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43.何がしたいのか全くわからない
しおりを挟む僕の近くで喚くセルラテオは、ずいぶん苛立っているようだ。
「覚えているだろう! 俺を! 公爵令息だぞ!!」
「そんなこと言われても、試験……? なんのことですか? いましたか……? 全然覚えてません……」
「……」
「あれ? 聞こえませんでした? 全く、覚えてません。存在ごと忘れてた……いたんですね。そうですか」
そもそも僕は、あの時会長のことで頭がいっぱいだったんだ。他の人のことを考えている場合じゃなかった。僕の頭は、会長のことを考えるためにあるから。
するとセルラテオは、ついにキレたのか、僕に向かって雷撃を放った。
狙うのが下手らしく、あたりはしなかったけど、まだ防御の魔法は使えそうにないし、あんなの当たったら、痺れてしばらく動けないかもしれない。
「お、落ち着いてください…………僕は、会長しか見てないだけで……」
「黙れっっ……! 俺はっ……俺はお前が好きなんだよ!!」
「え……えっと……す、好き?」
好きって、僕が? なんで、僕を好きなんだ? 僕が好きって……なんでなんだろう?
急すぎて、何が何だかわからない。だって、僕のこと、恨んでいたんじゃないのか?
僕が話を盗み聞きしたり、セルラテオが差し向けた奴らを返り討ちにしたりしたから、腹を立てているんだとばかり思っていたのに。
会長のこと恨んでて、僕のことも憎んでるんじゃなかったのか?
「……ぼ、僕のこと、嫌いなんじゃないんですか? か、会長になりたかったんじゃ……」
「誰がっ……なぜそうなる!? ずっと好きだったのに! ずっと俺はっ……! お前に会いに来ていたのに!! お前はいつでも会長会長会長会長会長会長会長……そんなにあいつが好きか!?」
「大好きです!!」
つい、会長への思いを叫んでしまう。
だって好きだ。
会長以外見えない。
あ! そのせいで、こいつのことも気づかなかったのか!
「だ、だいたい、会長が会長であること、許せないって言ってたじゃないですか!! 会長の座を取られて腹を立ててたんですよね!?」
「あんな奴が俺を差し置いて会長だぞ!! あいつは、いつか陛下に仕えることを許されたらディトルスティを迎えに行くと……お前の受験の日に、お前を見て、そう言っていたんだ!」
「えっ……会長、あの試験見てたんですか!?」
「あいつは、魔法を使ってお前の試験を上空から見ていた! 卑怯な奴だ……お前を、迎えに行くこともせずにっ……!」
「会長は僕のことを考えてそうしてくれてたんです!」
会長がそんなことをしてくれてたんだと思うと嬉しい。会長……見てたなら声をかけてくれればいいのに。
そんな会長を否定するなんて許せない。
だけど言い返したからか、激昂させてしまったらしく、セルラテオは僕に迫ってきて、僕の胸ぐらを掴む。目は血走っているし、息も荒い。相当怒っているみたい。
「俺がっ……わざわざお前に会いにきてやったのにっ……! なぜだ!? なぜ喜ばない!? 何が不満だ貴様っ……!」
「……そんな無茶ばかり言われても困りますっ……」
「黙れっっ……!! 公爵令息の俺が!! 平民のお前なんかを愛してやってるんだぞっっ……!!」
「……」
「それなのに!! なぜ俺を見ない!?」
「…………うるせーよ……本当に不快な奴だな……」
「なんだと!?」
「会長は、お前なんか、なんて言わない。奴隷同然の格好で、ボロボロだった僕にも、優しくしてくれた。僕のこと大切にしてくれる。公爵だからどうとか、そんなこと言わない。僕のこと、ちゃんと考えてくれてるし、僕が嫌がるようなことはしないでいてくれる。僕の気持ちだって優先してくれて……今朝だって、僕の思いを理解して、僕がフォーラウセに会いに行くことを許可してくれた! いつだって、僕のこと大事に思ってくれてる!! お前なんかと会長は違うんだ!! 失せろよっ!! 下衆っ!! お前なんかがっ……! 会長を悪く言うなっ……!」
「黙れっっ!!」
叫んだセルラテオの声に、負けないくらいの音を立て、どんどんとドアを叩く音がした。そして、フォーラウセの叫び声が聞こえてくる。
「セルラテオ様っ……! ご無事ですか!? こ、ここを開けてくださいっ……!」
「黙れっ!! 役立たずがっ……! 貴様は失せろ!」
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