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23*ロステウィス視点*手遅れです
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ヴィクトウェトルは、いくつかの書類を魔法で取り出して言う。
「まずは、幽閉が決まる原因となった、魔法の道具の不備ですが、それが実際はなかったと言う話になれば、それを指摘し彼の責任だと叫んだ貴族たちは、今度は自分たちが責任を問われることになります。実際にはない不備の責任を取ることになるのが怖くて、彼の責任だと叫んだ貴族もいたはずです。あとは、今回の魔法の道具の横取りに関わったであろう貴族たちですね……幽閉が終わることで、さらなる調査が進むことを恐れているのでしょう」
「…………」
「それに、ルイルット家もです」
「ルイルット家? フィルロファルの一族が、幽閉の撤回に反対しているのか?」
「彼ら自身、幽閉されたフィルロファルの処遇に口を出さないことを条件に、金を受け取っているようです。彼らがその決定に関与したという情報もあります。もしもそうであれば、そんなことが明るみに出てはたまらないでしょうし、金まで受け取っているとなれば、フィルロファルの幽閉の撤回に賛成できるはずがありません」
「…………」
全員が保身に走っている……そのために、彼はあの冷たい砦に追いやられているのに……
「……枷は……外せそうか?」
「それはなんとか……そもそも彼の拘束は、通常の幽閉では行われないものです。ですが、彼の幽閉に疑いを持たれることを望まない貴族たちが、枷を外すことに反対しているようです。それに……彼の一族からは、外さないようにと迫る書簡がきています」
「……またルイルット家か……」
「はい。一族の名を汚した男は、幽閉の砦から一生解放されることがないようにしてほしいと……」
「冤罪だと言って書簡を送りかえせ。これ以上口を出すなら、一族を拘束して城に連行する」
「……無茶を言わないでください……」
ヴィクトウェトルは少しの間黙って、口を開く。
「……もう少し、冷静になってください」
「なっている……少し……苛立っただけだ……」
「………………では、新しい報告がありますので、どうか、落ち着いて聞いてください」
「どうした? もったいぶって……」
「隣国から、竜が一人、この国の外れにある竜の魔法使いの屋敷を訪れたそうです」
「…………何?」
隣国の竜……随分頭が痛くなるような話が出て来た。
竜族の魔力は凄まじく、王国でも対応を誤れば、国を滅ぼしかねないようなものだからだ。
ヴィクトウェトルは、慎重な様子で言う。
「狙いは、魔力の暴走を抑える魔法の道具だったようです。竜族は強力な力を持つ者ほど、魔力の暴走に悩まされているようですからね。先日、隣国から正式な使者として一人、最強の魔力を持つと言われている竜が、国の外れにある竜族の屋敷を訪れたそうです」
「……国の外れの屋敷か……」
それなら知っている。
国の外れにある森には、巨大な屋敷があって、そこには、魔法使いの竜が住んでいる。数百年以上生きる強力な魔力を持つ竜で、爵位は与えられているが、貴族社会には興味がないらしい。随分気むずかしやな彼には、王家も手を焼いている。周辺の国から乱暴者の竜たちを集めて魔法の研究をして山を吹っ飛ばしそうになった時は、俺もその対処に追われた。王都でもしばらく話題になったくらいだ。
「…………あの魔法使いの竜の屋敷を、隣国の竜が訪れたってことは……もしかして……また暴れに来た?」
「いいえ」
「…………魔法の道具を借りに来ただけ?」
「はい」
「……それくらいなら構わないだろ」
「重要なのはこれからです」
「…………今日はやけに勿体ぶるな……」
「あなたに落ち着いてほしいからです」
「言いたいことがあるなら早く言ってくれ」
「竜の魔法使いが、隣国の竜に渡すはずだったものは、王都からフィルロファルの砦に送られた物の中に混じっていたようです」
「………………は?」
「つまり、こちらの横領が原因で、隣国からわざわざやって来た竜は、期待していた道具を受け取れなかったことになります」
「……………………」
「今まで報告がなかったのも、横領の件がばれることを恐れた貴族が、魔法使いと竜からの書簡を握り潰していたからです。道具を受け取るはずだった竜は、隣国の王家にも頼りにされるような竜ですが、たびたびその膨大な魔力を暴走させているようで、現在は魔力を抑える魔法をかけられているとか。そんなことまでして屋敷の魔法使いを訪ねたのに、目当ての道具を受け取れずに、ずいぶん腹を立てているようです」
「………………すぐに俺から屋敷の魔法使いと竜と隣国に、謝罪の書簡を送る。急いで用意して」
