玩具にされたぼくと、彼女の丸メガネ

清白 芹

文字の大きさ
2 / 25

2.平穏な日常

しおりを挟む
お姉ちゃんの失踪から約3年が経過し、わたしは15歳。中学三年生になっていた。
受験生なので、志望校合格に向けて邁進しなきゃいけない時期でもあるんだけど、クラスの女子たちは恋の話に花を咲かせている。
彼氏とエッチしたって話もよく聞く。仲のいい友達もみんな彼氏をつくって幸せそうにしているし、青春真っ盛りって感じ。でもわたしはあいもかわらず平凡で目立ったところのないフツーの女子中学生だ。
親友の祐佳ゆうかのように美少女じゃないし、大人っぽくもない。あずさのように明朗快活なスポーツ少女でもないし、優里奈ゆりなのようにおっとりした癒し系でもない。かわいいねとかキレイだねとかいわれないし、もちろん男の子にも告白されたりしない。目立った取り柄もないし当たり前だよね。でもわたしは恋愛にぜんぜん興味がないからそれでいいって思ってる。親に心配をかけないように日々まじめに過ごし、立派な大人になることのほうが、今のわたしにとって大事なのだから。

通学路を歩きながら、ぼんやりと考えごとをしていると、後ろから男の子の声がする。
「美咲ちゃん。おはよう」
いつも通りの優しい声音とさわやかな笑顔。
「あ、おはよー。翔流かけるくん」
わたしは彼のほうを振り返り、いつもどおりの挨拶をする。
「今日もいい天気だね。そういえば昨日の数学の宿題、結構難しかったけど大丈夫だった?」
「んー。とりあえず問題は解いてきたんだけどね。あんまり自信ないかな」
「そっかー。よかったら、あとで教えてあげようか?」
「うん。いつもありがとね」
「じゃ。またね」
彼は手を振り、学校のほうに走っていく。

そのまま一緒に登校してもいいのかもしれないけど、わたしたちはただのクラスメイトなのだ。
だから並んで登校するってのはおかしいと思うし、彼もそう思っているのかも。通学路で遭遇しても、ちょっと言葉をかわすくらいですぐに走って行ってしまうから。翔流かけるくんも好きな女の子がいるはずなんだ。わたしと変な噂を立てられたらかわいそうだよね。

ふわっとした柔らかそうな髪の毛と二重まぶたのパッチリとした目が印象的な日向ひなた 翔流かけるくんは、同じ学校のクラスメイトだ。
フツーの女子中学生のわたしは、男子と親しく話すことはあまりない。でも翔流かけるくんとはよく話す。小学校のときから同じクラスの彼とはおさななじみのような感じで、長い付き合いであるがゆえの安心感があるんだと思う。
男子なんだけど同性の友達のような安心感。でも同性の友達とは違う。ちゃんと男の子らしいところがあるってこともよく知っている。女の子とは違うのだ。
でも女子の中には、男子にしては背が低くて中性的な顔立ちの彼のことを「可愛い系男子」と呼んでいる子もいるみたい。それってちょっとおかしいんじゃないかなって思う。どこか翔流かけるくんをバカにしているような響きが感じられてあんまり好きじゃないんだ。

翔流かけるくんが走っていったあと、わたしはいつもどおりマイペースに登校していたけど、校門の前にいる祐佳ゆうかあずさを見つけ、小走りで彼女たちのほうへ向かう。
「おはよー。祐佳ゆうかあずさ
わたしの声に気づいた祐佳ゆうかは後ろを振り返り、つややかな黒髪のロングヘアーをかきあげる。同じ学年とは思えないくらい大人っぽい仕草だ。
「おはよう。今日はいつもより遅いんじゃない?」
「おっはよー。美咲」
ポニーテールに束ねた髪がトレードマークのあずさが明るく挨拶を返し、わたしの肩をポンと叩く。
「今日も元気だね。あずさは」
「まあね。元気で明るいのがあたしの取り柄だからねー」
そう言ってケラケラと笑う。彼女が笑うとわたしも楽しい気分になる。

3人で並んで靴箱が立ち並ぶ生徒玄関のほうに歩を進めていると、
「おーい。みんなー。おはようー」
のんびりした口調で、優里奈ゆりなが校門付近から呼びかけてくる。
小走りで近づいてくるけど、ちょっとふくよかな体型をしている彼女は走るのがあんまり速くない。ようやくわたしたちのところに到着し、はぁはぁと息を切らしながらも、にこやかに微笑む。笑うとできるえくぼ。細められる目。まるで観音様のような包容力を感じさせる。
わたしは優里奈ゆりなの笑顔が好きだった。優しく包み込んでくれるような雰囲気がお姉ちゃんを思い出させるからなのかもしれない。
4人そろったわたしたちは、おしゃべりをしながら教室に向かう。これが平穏な朝の日常だ。こういう日々がいつまでも続けばいいのにって心から思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。

冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い

森本イチカ
恋愛
妹じゃなくて、女として見て欲しい。 14歳年下の凛子は幼馴染の優にずっと片想いしていた。 やっと社会人になり、社長である優と少しでも近づけたと思っていた矢先、優がお見合いをしている事を知る凛子。 女としてみて欲しくて迫るが拒まれてーー ★短編ですが長編に変更可能です。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

幼馴染に10年片想いしてたら、冷酷御曹司にプロポーズされました

ほーみ
恋愛
 春の匂いが、駅前の並木道をくすぐる。満開の桜の下、私はひとり歩いていた。駅までの道は、高校時代、彼とよく歩いた道だ。  制服姿の学生が笑いながらすれ違っていくのを横目に、私はスマホを見下ろした。  「今日、伝えるって決めたんじゃなかったの?」  送信したきり返信のないメッセージ。画面には「既読」の文字があるだけだった。  ――渡瀬 湊。私が10年間片想いをしている、幼馴染。

処理中です...