好きな人の「好き」を信じられない僕には、会長の束縛じゃ物足りません

迷路を跳ぶ狐

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41.襲撃です

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 会長が僕の思いを汲んでくれて、僕はヴィユザと一緒に、フォーラウセがいる寮に向かって出発した。

 すでに、昨日の魔法具を埋めた男がフォーラウセだったことは知れている。おそらく、それを支持したのはセルラテオ。このままだと、フォーラウセだけが拘束されて、セルラテオは逃げおおせる可能性がある。

 そんなこと、絶対にさせない。

「会長……僕、頑張ります……」

 僕に任せてくれた会長のことを思い出して、決意を口に出していたら、隣のヴィユザが呆れたように言う。

「お前……そんなに呑気でいいのか? おい! しっかりしろ! ディトルスティ! これから何しに行くか、分かってるか!?」
「もちろんだよ。会長の敵を消しに行くんだ……」
「消さなくていいんだよ!! やりすぎたら、お前の大事な会長も困るんだぞ!」
「分かってるよ……フォーラウセだけに罪をなすりつけて、セルラテオを逃すなんて、絶対にさせない!」
「そうだな……」

 そう言って、ヴィユザは空を見上げていた。こうして、当たり前みたいについてきてくれているけど、ヴィユザは、僕を嵌めるために利用されてだんだよな……今朝だって、書類手伝ってくれて、こうして、僕を助けてくれてるんだ。

「………………あの……ヴィユザ……」
「なんだ?」
「いいのか……? ついてきてもらって。僕らのことで、巻き込んじゃってるのに」
「何言ってんだよ! 仲間だろ!! むしろ巻き込んでくれなきゃ困る! だいたい、先にフォーラウセたちに騙されてお前に絡んだのは俺だろ!」
「……僕、セルラテオに付き纏ってなんかいない……」
「分かってるよ、今では。だけど……俺にそれを話した時のフォーラウセ……セルラテオのこと、すっげー心配してるみたいだったからさ」
「……そう……」

 フォーラウセ……昨日もセルラテオと一緒にいたし、すごい忠誠心だ。あんな奴の何がそんなにいいんだ。

 これから会う奴のことを考えながら、僕らは、寮の前まできた。すると、ちょうどフォーラウセが出てくる。
 彼は、すぐに僕に気づいたみたいだった。

「……ディトルスティ……」
「ちょっといい? 話があるんだけど」
「……お、お前と……話すことなんて…………」

 そいつは言いかけて、急に俯いた。その肩に、何か乗ってる。鳥の姿をしているけど、使い魔じゃないか。

「それ……校則違反だよ。……セルラテオに渡されたの?」
「黙れっ……! お前にはっ……関係ない!!」

 そう叫んで、フォーラウセは空に飛び上がる。

 いきなり逃げるのかよ!!

 僕とヴィユザも、魔法を使って空を飛んだ。

 だけど、学園の上空を逃げるフォーラウセは、めちゃくちゃ早い。逃走の魔法は得意らしい。

 それに、今の僕は、昨日魔力が尽きた影響で、まだ本調子じゃないみたい。

 前を飛ぶフォーラウセは、まっすぐ学園に向かって飛んでいく。この方角……生徒会室!? 会長を狙っているのか!?

 僕はすぐに、指輪に魔力を注いで会長に報告。
 ついでに、授業で習ったばかりの異常を知らせる警報の魔法で、空に光の球を投げた。朝の空に強い光が瞬いて、すぐに消える。これで学園の先生や風紀委員も気づいてくれるはず。

 僕とヴィユザには権限がないから、フォーラウセに僕らの求めに応じて止まる義務はない。
 だから、風紀委員が来た時に「嫌だったから逃げた、風紀委員会から逃げる気はない」って言われたらそれまでだけど、このタイミングで逃げられたら、報告しないわけにはいかない。何もなければ、風紀委員会に頭を下げればいいだけのこと。また騒ぎを大きくしたって言われそうだな……

「止まって……! フォーラウセ!! 僕らはっ……! セルラテオを止めたいだけだ!!」

 叫ぶと、そいつは本当に止まった。そして僕らに振り向く。

「な、何をっ……今更……お前はっっ!! お前は何も分かってないんだ!」

 そう叫んで、フォーラウセは生徒会室に向かって急降下。そして、生徒会室の窓を消して中に飛び込んでいく。

 僕らも飛び込むと、消えた窓はすぐに元通りになった。

 生徒会室には、会長とマモネーク、セルラテオが立っている。

 会長が、僕に向かって叫んだ。

「ディトルスティ……逃げて!」
「え!?」

 なんでって聞く間もなく、セルラテオが僕に振り向いて、天井に向かって何かを掲げる。小さな鍵だ。だけどただの鍵じゃない。生徒会室の結界の魔法を起動するためのものだ。あれは、学生が持てるものじゃないはずなのに!

 鍵が光り出して、光は生徒会室を包みだす。このままじゃ、全員閉じ込められる。会長とヴィユザたちのことは守らなきゃ。

 僕が魔法をかけると、強い風が吹いて、僕とセルラテオ以外を部屋の外へ吹き飛ばした。

「ここは任せてください! 風紀委員に連絡をっ……!」

 叫んだ僕の言葉に、会長が答えてくれたような気がした。

 ドアがバタンと閉まって、閉ざされた生徒会室に、僕とセルラテオだけになる。
 もういい加減にしてほしい。こいつ、どれだけ僕らに付きまとえば気がすむんだ。

 僕は怒っているのに、セルラテオはニヤニヤ笑っていた。

「ディトルスティ……お前から来てくれるなんて思わなかった……生意気なお前にも、可愛いところがあるじゃないか」
「……気持ち悪いです。僕のことも、気安く呼ばないでください」

 気色悪くて鳥肌が立つ。何でこんな奴のために、また時間を使ってやらなきゃならないんだ。僕の時間は大切な会長のために使われるべきなのに。

 だけどこれで、結界の中に閉じ込められたのは僕だけ。外にいる会長が、風紀委員に連絡してくれれば、鍵を勝手に持ち出したこいつはすぐに拘束される。それまで、時間稼ぎだ。
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