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22*ロステウィス視点*撤回に向けて
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調査は滞りなく行われていたが、デペンフィトから聞き出したことだけでは足りない。関与した者たちを全て拘束するには、まだしばらくかかりそうだ。
そして、調査しなければならないところも、まだ残っている。
「あとは、あの幽閉の砦での調査ですね」
言って、ヴィクトウェトルが俺に振り向く。
彼の言うとおり、フィルロファルの名前を使って王都から送られた物が保管されていた砦の調査が残っている。
しかし、それにはデペンフィトも同行することになっている。デペンフィトをフィルロファルには会わせたくないし、これ以上、彼を傷つけるような真似をしたくないのに。
俺が何も答えないでいると、ヴィクトウェトルが、肩をすくめて言う。
「そんなにデペンフィトを砦に連れて行くのが嫌ですか?」
「あそこには、フィルロファルがいる……彼を傷つけたくない」
「気持ちは分かりますが、まだ回収できていないものも多くあります。それにこれは、彼が関与していないことの証明にもなります。そうすれば、彼の幽閉を撤回させることができるかもしれません」
「……分かってる」
王子殿下の部隊で結界の魔法の道具が予定通り機能しなかった件について、彼は責任を取って幽閉されることになった。
しかし、実際には結界の魔法の道具は、部隊の出発前に十分に調整、確認されていたはずだし、結界の道具は機能していたはずだ。
それを証明するため、殿下の部隊を説得し、当時の状況に関する証言はいくつか手に入った。
しかし、それだけでは不十分だ。
フィルロファルが出発前に提出したはずの、道具が正確に動くことを確認した書類が見つからない。殿下の部隊の男から、それを受け取ったことは確認できたのに、保管されているはずの書類がない。彼の幽閉が、横領のために利用されたことが明らかになっては困る連中が処分したようだ。
まだ部隊で結界が正常に機能していたことを信じない貴族も多い。彼らを全て説き伏せ、フィルロファルに非がないことを明確に証明し、あの砦で行われた魔法の道具の横領の全貌が明らかになり、関与した者すべての拘束がなければ、幽閉決定の撤回は難しいだろう。
その分、なぜあの時、彼の幽閉を止められなかったのかと後悔する。
彼の魔法の道具を整備する腕の良さは聞いていた。公爵家として調査をして、魔法の道具の不備などなかったと結論づけ、正式に発表もした。
しかし、納得しない貴族は多かった。
そもそも、いずれ婚約すると言われていた俺の調査だ。手心を加えたんじゃないか、婚約のために王家に背くような真似を公爵家がするのか、そんな怒号と共に、調査にも信憑性がないと言われた。
そのうちに、公爵家は信用できない、他の調査隊をと、王城の会議でも決まり、俺の一族の関与すら疑われた。こうなっては、もう動くことができなかった。
しかし、貴族たちが行った調査の結果は、フィルロファルを手酷くなじるようなものだった。信用できるはずがないのに、誰もがそちらを信じて疑わない態度を取る。
今思えば、あの砦と彼を、都合のいい横領の隠れ蓑にするためだったのかも知れない。
あの時、貴族たちを説き伏せる力が俺にあれば……彼はあんな屈辱を受けることはなかった。
有力貴族たちが、反逆を疑われた彼を死罪に追い込もうとする中、彼の幽閉が決まった。
あの時、俺が抵抗していれば……
方法はあったはずだ。何しろ、そんなふうに疑われたフィルロファルに俺が会いに行ったのは、「君との婚約は見送ることになった」……そう告げたあの時だけ。もっと彼のそばにいて、彼の話を聞いていればよかったんだ。
結局、彼を追い込む貴族たちを止めることすらできなかった。
今回、デペンフィトの悪事が明るみに出たのも、彼が部隊を助けてくれたことがきっかけだ。
もしもあれがなかったら、俺は今でも動けなかった。
婚約するはずの彼が幽閉に追い込まれるかもという時に、助けることもできず、それどころか、彼がもっとも辛い思いをしている時に、寄り添うどころか、俺は彼をもっとも深く傷つけた。
それなのに、その時の真実を明らかにすることにも、彼の力を借りて……
「くそっ……!」
情けないにも程がある……
俺は一体、何をしているんだ……
自分に対する苛立ちばかりが増す。
苛立ちに飲まれている場合じゃない。
そんなことをしていても、彼が追い込まれた経緯を明らかにすることはできないし、彼の枷も外せない。
「幽閉の撤回に反対しているのは、どこの貴族だ?」
