……追いかけてくるトラシュがあまりに可愛すぎるから。つい見入っちゃってた」
「か、可愛いって……ふざけないでくださいっ!! 僕は別に…………フュイアルさんなんか……」

 ふざけた顔のフュイアルさんが、首輪をつけられたまま唸る僕の鎖を握って、いつもと同じ余裕な表情で笑ってる。

 人を馬鹿にして!!

 フュイアルさんは、何で僕にこんなことするんだ? 好きだから? 離したくないから? 絶対からかうのが楽しいだけだ!

 しばらく睨み合っていたら、先頭を歩いていたズモアルケが、僕らに振り向いた。

「フュイアル、そろそろ人族より仕事に集中しろ。いつ魔物が出るか分からない。手分けしようか?」
「そうだね……じゃあ、トラシュは俺の後ろにいてね」

 フュイアルさんはそう言うけど、僕は不満。後ろじゃ足りない。僕はもっとそばにいたいのに……

 するとその時、地響きのような音がした。
 そばのビルの上から、小さなコンクリートの破片が落ちてくる。風が吹いてそれがあたりに散って、そのうちの一つが、こつんと僕の頭に当たった。

 見上げたら、ヘドロを集めた巨大な虫のような形の魔物が、ビルの上から僕らに頭を向けていた。それは、羽を広げて僕らに向かって降りてくる。

「トラシュはここにいてね」

 フュイアルさんが、僕の周りを取り囲む結界を張って、僕の鎖を離して、自分は魔物に向き直る。

 なんで……? まだ僕の話が終わってないのに。

 それなのに、フュイアルさんは僕に背を向けている。

「フュイアルさんの馬鹿…………」
「トラシュ?」

 振り向いたフュイアルさんの前で、僕は彼の結界を破壊した。
 魔物に向かって一歩前に出て、溢れた魔力を炎に変えて、魔物を貫く。

 魔物の体に大穴が開いて、残った残骸をフュイアルさんの魔法が焼き尽くした。
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