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全能の爆誕
024:サグラモール家。
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ついに、ついにこの日が来てしまった。とうとう生まれて初めて婚約者というものに出会う。
もうそこまで来ているサグラモール一家をお出迎えするために準備万端で屋敷の前に家族揃って立っていた。
「緊張してる?」
「少しだけ、してるかな」
隣にいるルーシー姉さんにそう問いかけられるが、まあ前世では結婚していなかったわけだから緊張してしまう。
「大丈夫よぉ、クレアちゃんは真面目でいい子だって聞いたわよぉ?」
「うん……」
そういうことで緊張しているわけではないのだ。ただ婚約者という相手が初めてだから緊張しているだけに過ぎない。
「ノエルがアーサーに何かしたら……ぶん殴るわ」
「やめなさい~」
「いたっ」
むしろこちらの姉たちが何かしないかと心配になってくるのだが。
それにしてもノエル? ルーシー姉さんが知っているということは俺以外の家族は知っているのか?
「みんな、来たよ」
お父上様の言葉で前を見ると複数の馬車が見えた。そのうちの一つの馬車はこちらにゆっくりと進んできて、横を向いて止まる。馬車の横には燃え盛る炎に剣先が下を向いているサグラモールの家紋があった。
そして扉が開けられるや否や、誰かが飛び出してきた。
「スザンヌ!」
「ゾーイ!」
飛び出してきたのは透き通った長い白髪を持ってその髪に相応しい白い肌の女性がお母上様の方に走りだし、お母上様もその女性に駆け寄って抱き合った。
「久しぶり! スザンヌ! 元気にしてた?」
「してたわよ~。ゾーイはぁ?」
「私も見ての通り元気よ! あぁ~、スザンヌの匂いがする~」
「もぉ、まだそんなことをしているのぉ?」
「私がおばあちゃんになってもずっとする自信があるわよ」
お母上様とゾーイと呼ばれた女性は百合百合しく仲良くしているのを他所に、馬車から一人の男性と二人の女の子が出てきた。
「アルノ、久しぶりだな」
「あぁ、久しぶりだね。エリオット」
むさくるしいという言葉が一番最初に出てくるような、服の上からでも分かるほどの筋肉を持った男性がお父上様と力強い握手を交わした。
「見て、あそこはむさくるしくて嫌になるわね」
「本当にゾーイは男らしさが嫌いなのねぇ」
「男らしさなんて嫌になるわ!」
お母上様に抱き着きながらお父上様とエリオットと呼ばれた男性のことを見て顔をしかめるゾーイと呼ばれる女性。
「やっほー! シルヴィー! ルーシー!」
「相変わらず元気」
「ノエル、こっちに近づいてこないでよ」
ゾーイと呼ばれる女性とよく似て、髪が肩まで伸びていることと幼さくらいしか変わったところがない女の子が両手をわしゃわしゃしてシルヴィー姉さんとルーシー姉さんに近づこうとするが、ルーシー姉さんが拒否している。
そして一番この中で主張がなく、地味と言った方がしっくりと来る長い茶髪の女の子が一歩引いて感情のない目でどこかを見ていた。
俺の婚約者は次女だと聞いているからおそらくクレア・サグラモールがこの女の子だろうなと思っていると、エリオットと呼ばれる男性がこちらに来た。
「初めまして、とは言ってもお前が小さい頃に会ったことがあるから初めましてではないが、一応初めましてだな。俺はエリオット・サグラモール。アルノとは王立聖騎士学園からの仲だ。よろしく」
「初めまして。ランスロット家の長男、アーサー・ランスロットです。こちらこそよろしくお願いします」
「そんなに堅苦しくなくていい。俺とアルノ、というかゾーイとスザンヌ、それに他にもいたが、学園の頃からずっとつるんでいてお前のことは甥っ子みたいに感じているから遠慮するな」
「そ、そうですか……それでは遠慮しないようにします」
こういう感じの人なのかと納得していると、シルヴィー姉さんとルーシー姉さんの方にいたノエルと呼ばれる女の子がこっちに来た。
ていうか何だか見たことがあると思ったら来てたわ。俺が赤ん坊の頃、結構色々な大人と接触していたからな。