「では、ぜひ、落ち着いて聞いてください」
「なんだ?! 話が長いぞ!」
「もう手遅れです」
キッパリと言われて、血の気が引く。
わざわざ魔力を抑えてこの国に入って来るような、山を一撃で吹っ飛ばすような強力な竜に対する謝罪が…………
「………………手遅れ?」
「はい」
答えるヴィクトウェトルは、いつも通りひどく難しい顔をしていた。
「今回のことには、屋敷の魔法使いもひどく腹を立てていて、もう王城の貴族どもは信用できないと言ってきています。さらには、道具を受け取るはずだった竜に、ありそうな場所を教えたと話しています」
「……………………は?」
「もうこちらは無視して、自分たちで奪われたものを探すってことでしょうね」
「道具を受け取れず腹を立てた竜に、幽閉の砦のことを教えたのか!?」
「教えたみたいですね。その魔法使いの竜から書簡が届いています。それによると……横領なんていい度胸してるな! ダチの竜には、道具が横取りされたから調べて事実ならそこにいた連中全員殲滅して来いって言ったからな! 誰に喧嘩売ってんだ! クソ貴族どもがっっ!! 思い知れっっ! 土下座して泣いて死ね!! バーカ!!!! ……だそうです」
彼が見せて来た書簡には、彼が言ったことがそのまま書いてあり、さらには王国の貴族に対する罵詈雑言が続いている。千年近く生きている竜の魔法使いが王城に送った書簡には思えないが、あの魔法使いは、いつもだいたいこうだ。
あの砦にいるのは、横領に巻き込まれて、もっとも苦しんでいるフィルロファルなのに。
「………………それなら、その竜は今、あの砦にいると言うことか? …………潰す? 殲滅? あそこにいるフィルロファルには非がないんだぞっ……!」
「腹を立てた竜に、そのような理屈は通じないでしょう……それほど強力な竜が本気で暴れたら、王国の部隊でも抑え込めるかどうか……」
「砦に向かう!! 部隊を編成しろ!」
「待ってください。公爵家として、宰相として弁えてもらわないと困ります」
「そうした結果が今だろっっ!! すぐに砦へ行く!」
「宰相であるあなたを、今砦に行かせるわけにはいきません。あなたに何かあったら、今後誰が指揮を取るのです?」
「ふざけるなっっ!! 今すぐに出発する!」
怒鳴り出し、部屋から出て行こうとする俺に、部隊の魔法使いまでもが飛びついてくる。
「待ってください!! ロステウィス様っ……! お立場を考えてください!」
「落ち着いてください!! 今すぐに砦に向かうなんて、無茶です!」
「まずは、幽閉が決まる原因となった、魔法の道具の不備ですが、それが実際はなかったと言う話になれば、それを指摘し彼の責任だと叫んだ貴族たちは、今度は自分たちが責任を問われることになります。実際にはない不備の責任を取ることになるのが怖くて、彼の責任だと叫んだ貴族もいたはずです。あとは、今回の魔法の道具の横取りに関わったであろう貴族たちですね……幽閉が終わることで、さらなる調査が進むことを恐れているのでしょう」
「…………」
「それに、ルイルット家もです」
「ルイルット家? フィルロファルの一族が、幽閉の撤回に反対しているのか?」
「彼ら自身、幽閉されたフィルロファルの処遇に口を出さないことを条件に、金を受け取っているようです。彼らがその決定に関与したという情報もあります。もしもそうであれば、そんなことが明るみに出てはたまらないでしょうし、金まで受け取っているとなれば、フィルロファルの幽閉の撤回に賛成できるはずがありません」
「…………」
全員が保身に走っている……そのために、彼はあの冷たい砦に追いやられているのに……
「……枷は……外せそうか?」
「それはなんとか……そもそも彼の拘束は、通常の幽閉では行われないものです。ですが、彼の幽閉に疑いを持たれることを望まない貴族たちが、枷を外すことに反対しているようです。それに……彼の一族からは、外さないようにと迫る書簡がきています」
「……またルイルット家か……」
「はい。一族の名を汚した男は、幽閉の砦から一生解放されることがないようにしてほしいと……」
「冤罪だと言って書簡を送りかえせ。これ以上口を出すなら、一族を拘束して城に連行する」
「……無茶を言わないでください……」
ヴィクトウェトルは少しの間黙って、口を開く。
「……もう少し、冷静になってください」
「なっている……少し……苛立っただけだ……」
「………………では、新しい報告がありますので、どうか、落ち着いて聞いてください」
「どうした? もったいぶって……」
「隣国から、竜が一人、この国の外れにある竜の魔法使いの屋敷を訪れたそうです」
「…………何?」
隣国の竜……随分頭が痛くなるような話が出て来た。
竜族の魔力は凄まじく、王国でも対応を誤れば、国を滅ぼしかねないようなものだからだ。
