僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
23 / 106

23*ロステウィス視点*手遅れです

しおりを挟む
 ヴィクトウェトルは、いくつかの書類を魔法で取り出して言う。

「まずは、幽閉が決まる原因となった、魔法の道具の不備ですが、それが実際はなかったと言う話になれば、それを指摘し彼の責任だと叫んだ貴族たちは、今度は自分たちが責任を問われることになります。実際にはない不備の責任を取ることになるのが怖くて、彼の責任だと叫んだ貴族もいたはずです。あとは、今回の魔法の道具の横取りに関わったであろう貴族たちですね……幽閉が終わることで、さらなる調査が進むことを恐れているのでしょう」
「…………」
「それに、ルイルット家もです」
「ルイルット家? フィルロファルの一族が、幽閉の撤回に反対しているのか?」
「彼ら自身、幽閉されたフィルロファルの処遇に口を出さないことを条件に、金を受け取っているようです。彼らがその決定に関与したという情報もあります。もしもそうであれば、そんなことが明るみに出てはたまらないでしょうし、金まで受け取っているとなれば、フィルロファルの幽閉の撤回に賛成できるはずがありません」
「…………」

 全員が保身に走っている……そのために、彼はあの冷たい砦に追いやられているのに……

「……枷は……外せそうか?」
「それはなんとか……そもそも彼の拘束は、通常の幽閉では行われないものです。ですが、彼の幽閉に疑いを持たれることを望まない貴族たちが、枷を外すことに反対しているようです。それに……彼の一族からは、外さないようにと迫る書簡がきています」
「……またルイルット家か……」
「はい。一族の名を汚した男は、幽閉の砦から一生解放されることがないようにしてほしいと……」
「冤罪だと言って書簡を送りかえせ。これ以上口を出すなら、一族を拘束して城に連行する」
「……無茶を言わないでください……」

 ヴィクトウェトルは少しの間黙って、口を開く。

「……もう少し、冷静になってください」
「なっている……少し……苛立っただけだ……」
「………………では、新しい報告がありますので、どうか、落ち着いて聞いてください」
「どうした? もったいぶって……」
「隣国から、竜が一人、この国の外れにある竜の魔法使いの屋敷を訪れたそうです」
「…………何?」

 隣国の竜……随分頭が痛くなるような話が出て来た。

 竜族の魔力は凄まじく、王国でも対応を誤れば、国を滅ぼしかねないようなものだからだ。

 ヴィクトウェトルは、慎重な様子で言う。

「狙いは、魔力の暴走を抑える魔法の道具だったようです。竜族は強力な力を持つ者ほど、魔力の暴走に悩まされているようですからね。先日、隣国から正式な使者として一人、最強の魔力を持つと言われている竜が、国の外れにある竜族の屋敷を訪れたそうです」
「……国の外れの屋敷か……」

 それなら知っている。

 国の外れにある森には、巨大な屋敷があって、そこには、魔法使いの竜が住んでいる。数百年以上生きる強力な魔力を持つ竜で、爵位は与えられているが、貴族社会には興味がないらしい。随分気むずかしやな彼には、王家も手を焼いている。周辺の国から乱暴者の竜たちを集めて魔法の研究をして山を吹っ飛ばしそうになった時は、俺もその対処に追われた。王都でもしばらく話題になったくらいだ。

「…………あの魔法使いの竜の屋敷を、隣国の竜が訪れたってことは……もしかして……また暴れに来た?」
「いいえ」
「…………魔法の道具を借りに来ただけ?」
「はい」
「……それくらいなら構わないだろ」
「重要なのはこれからです」
「…………今日はやけに勿体ぶるな……」
「あなたに落ち着いてほしいからです」
「言いたいことがあるなら早く言ってくれ」
「竜の魔法使いが、隣国の竜に渡すはずだったものは、王都からフィルロファルの砦に送られた物の中に混じっていたようです」
「………………は?」
「つまり、こちらの横領が原因で、隣国からわざわざやって来た竜は、期待していた道具を受け取れなかったことになります」
「……………………」
「今まで報告がなかったのも、横領の件がばれることを恐れた貴族が、魔法使いと竜からの書簡を握り潰していたからです。道具を受け取るはずだった竜は、隣国の王家にも頼りにされるような竜ですが、たびたびその膨大な魔力を暴走させているようで、現在は魔力を抑える魔法をかけられているとか。そんなことまでして屋敷の魔法使いを訪ねたのに、目当ての道具を受け取れずに、ずいぶん腹を立てているようです」
「………………すぐに俺から屋敷の魔法使いと竜と隣国に、謝罪の書簡を送る。急いで用意して」
「では、ぜひ、落ち着いて聞いてください」
「なんだ?! 話が長いぞ!」
「もう手遅れです」

 キッパリと言われて、血の気が引く。

 わざわざ魔力を抑えてこの国に入って来るような、山を一撃で吹っ飛ばすような強力な竜に対する謝罪が…………

「………………手遅れ?」
「はい」

 答えるヴィクトウェトルは、いつも通りひどく難しい顔をしていた。

「今回のことには、屋敷の魔法使いもひどく腹を立てていて、もう王城の貴族どもは信用できないと言ってきています。さらには、道具を受け取るはずだった竜に、ありそうな場所を教えたと話しています」
「……………………は?」
「もうこちらは無視して、自分たちで奪われたものを探すってことでしょうね」
「道具を受け取れず腹を立てた竜に、幽閉の砦のことを教えたのか!?」
「教えたみたいですね。その魔法使いの竜から書簡が届いています。それによると……横領なんていい度胸してるな! ダチの竜には、道具が横取りされたから調べて事実ならそこにいた連中全員殲滅して来いって言ったからな! 誰に喧嘩売ってんだ! クソ貴族どもがっっ!! 思い知れっっ! 土下座して泣いて死ね!! バーカ!!!! ……だそうです」

 彼が見せて来た書簡には、彼が言ったことがそのまま書いてあり、さらには王国の貴族に対する罵詈雑言が続いている。千年近く生きている竜の魔法使いが王城に送った書簡には思えないが、あの魔法使いは、いつもだいたいこうだ。

 あの砦にいるのは、横領に巻き込まれて、もっとも苦しんでいるフィルロファルなのに。

「………………それなら、その竜は今、あの砦にいると言うことか? …………潰す? 殲滅? あそこにいるフィルロファルには非がないんだぞっ……!」
「腹を立てた竜に、そのような理屈は通じないでしょう……それほど強力な竜が本気で暴れたら、王国の部隊でも抑え込めるかどうか……」
「砦に向かう!! 部隊を編成しろ!」
「待ってください。公爵家として、宰相として弁えてもらわないと困ります」
「そうした結果が今だろっっ!! すぐに砦へ行く!」
「宰相であるあなたを、今砦に行かせるわけにはいきません。あなたに何かあったら、今後誰が指揮を取るのです?」
「ふざけるなっっ!! 今すぐに出発する!」

 怒鳴り出し、部屋から出て行こうとする俺に、部隊の魔法使いまでもが飛びついてくる。

「待ってください!! ロステウィス様っ……! お立場を考えてください!」
「落ち着いてください!! 今すぐに砦に向かうなんて、無茶です!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...