【完結】極悪と罵られた令嬢は、今日も気高く嫌われ続けることに決めました。憎まれるのは歓迎しますが、溺愛されても気づけません

迷路を跳ぶ狐

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87.突然こんな風に

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 私を取り囲む方々の一人が、私にそっと声をかけてくる。

「リリヴァリルフィラン様……ご無事ですか?」

 振り向けば、そこにいたのは、初めてお会いする男性。美しい金髪に、綺麗な青い瞳。そして強い魔力を感じる魔法のローブ。使い魔と戦ったばかりの私を心配しているようだった。

「お怪我がないようでよかったです……リリヴァリルフィラン様……」
「あ、ありがとうございます。あの……」
「それにしても! 噂には聞いていましたが、なんて素晴らしいのでしょう!」
「……? なんのことでしょう?」
「あの程度の魔力で魔法を打ち砕くとは!」
「……あ、あの程度…………」
「ああ、失礼しました。あの程度、は無礼でしたね……そうではなく、僕は、あなたの力に感服しているのです!」
「は、はあ……」
「長い距離を馬車を飛ばしてきた甲斐がありました……ああ、失礼しました! 自己紹介がまだでしたね。僕は、ディーフズ・バレヌと申します」
「……バレヌ……魔法使い部隊を守護の魔法で守ったという……バレヌ家の方……でございますね?」
「はい。ご存じだったとは光栄です」
「……もちろん、存じ上げておりますわ。デファス・バレヌ子爵様の考案なさった、部隊を守護する魔法使いの配置のおかげで、荒野の魔物退治は大勝利を収めたとか。国王陛下が長く頭を痛めていらっしゃった荒野の制圧に多大な貢献をなさったバレヌ家のお方にお会いできるなんて、光栄でございます」
「そんなことまでご存じだなんて……嬉しいなあ……」
「……」

 そんなことまで、とはおっしゃいますが、それは王国を守る魔法使いなら、だいたい誰でも知ってること。

 どうしましょう……名乗られたのだから、私も名乗った方がいいのかしら?

「申し遅れました。リリヴァリルフィランと申します」
「もちろん知っています。伯爵家を追い出された不遇の魔法使い、リリヴァリルフィラン様。魔力がないにも関わらず、強力な力を操り魔物を打ち滅ぼすと聞きました!」
「……ディーフズ様……私にそんな力はありませんわ」
「いいえ。先ほど見せていただきました! あなたがその力で魔法を打ち砕くところをっ!!」
「……え………………」

 そういえば、さきほどデシリー様の使い魔を打ち倒した。まさか、デシリー様、このためにあんなことをしたの?

「え、えっと……ディーフズ様……先ほどのあれは、デシリー様が手加減をなさっていたから、できたことですわ……さ、先ほど申し上げたではありませんか……あれはデシリー様の悪ふざけです」
「いつもあのような使い魔を、悪ふざけ、などと軽くあしらっていらっしゃるなんて……驚きました」
「……いえ……そうではなく…………」
「どうか一度、城に来ていただけませんか?」
「へ!?? し、城!?? そ、それは、デファス子爵様の領地に……ということでしょうか?」
「はい!! もちろんです!! あなたを、領地を守る魔法使いとしてむかえたいのです! リリヴァリルフィラン様!!!!」
「え、えっ? ……き、急にそんなことをおっしゃられても……」

 なぜ急にそんなことを……

 確かに、ジレスフォーズ様やクリエレスア様から、貴族たちに興味を持たれているとは聞いていた。けれど、突然こんな風に勧誘されるなんて。
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