誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
101 / 106
番外編

101.僕はまだ不満


 結局、昨日魔物が出たビルの検証には、ヴァルアテアが行くことになり、彼は先に僕らが乗ってきた車に乗って、オフィスに戻って行った。

 残ったみんなで魔物退治に行くことになり、ズモアルケは、なぜそんな奴を連れていくんだと、ずーっとぶつぶつ言いながら先頭を行き、オーイレールは、その後ろを、さっきからポテトチップをバリバリ食べながら歩いてる。その後ろを仏頂面で僕がついていき、僕の首輪につながる鎖を握って、フュイアルさんはニコニコしてる。

 この辺りは廃墟も多く、魔物が出る前は人通りはあったんだけど、今はしんとしてる。

 誰もいない、車すら走っていない大通りを歩きながら、フュイアルさんが言った。

「オーイレールー。仕事中だぞー。せめてお菓子をしまえー。魔物が出るぞー」
「なんか言ったかー? フュイアル」
「魔物が出るかもしれないから、ちゃんと警戒しておけ」

 フュイアルさんに何を言われても、お菓子を食べるのをやめないオーイレールに、ズモアルケも「お前はいい加減にしろ」と言い出し、それでもまるで聞いてないオーイレールが、彼にお菓子を差し出している。

 楽しそうな三人を睨んで、僕はイライラしていた。

 フュイアルさんめ……何で僕だけ首輪つけられて鎖で繋がれてるんだ! これじゃ、僕だけ連れてこられた飼い犬みたいじゃないか!!

「……フュイアルさん……」
「どうしたの? トラシュ」
「……鎖を外してください」
「だめ」
「なんでですか!!」

 怒鳴りつけて聞くと、フュイアルさんは、僕の首の鎖を強く引いた。お陰でそいつに引き寄せられて、顔を近づけられちゃう。

 オーイレールたちがいるのに、キスできそう。僕、怒ってるのに。鎖を握って魔力を込めるけど、やっぱり鎖は燃えない。

 僕を捕まえたフュイアルさんは、僕を見下ろして、凶悪な顔で笑う。

「…………俺、妬いてるんだよ?」
「妬くって…………僕は何もしてません」
「だって、俺じゃない奴と仲良さそうにしてただろ?」
「知りません。そんなの」
「俺じゃない奴と、車の中で仲良さそうに話していたくせに? あんなに近くで何話してたの?」
「何を言っているのか分かりません。運転席と助手席に座っていただけです。全然近くありません。魔物退治の話してただけです! そっちこそ!! ズモアルケと二人で行っちゃったくせに!」
「俺は魔物退治を済ませたかっただけ。本当は魔法使って、トラシュのこと撒くつもりだったけど……追いかけてくるトラシュがあまりに可愛すぎるから。つい見入っちゃってた」
「か、可愛いって……ふざけないでくださいっ!! 僕は別に…………フュイアルさんなんか……」

 ふざけた顔のフュイアルさんが、首輪をつけられたまま唸る僕の鎖を握って、いつもと同じ余裕な表情で笑ってる。

 人を馬鹿にして!!

 フュイアルさんは、何で僕にこんなことするんだ? 好きだから? 離したくないから? 絶対からかうのが楽しいだけだ!

 しばらく睨み合っていたら、先頭を歩いていたズモアルケが、僕らに振り向いた。

「フュイアル、そろそろ人族より仕事に集中しろ。いつ魔物が出るか分からない。手分けしようか?」
「そうだね……じゃあ、トラシュは俺の後ろにいてね」

 フュイアルさんはそう言うけど、僕は不満。後ろじゃ足りない。僕はもっとそばにいたいのに……

 するとその時、地響きのような音がした。
 そばのビルの上から、小さなコンクリートの破片が落ちてくる。風が吹いてそれがあたりに散って、そのうちの一つが、こつんと僕の頭に当たった。

 見上げたら、ヘドロを集めた巨大な虫のような形の魔物が、ビルの上から僕らに頭を向けていた。それは、羽を広げて僕らに向かって降りてくる。

「トラシュはここにいてね」

 フュイアルさんが、僕の周りを取り囲む結界を張って、僕の鎖を離して、自分は魔物に向き直る。

 なんで……? まだ僕の話が終わってないのに。

 それなのに、フュイアルさんは僕に背を向けている。

「フュイアルさんの馬鹿…………」
「トラシュ?」

 振り向いたフュイアルさんの前で、僕は彼の結界を破壊した。
 魔物に向かって一歩前に出て、溢れた魔力を炎に変えて、魔物を貫く。

 魔物の体に大穴が開いて、残った残骸をフュイアルさんの魔法が焼き尽くした。

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL要素までとても遠いです。前半日常会多め。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。