僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
24 / 106

24.しばらくいてやるよ

しおりを挟む
「これ、おいしーーーーい!!」

 そう言って、小さな竜は、僕が取ってきたキノコを、魔法の炎で焼いては口に入れている。
 宰相様に渡す分だけかき集めたから、あまり渡したくはなかったけど、砦に帰って来てからも、よほど食べたいらしく、じーーっと見て来るから、少しあげることにしたんだ。

 竜はそれがよほど気に入ったみたい。

 砦の中の窓の大きい部屋で、夜になってきた空を見上げながら、新しいカゴに盛られた、かなり細かく刻まれたキノコのかけらを尻尾で飛ばして口に入れている。

「これ、いいね。僕、気に入った!! 僕の住んでるところにはなかったなー。こんなきのこ!!」
「竜さんは、このあたりに住む竜ではないんですか?」
「うん。僕、隣の国から友達に会いに来たんだ!!」
「友達……? じゃあ、ここにいていいんですか? 心配してるんじゃ……」
「大丈夫大丈夫! 遊びに行って来るって、ちゃんと話して来たから! 楽しんでこいって言ってた!」
「……よければ、その方のところまで使い魔で連絡しますが……」
「本当!?」
「場所がわからないので、使い魔だけ作って渡します。飛ばすことはできますか?」
「うん!! もちろん!! ありがとーー!!」
「じゃあ……これから魔力を抑えてみるので、抑えすぎだったり、気に入らなかったら、すぐに言ってください」

 僕は、部屋にあった細い杖の形をした魔法の道具を持って来た。それを使いながら結界を張れば、魔力の暴走を抑えることができる。

 杖が僕の魔力を受けて輝き出すと、竜も、頷いていた。

「……うん。暴れてた魔力が落ち着いていくみたい! 僕が欲しかったものとは違うけど、いい感じだよ!」
「そうですか……」

 よかった……うまくいって。

 ホッとしていると、竜は、ソファの上に、砦のどこかの部屋から持って来たクッションをたくさん集めてのゴロゴロしだす。

「ここ、居心地いいねー。いっぱい魔法で修復したあとがあるけど、お前がしたの?」
「はい……まだ途中ですが……」
「ふーーん……このあたり、小さな魔物が多いのにー。お前は街には住まないの?」
「この砦の管理を任されているので……」
「じゃあ、魔力を抑えるのがうまくいったら、僕がここにいて手伝ってあげる!」
「え……でも、せっかく友達に会いに来たのに……」
「大丈夫大丈夫ー」

 竜はそう言って、近くにあった、ずっと消えたままの魔法のランタンに魔力をこめる。すると、それはゆっくりと光りだした。僕だと魔力が少なくて明かりがつかなかったのに……

「あ……ありがとうございます……」

 あれ、魔物を遠ざけたり攻撃に使えたりと、かなり便利な機能もあるランタンみたいだから、助かる。

 竜もどこか得意げだ。

「僕、こう見えてすごい竜なんだよ! 物凄く強いんだから!! 王国の魔法使いがみんな集まったって、僕にはぜーーったいっ敵わないよっっ!!」

 そう言って胸を張る姿はなんだか子供っぽく見えるけど……竜の年齢は見た目では分からないし、王国の魔法使いと喧嘩をされたら困るなぁ……

 僕は、部屋の隅に置かれた大きな箱を開ける。この中に、砦にあった魔法の道具を入れてあるんだ。

 その中の一つを取り出して、魔力を込めた。細くて薄い生地のリボンのようなものに、いくつか宝石みたいなものを嵌め込んである、装飾品にも見えるものだ。

 魔力を込めても、僕じゃなかなか動かないけど……

「君は魔力があんまりないの? 貸してみなよ」

 そう言って、竜がほんの少し魔力を込めたら、それはすぐに美しく光出す。

 すごい……さすがだ……僕ではこうはいかない。

 魔力を得て起動されたそれは、元は髪飾りのようにして頭につけておくものだけど、竜を連れ帰ってから、首にも巻けるように少し改良してみた。

「起動の時に、大きな魔力がいるんです。首に巻いておけば、この砦を離れても、暴走する魔力を抑えてくれますから……安心してください」

 それを竜の首の辺りにそっと巻くと、竜は嬉しそうに笑ってくれた。

「すごい!! なんだか、体に溜まっていた余計な魔力がスッキリ整えられた気分だよ!!」

 よ……余計な魔力………………

 魔力が怖いくらい潤沢にある彼ならではのセリフだろう。

 いいなぁ……

 僕みたいに、全然魔力がない奴からしたら、羨ましくてたまらないよ。

 だけど、このままだとすぐにほどけてしまいそう。確かに魔力は抑えられているけど、まだ改良がいる。

 僕が修理したものだからな……

「一応、僕があなたの魔力を抑えるために使ってるってことになっているので、しばらくはここにいて欲しいのですが……」
「うん。いいよーー」
「じゃあ、その間に、もう少し使いやすいように調整してみます」
「明日でいいよーー。僕、お腹空いて来たー」

 竜は、ソファでゴロゴロ転がりだす。すっかりくつろいじゃっているみたいだ。ついさっき、僕らを襲って来た竜だなんて思えない。

「僕もここが気に入ったし、魔力が安定するのも楽でいい。ご飯も美味しいし……しばらくいてあげる!」
「……あ、ありがとうございます……」

 態度の大きな竜だなあ……

 だけど、魔力を貸してくれるのはありがたい。砦や他のものの修復にも力を貸してくれないかな……

 彼の魔力で、ランタンにも魔法の明かりが灯ったから、夜でも明るく外を照らせそうだ。

 そこに、レオトウェルラレット様が入って来た。

「そっちは終わったかー?」
「はい。まだ調整が必要ですが、これでしばらくは竜さんも大丈夫だと思います!」
「すげーな……ここにあるものはガラクタばっかりかと思ってたが……そんなこともできるのか……」
「幽閉が決まってから、よく夜に一人で壊れたものをいじっていたんです。結構楽しくて……直ると嬉しいし、生活するのにも必要だったから……そんなものが役に立って、本当に良かったです!」
「そうか…………」

 そこに、オフィセイール様も入って来る。

「王都の方に、報告のための使い魔を送ったが、まだ返事がない……何かあったのか…………?」
「また会議が長引いてるんじゃね? 最近、貴族たちの保身のせいで、なかなか話が進まないんだよ……」

 呆れたように言って、レオトウェルラレット様はあくびをしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

転生モブは穏やかに過ごしたい

ゆき
BL
火事に巻き込まれそうになった瞬間、エヴァンは前世の記憶を思い出した。 前世で火事によって命を落としたこと、そして自分がBLゲームのモブキャラクターに転生していることを――。 せっかくの第二の人生。しかも物語に関わらないはずのモブ。それならば今世こそ穏やかに過ごしたい。 そう考えていたエヴァンだったが、なぜか登場人物たちが放っておいてくれない……?!

処理中です...