ヴィクトウェトルは、慎重な様子で言う。
「狙いは、魔力の暴走を抑える魔法の道具だったようです。竜族は強力な力を持つ者ほど、魔力の暴走に悩まされているようですからね。先日、隣国から正式な使者として一人、最強の魔力を持つと言われている竜が、国の外れにある竜族の屋敷を訪れたそうです」
「……国の外れの屋敷か……」
それなら知っている。
国の外れにある森には、巨大な屋敷があって、そこには、魔法使いの竜が住んでいる。数百年以上生きる強力な魔力を持つ竜で、爵位は与えられているが、貴族社会には興味がないらしい。随分気むずかしやな彼には、王家も手を焼いている。周辺の国から乱暴者の竜たちを集めて魔法の研究をして山を吹っ飛ばしそうになった時は、俺もその対処に追われた。王都でもしばらく話題になったくらいだ。
「…………あの魔法使いの竜の屋敷を、隣国の竜が訪れたってことは……もしかして……また暴れに来た?」
「いいえ」
「…………魔法の道具を借りに来ただけ?」
「はい」
「……それくらいなら構わないだろ」
「重要なのはこれからです」
「…………今日はやけに勿体ぶるな……」
「あなたに落ち着いてほしいからです」
「言いたいことがあるなら早く言ってくれ」
「竜の魔法使いが、隣国の竜に渡すはずだったものは、王都からフィルロファルの砦に送られた物の中に混じっていたようです」
「………………は?」
「つまり、こちらの横領が原因で、隣国からわざわざやって来た竜は、期待していた道具を受け取れなかったことになります」
「……………………」
「今まで報告がなかったのも、横領の件がばれることを恐れた貴族が、魔法使いと竜からの書簡を握り潰していたからです。道具を受け取るはずだった竜は、隣国の王家にも頼りにされるような竜ですが、たびたびその膨大な魔力を暴走させているようで、現在は魔力を抑える魔法をかけられているとか。そんなことまでして屋敷の魔法使いを訪ねたのに、目当ての道具を受け取れずに、ずいぶん腹を立てているようです」
「………………すぐに俺から屋敷の魔法使いと竜と隣国に、謝罪の書簡を送る。急いで用意して」
「では、ぜひ、落ち着いて聞いてください」
「なんだ?! 話が長いぞ!」
「もう手遅れです」
キッパリと言われて、血の気が引く。
わざわざ魔力を抑えてこの国に入って来るような、山を一撃で吹っ飛ばすような強力な竜に対する謝罪が…………
「………………手遅れ?」
「はい」
答えるヴィクトウェトルは、いつも通りひどく難しい顔をしていた。
「今回のことには、屋敷の魔法使いもひどく腹を立てていて、もう王城の貴族どもは信用できないと言ってきています。さらには、道具を受け取るはずだった竜に、ありそうな場所を教えたと話しています」
「……………………は?」
「もうこちらは無視して、自分たちで奪われたものを探すってことでしょうね」
「道具を受け取れず腹を立てた竜に、幽閉の砦のことを教えたのか!?」
「教えたみたいですね。その魔法使いの竜から書簡が届いています。それによると……横領なんていい度胸してるな! ダチの竜には、道具が横取りされたから調べて事実ならそこにいた連中全員殲滅して来いって言ったからな! 誰に喧嘩売ってんだ! クソ貴族どもがっっ!! 思い知れっっ! 土下座して泣いて死ね!! バーカ!!!! ……だそうです」
彼が見せて来た書簡には、彼が言ったことがそのまま書いてあり、さらには王国の貴族に対する罵詈雑言が続いている。千年近く生きている竜の魔法使いが王城に送った書簡には思えないが、あの魔法使いは、いつもだいたいこうだ。
あの砦にいるのは、横領に巻き込まれて、もっとも苦しんでいるフィルロファルなのに。
「………………それなら、その竜は今、あの砦にいると言うことか? …………潰す? 殲滅? あそこにいるフィルロファルには非がないんだぞっ……!」
「腹を立てた竜に、そのような理屈は通じないでしょう……それほど強力な竜が本気で暴れたら、王国の部隊でも抑え込めるかどうか……」
「砦に向かう!! 部隊を編成しろ!」
「待ってください。公爵家として、宰相として弁えてもらわないと困ります」
「そうした結果が今だろっっ!! すぐに砦へ行く!」
「宰相であるあなたを、今砦に行かせるわけにはいきません。あなたに何かあったら、今後誰が指揮を取るのです?」
「ふざけるなっっ!! 今すぐに出発する!」
怒鳴り出し、部屋から出て行こうとする俺に、部隊の魔法使いまでもが飛びついてくる。
「待ってください!! ロステウィス様っ……! お立場を考えてください!」
「落ち着いてください!! 今すぐに砦に向かうなんて、無茶です!」
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