僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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20.なんで僕の分はないの?

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 砦の玄関の前で僕らを出迎えてくれたオフィセイール様は、魔法で空から降りて行く僕らに手を振って、笑顔で迎えてくれた。

「無事だったか……フィルロファル! レオトウェルラレット!」

 駆け寄ってきてくれる彼に、僕も「お待たせしました!」と言って、挨拶をする。

「た、ただいま戻りました……」
「無事でよかった。こっちも、結界の強化が終わったところだ。許可のない奴は砦の中には決して入れない………………なんだ? その小さな竜は……」

 言って、オフィセイール様は、僕の肩に乗って、大きなあくびをしている竜を指差す。だけど竜は、眠そうにそっぽを向いただけ。挨拶をする気はないらしい。

「え、えっと……この竜は…………山の中で見かけた竜で……」

 僕が、あの陣営で会ったことを話すと、オフィセイール様はやっぱり苦い顔。

「何を連れてくるかと思えば……」

 そう言って、彼は頭を抱えていた。部外者を入れないようにと警戒してくれていることを知りながら、いきなり竜なんて連れて帰ったんだから、当然だ。

「賊からの攻撃に備えようと警戒している最中、なぜ見知らぬ竜を連れてきているんだ……しかも、襲ってきた竜だろう?」

 たずねるオフィセイール様にレオトウェルラレット様が「仕方がなかったんだ!」と答えている。

「だって、連れてこなかったら暴れ出しそうな勢いだったんだぞ!! お前はあの場にいなかったから、そんなことが言えるんだ!!」
「それは分かるが、今この砦は厳戒態勢なんだ! 道具の横流しの件で、腹を立てた連中が襲ってくるかもしれないんだぞ!! 俺は、フィルロファルの護衛を任されているんだ!! 彼の身に危険が及ぶようなことは、看過できない!!」
「だったらお前がそう言えよっっ!! そこにいるのが、その腹立ててる奴らのうちの一匹だ!!」

 怒鳴ってレオトウェルラレット様が、さっきからずっと僕の頭によじ登っている竜を指差す。

 竜は彼に預けておいた、切り刻まれたきのことそれを入れたボロボロになったカゴを、魔法で持ち上げたりして遊んでいる。たまに魔法の炎で焼こうとするから、僕は慌てて取り上げた。

「焼いちゃダメです! 返してください!!」

 多少強引に取り上げると、竜は僕に飛びついてくる。

「なんでー? きのこなら、僕がまた集めてあげるよ!」
「結構です! それにこれは宰相様の分のキノコなんです! 勝手に焼かないでください!」
「宰相の分はあるのに、なんで僕の分はないのー?」
「とにかくダメです! 魔法の道具が目当てで来たんじゃないんですか!?」

 袋を竜から隠しながら、僕はオフィセイール様に振り向いた。

「あ、あのっ……! オフィセイール様っっ……! 僕、あのっ……すみません!! この竜、魔力を制御できる道具を探しているみたいなんです! 僕がここで修復したものがあるので、それを渡そうかと思って……少しの間だけ、竜が砦に入ることを認めていただけないでしょうか!」
「魔法の道具を……? …………では、その竜は、俺たちが警戒していた、魔法の道具を狙って砦に入ってくるであろう連中のうちの一人だと言うことか?」
「そ、それは…………す、少なくとも、彼は賊ではありません! 横領にも関わっていません! あ、あの暴走の日に、僕は彼に会っているんです! 暴走に巻き込まれたみたいで……彼が受け取るはずのものがここに送られて、彼はそれを手にすることができなかったんです!! 彼が魔法の道具を手にできなかったのは、こちらの管理の甘さも原因だったので……どうか……あの……魔法の道具を試してみるだけで、彼のことは、僕が見張りますから……」

 そう言ってみるけど、彼の顔を見ていたら、だんだん自信がなくなって、声が小さくなって行く。

 僕だって、今ここに部外者を入れることの危険性が理解できないわけじゃない。特にオフィセイール様は、僕の護衛として来てくれているんだ。危険だと知りながら竜を砦の中に入れることに、そう簡単に賛成できるはずがない。

 しばらく考えて、「確かに、王城での管理にも非があったな……」と呟いて、彼は、ため息をついた。

「ここで追い返しても、竜は納得しないだろう。それどころか、竜族との余計な争いの原因になる可能性もある。その竜は、魔力の暴走を抑える魔法の道具を探しているのだろう? 魔法の暴走は、国にとっても、優先して取り組まなければならない問題だ。強力な力を持つ竜の魔力なら、尚更だな」
「え……じゃあ……」
「お前の言うことももっともだ……少しの間だけだぞ……」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!!」
「ただし、ここにある物は、たとえ壊れていようが修理されていようが、王家の管理下にあるものばかりだ。お前が竜の力を制御するために使う分には問題ないが、竜が使うとなれば、話は別だ。竜が使うなら、王城に連絡して、許可が下りることが条件になる。それに、竜がしばらくここに滞在するなら、そのための手続きも必要だ」
「は、はい!! 僕、すぐに手続きのための書簡を用意します!」
「魔法の道具からも目を離さないようにしてくれ。万が一暴走して、砦に影響が出たら困る」
「はい!!」
「俺たちは、その竜から目を離さないようにする。とはいえ、お前から離れそうにないから、一緒に監視することになるが、構わないか?」
「もちろんです!! 承知しました!! あ、ありがとうございます!!」

 答えると、竜は嬉しそうだ。

「やったあ!! これからよろしくね!! みんなでおやつにしよう!!」

 この竜……今きのこたくさん食べたばっかりなのに……

 それなのに、竜は僕の肩で「おやつだー!」と楽しそうにしていた。
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