シルヴィー姉さんとルーシー姉さんのところにいた女の子がこちらに来た。
「むさくるしいお父さま」
「むさくるしいは余計だ。何だ?」
「お父さまには用はありません、そこをどいてください」
「最近俺の扱いが酷くないか?」
「そう思われているのなら何よりです。むさくるしいのは嫌いなので」
「……アルノ、俺はどうしたらいいんだ?」
「……まぁ、そういうお年頃なんじゃないのかな? 諦める方が気は楽だね」
「お前はいいだろうな。爽やかなんだから。一回でもいいから体を交換してやりたいよ」
「お断りするよ」
俺の前にいたエリオットさんはお父上様の方にトボトボと歩いて行き、俺の前にノエルと呼ばれる女の子が来た。
「私はノエル・サグラモール。あなたは?」
「アーサー・ランスロットです」
「ふーん……」
ノエルさんは俺を値踏みするような視線を向けてくる。別にこの人に気に入ってもらいたいとは全く思わないから気に入られなくてもいいから早く終わらせてほしい。
「ふーん、私みたいな人間もいたんだ……」
「えっ?」
「私ね、男らしい、醜い、才能がない人、才能を上手くいかそうとしない人みたいな人たちが大っ嫌いなんだよね。お父さまもね」
「……エリオット、家でもこんな感じなのかい?」
「……こんな感じだ」
「……晩酌、付き合うよ」
「……頼む。たらふく飲んでやる」
いや、普通にエリオットさんが可哀そうなのだが。それにどうしてこんな好き嫌いを話し始めたのだろうか。
「キミは……そう、例えるならば太陽と言ったところかしら。太陽がないと人は生きていけないし、それが中心に回っている、そんな感じね」
えっ、これは褒められているのか? 褒められているのならべた褒めな気がするんだが……。
「お父さま、私の結婚相手はこのアーサー・ランスロットにします」
「いや待て。お前はサグラモール家を継がないといけないだろ。それにアーサーはクレアと婚約するんだから」
「いいじゃありませんか、サグラモール家が潰れて。それにクレアと私、両方アーサー・ランスロットの元に嫁ぎます」
ノエルさんは俺を抱き寄せてエリオットさんにそう言い放ったことで、辺りは衝撃が走った。
「笑止千万。しばらく会わない間にバカになった?」
「あんたみたいな女がアーサーを幸せにできるわけないわよ! 自己中心女のくせに!」
「アーサーくんのお嫁さんになったらシルヴィーとルーシーがお姉ちゃん? それならがぜんお嫁さんになりたくなってきた~」
ノエルさんとルーシー姉さんがが俺の取り合いをしてシルヴィー姉さんはノエルさんを引っ張って俺から離そうとしているが、さすがにやめてほしい。というかノエルさんのこの感じ、グリーテンみたいだな。
そういうのは間に合っているんだよなぁ。十分です。
「まさか……ノエルが気に入るなんて」
「そうよねぇ、あの才能主義のノエルちゃんが一目見ただけで太陽って言うだなんてぇ、もうアーサーとしか結婚する気がないんじゃないのぉ?」
「それは勘弁してほしいぞ、全く」
「だけどいいことじゃないか。アーサーがいることは、少なくともノエルに結婚する気はあるということになるね」
大人たちは大人たちでノエルさんのことで何やら話しているし。
だが、ただ一人だけこの状況で一切関わっていないクレアさん? はこちらを少し羨ましそうな目で見ていた。
もうそこまで来ているサグラモール一家をお出迎えするために準備万端で屋敷の前に家族揃って立っていた。
「緊張してる?」
「少しだけ、してるかな」
隣にいるルーシー姉さんにそう問いかけられるが、まあ前世では結婚していなかったわけだから緊張してしまう。
「大丈夫よぉ、クレアちゃんは真面目でいい子だって聞いたわよぉ?」
「うん……」
そういうことで緊張しているわけではないのだ。ただ婚約者という相手が初めてだから緊張しているだけに過ぎない。
「ノエルがアーサーに何かしたら……ぶん殴るわ」
「やめなさい~」
「いたっ」
むしろこちらの姉たちが何かしないかと心配になってくるのだが。
それにしてもノエル? ルーシー姉さんが知っているということは俺以外の家族は知っているのか?
