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42.油断させたいの?
しおりを挟む「セルラテオ様! セルラテオ様! 開けてください! なぜですか!? なんで俺まで……!」
「セルラテオ! ここを開けろ!」
フォーラウセとヴィユザが、ドアの向こうで叫ぶ声がする。
だけどみんなの声はすぐに掻き消えて、何も聞こえなくなった。激しくドアを叩く音もしない。結界の力だろう。
さすが、学園が用意した結界。驚くほど強固だ。
この結界には二つ使い道があって、生徒会室の中にいる人を守るためと、中にいる不届き者を結界内に閉じ込めて捕縛するために使われる。今は後者の使い方。僕とセルラテオは、二人でここに閉じ込められてしまったんだ。
だけど、なんでこの結界を張るための鍵を、セルラテオが持ってるんだ?
あれを扱えるのは、学園側の幹部たちか、近衛兵、陛下とその側近たちだけのはず。セルラテオは、そのどれでもない。
こいつ……まさか、盗んできたのか?
そんなにまでして、僕らと対決したいってことか?
気持ち悪い。しつこいにも程がある。
こいつ、どれだけ僕を恨んでいるんだ。しかも、全部逆恨みじゃないか。
僕は、セルラテオに振り向いた。
「なんの真似ですか? ここは生徒会室です。部外者は出て行ってください」
「お前も部外者だろう? 生徒会のおかしな処分に捕まっている可哀想なお前を、俺が助けにきてやったんだ」
「……何を言っているのか分かりません。そんなに僕が憎いんですか? いい加減、しつこすぎて引きます」
思いっきり睨みつけやっても、セルラテオは不気味な笑顔を浮かべて、僕に近づいてくる。
「……やっと……二人きりになれたなぁ……? ディトルスティ……」
「…………なんのことですか? 近づくな……出て行ってください。ここは生徒会室です。会長が」
「黙れっっ……!! あいつの話をするな!! 俺は……ディトルスティ!! 俺はっ……お前に会いにきたんだ!」
「知ってますよ。なんの用ですか……? 結界まで張って。それ、持ってきちゃダメなの、知ってますよね?」
「そんなことはどうでもいいっ……! どうでもいいんだ!!」
「よくないです…………あの……大丈夫ですか?」
……って、これ、ずっとさっきヴィユザが僕に言ってたな。「大丈夫か?」って。
僕ってまさか、こんなふうに見えてたのか……? 結構怖い……そして面倒臭い。
セルラテオは、やけに血走った目をして、僕に近づいてくる。
「俺は……俺はっ……! お前にっ!! お前に会いに来たんだ!! それが目的で来た!」
「……さっきそれは聞きました……なんなんですか……面倒臭い……会いに来たなら、もう会ったので満足ですよね? 早く帰ってください」
「そうじゃないっっ!!」
うるさい……帰れよ。
なんなんだ。いきなり生徒会室にきて喚いて。昨日の騒ぎの件で余計に恨まれたんだろうけど、ここで怒鳴られても困る。
「なぜ分からない!?」
「うるさいです。公爵令息さま。喚かないでください。なんか知らないけど、うまくいかないことを僕のせいにされても困ります。あと、結界解いてください。これ、校則違反……っていうか、陛下のもの盗み出してるんだから、最悪、逆賊扱いされますよ? いいんですか?」
「うるさい!! だまれ……黙れっっ!! お前の……お前のせいだ! お前がっ……! 俺を理解しようとしないからっ……!」
「うるさいのはあなたです。帰ってください」
「なぜ理解しようとしない!! 俺はっ……! お前が好きなんだよ!!」
「…………は?」
何言ってるんだろう……
そんなことを言って、油断させたいのか? それで隙を見せたら僕の首を取ろうって魂胆か?
よほど僕を恨んでいるらしいそいつは、いきなり右手に魔法の光を灯らせて、僕に迫ってくる。あれ……雷の魔法か。そんなもので拷問は、さすがに怖い。
「俺は、お前が好きだ!! お前のことが好きだから来たんだ!!」
「そんなこと、急に言われても……」
「俺はお前が好きだから来たのにっ……! ずっと……ずっとぉっ……!」
セルラテオが放った魔法の鎖が飛んでくる。こんなもの、魔法で吹き散らせばいいだけだ。
だけど結界のせいで、うまく魔法が使えない。鎖を吹き散らすだけで、息が上がってしまう。
くそ……しまった……相手の魔法は大したことないと、高を括っていた。セルラテオは鍵を持っているから、魔法を自由に使えるけど、僕の方はそうはいかない。
結界に邪魔されているし、昨日の件で、まだ魔力も使いにくい。どうやら僕、一度魔力を失うと、回復までにかなりかかるみたいだ。
僕の微かな焦りを悟ったのか、セルラテオが近づいてくる。
「……ディトルスティ、ここは俺の生徒会室になるはずだったんだよ!! お前も、俺のものになるはずだった!!」
「……さっきから何言ってるんですか? 僕、ここに入学したばかりですよ? あなたとも、出会ってまた数日です。それなのに、なんで僕があなたのものにならなきゃいけないんですか?」
「試験だ!! 試験!」
「試験?」
「……本当に、覚えていないのか……? なぜだ!? なぜ覚えてすらいない!? お前の入学試験の時に、俺たちは初めて会ったんだ!! 本当に覚えていないのか!!??」
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