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13.ご存知なのですか?
しおりを挟む今は陛下も即位されたばかり。陛下に不利になるような真似は、閣下にとって最も避けたいことであるはず……何か考えがあっておっしゃっているのでしょう。
そういえば。
先ほど皆殺しと言っていたけれど、まさか、一番最初に殺されるのは…………私!?
そのために私をここに連れてきたのですか!?
ここで私を痛めつけ、ボロボロに傷ついた私の姿を皆さんに見せつけ、激しい恐怖を与えて自白を迫るつもり!!??
そうでなければ、とりあえず私から拷問!!??
それなら、私をここに連れてきたのも頷ける。
やはり、とりあえずその女から死刑にしよう……そういうこと!?
でも、だったら私との約束はどうなりますの? 私に反逆の意思がないことが明らかになったら、共に封印の魔法の杖を探すことを許可してくださるのではないの!? そうでないなら、好きなようにされるなんて嫌!
「……か……閣下……さ、先ほど皆殺しだとおっしゃっていたのは……ほ、本気……ですか?」
「勿論だ。すぐに処刑してやってもよかったのだが…………」
「わ、私との約束はどうなるのですっ……!? それは……守っていただけるのですよね……?」
震えながら言うと、閣下は少し悩んだ様子で黙り込む。
なぜ悩む……!? 約束は果たさずに命だけもらうということ!?
怯える私に、閣下は声をかけた。
「リリヴァリルフィラン」
「はっ……はいっ…………!」
「……約束は守る」
「……ほっ…………本当っ……で、ですか…………?」
「……ああ。必ずだ」
「必ず……わ、私が死んだら、約束は果たせませんわよ!??」
「…………分かっている」
分かってる? だったら、約束が果たされるまでは、私を殺さない? それなら少し安心……
いいえ。約束が果たされた後は、結局殺されるのでは!? 約束が果たされ、封印の魔法の杖を探した後は、私を生かしておく必要もなくなる。封印の魔法の杖が見つからなかったとしても、行方不明の竜が見つかれば、結局は彼らは私たちを許してくださらないのでは……
けれど、閣下は約束を果たすとおっしゃった。それなら、私も自分から提示したことは守らなくては。
伯爵家が許可すれば、私はこの方に従属すると、口に出してしまったのだから。
「閣下……フォーフィイ家にはどうご説明されるおつもりです?」
「…………それは…………」
閣下は突然黙り込んでしまう。そして、俯いたり顔をあげたりと、なんだか落ち着かないご様子。どうされたのかしら……
それから少し待っても、閣下は黙ったまま。こうして黙って待っているのも、かなり恐ろしいのですが……
けれど、声もかけることもできずにしばらく待つと、ついに閣下は口を開く。
「……伯爵家には…………容疑をかけられたリリヴァリルフィランを……拘束したと話す。もしも……その罪が明らかになったら処刑すると……」
「……そうですか…………」
そうですわよね…………
それなら、彼らも妙な口出しはしないでしょう。不名誉な疑いをかけられた私のことなんて、さっさと追放するはずだ。
そうなったら、私はこの方の玩弄物……
分かっていたことだけれど、少し落胆してしまう。私、ガッカリしているのかしら……どうかしている。閣下が常識的な方で、よかったはずなのに。
使者の方々と一緒に封印の魔法の杖を探し、行方不明の竜を探し出し、この城の方々の横暴を使者の前で明らかにしてやるんだから!!
……そして。その後はどうしましょう…………私は閣下に殺されるのかしら……
いいえ。そんなこと、考えても仕方がないことですわ。
「閣下…………」
「……」
「…………あ、ありがとうございました……閣下……私、あなたがここへ連れて来てくださらなければ、殺されていました」
「…………」
「か、かと言って、あなたに処刑されるつもりもありません。その時が来たら死ぬまで抗わせていただきますが、今だけはお礼を言わせていただきます……」
「………………」
閣下はまた黙ってしまう。
私とは、あまり話したくないのかしら。彼にしてみれば、私も陛下を傷つけようとした城の連中の一人……雑談なんてごめんだというのは、理解できる……
それなのに、なぜか胸がかすかに痛い。自分のことを考えろ……なんて言われたのは初めて。それで舞い上がっていたのかしら。
自分で自分に笑えてくる。
では、閣下を不快にさせないためにも、最低限のことだけ話すことにしよう。
「閣下……」
「…………なんだ?」
「……封印の魔法の杖の件で、国王陛下はここを疑っていらっしゃるのですよね……では……それがどうやって用意されたのか、お考えになりましたか?」
「……行方不明になった竜のことか?」
「……? で、では、閣下もご存じなのですか!?」
まさか、ご存じなの? 王都の近くの森に住んでいた竜が囚われているかもしれないことを。
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