俺がたずねると、ヴィクトウェトルは静かに口を開いた。
「……多くは、彼に責任を押し付けた一族です。それと、横領に関わった貴族ですね……」
そして、調査しなければならないところも、まだ残っている。
「あとは、あの幽閉の砦での調査ですね」
言って、ヴィクトウェトルが俺に振り向く。
彼の言うとおり、フィルロファルの名前を使って王都から送られた物が保管されていた砦の調査が残っている。
しかし、それにはデペンフィトも同行することになっている。デペンフィトをフィルロファルには会わせたくないし、これ以上、彼を傷つけるような真似をしたくないのに。
俺が何も答えないでいると、ヴィクトウェトルが、肩をすくめて言う。
「そんなにデペンフィトを砦に連れて行くのが嫌ですか?」
「あそこには、フィルロファルがいる……彼を傷つけたくない」
「気持ちは分かりますが、まだ回収できていないものも多くあります。それにこれは、彼が関与していないことの証明にもなります。そうすれば、彼の幽閉を撤回させることができるかもしれません」
「……分かってる」
王子殿下の部隊で結界の魔法の道具が予定通り機能しなかった件について、彼は責任を取って幽閉されることになった。
しかし、実際には結界の魔法の道具は、部隊の出発前に十分に調整、確認されていたはずだし、結界の道具は機能していたはずだ。
それを証明するため、殿下の部隊を説得し、当時の状況に関する証言はいくつか手に入った。
しかし、それだけでは不十分だ。
フィルロファルが出発前に提出したはずの、道具が正確に動くことを確認した書類が見つからない。殿下の部隊の男から、それを受け取ったことは確認できたのに、保管されているはずの書類がない。彼の幽閉が、横領のために利用されたことが明らかになっては困る連中が処分したようだ。
まだ部隊で結界が正常に機能していたことを信じない貴族も多い。彼らを全て説き伏せ、フィルロファルに非がないことを明確に証明し、あの砦で行われた魔法の道具の横領の全貌が明らかになり、関与した者すべての拘束がなければ、幽閉決定の撤回は難しいだろう。
その分、なぜあの時、彼の幽閉を止められなかったのかと後悔する。
彼の魔法の道具を整備する腕の良さは聞いていた。公爵家として調査をして、魔法の道具の不備などなかったと結論づけ、正式に発表もした。
しかし、納得しない貴族は多かった。
そもそも、いずれ婚約すると言われていた俺の調査だ。手心を加えたんじゃないか、婚約のために王家に背くような真似を公爵家がするのか、そんな怒号と共に、調査にも信憑性がないと言われた。
そのうちに、公爵家は信用できない、他の調査隊をと、王城の会議でも決まり、俺の一族の関与すら疑われた。こうなっては、もう動くことができなかった。
しかし、貴族たちが行った調査の結果は、フィルロファルを手酷くなじるようなものだった。信用できるはずがないのに、誰もがそちらを信じて疑わない態度を取る。
今思えば、あの砦と彼を、都合のいい横領の隠れ蓑にするためだったのかも知れない。
あの時、貴族たちを説き伏せる力が俺にあれば……彼はあんな屈辱を受けることはなかった。
有力貴族たちが、反逆を疑われた彼を死罪に追い込もうとする中、彼の幽閉が決まった。
あの時、俺が抵抗していれば……
方法はあったはずだ。何しろ、そんなふうに疑われたフィルロファルに俺が会いに行ったのは、「君との婚約は見送ることになった」……そう告げたあの時だけ。もっと彼のそばにいて、彼の話を聞いていればよかったんだ。
結局、彼を追い込む貴族たちを止めることすらできなかった。
今回、デペンフィトの悪事が明るみに出たのも、彼が部隊を助けてくれたことがきっかけだ。
もしもあれがなかったら、俺は今でも動けなかった。
婚約するはずの彼が幽閉に追い込まれるかもという時に、助けることもできず、それどころか、彼がもっとも辛い思いをしている時に、寄り添うどころか、俺は彼をもっとも深く傷つけた。
それなのに、その時の真実を明らかにすることにも、彼の力を借りて……
「くそっ……!」
情けないにも程がある……
俺は一体、何をしているんだ……
自分に対する苛立ちばかりが増す。
苛立ちに飲まれている場合じゃない。
そんなことをしていても、彼が追い込まれた経緯を明らかにすることはできないし、彼の枷も外せない。
「幽閉の撤回に反対しているのは、どこの貴族だ?」
俺がたずねると、ヴィクトウェトルは静かに口を開いた。
「……多くは、彼に責任を押し付けた一族です。それと、横領に関わった貴族ですね……」
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