「みんな、来たよ」
お父上様の言葉で前を見ると複数の馬車が見えた。そのうちの一つの馬車はこちらにゆっくりと進んできて、横を向いて止まる。馬車の横には燃え盛る炎に剣先が下を向いているサグラモールの家紋があった。
そして扉が開けられるや否や、誰かが飛び出してきた。
「スザンヌ!」
「ゾーイ!」
飛び出してきたのは透き通った長い白髪を持ってその髪に相応しい白い肌の女性がお母上様の方に走りだし、お母上様もその女性に駆け寄って抱き合った。
「久しぶり! スザンヌ! 元気にしてた?」
「してたわよ~。ゾーイはぁ?」
「私も見ての通り元気よ! あぁ~、スザンヌの匂いがする~」
「もぉ、まだそんなことをしているのぉ?」
「私がおばあちゃんになってもずっとする自信があるわよ」
お母上様とゾーイと呼ばれた女性は百合百合しく仲良くしているのを他所に、馬車から一人の男性と二人の女の子が出てきた。
「アルノ、久しぶりだな」
「あぁ、久しぶりだね。エリオット」
むさくるしいという言葉が一番最初に出てくるような、服の上からでも分かるほどの筋肉を持った男性がお父上様と力強い握手を交わした。
「見て、あそこはむさくるしくて嫌になるわね」
「本当にゾーイは男らしさが嫌いなのねぇ」
「男らしさなんて嫌になるわ!」
お母上様に抱き着きながらお父上様とエリオットと呼ばれた男性のことを見て顔をしかめるゾーイと呼ばれる女性。
「やっほー! シルヴィー! ルーシー!」
「相変わらず元気」
「ノエル、こっちに近づいてこないでよ」
ゾーイと呼ばれる女性とよく似て、髪が肩まで伸びていることと幼さくらいしか変わったところがない女の子が両手をわしゃわしゃしてシルヴィー姉さんとルーシー姉さんに近づこうとするが、ルーシー姉さんが拒否している。
そして一番この中で主張がなく、地味と言った方がしっくりと来る長い茶髪の女の子が一歩引いて感情のない目でどこかを見ていた。
俺の婚約者は次女だと聞いているからおそらくクレア・サグラモールがこの女の子だろうなと思っていると、エリオットと呼ばれる男性がこちらに来た。
「初めまして、とは言ってもお前が小さい頃に会ったことがあるから初めましてではないが、一応初めましてだな。俺はエリオット・サグラモール。アルノとは王立聖騎士学園からの仲だ。よろしく」
「初めまして。ランスロット家の長男、アーサー・ランスロットです。こちらこそよろしくお願いします」
「そんなに堅苦しくなくていい。俺とアルノ、というかゾーイとスザンヌ、それに他にもいたが、学園の頃からずっとつるんでいてお前のことは甥っ子みたいに感じているから遠慮するな」
「そ、そうですか……それでは遠慮しないようにします」
こういう感じの人なのかと納得していると、シルヴィー姉さんとルーシー姉さんの方にいたノエルと呼ばれる女の子がこっちに来た。
ていうか何だか見たことがあると思ったら来てたわ。俺が赤ん坊の頃、結構色々な大人と接触していたからな。
シルヴィー姉さんとルーシー姉さんのところにいた女の子がこちらに来た。
「むさくるしいお父さま」
「むさくるしいは余計だ。何だ?」
「お父さまには用はありません、そこをどいてください」
「最近俺の扱いが酷くないか?」
「そう思われているのなら何よりです。むさくるしいのは嫌いなので」
「……アルノ、俺はどうしたらいいんだ?」
「……まぁ、そういうお年頃なんじゃないのかな? 諦める方が気は楽だね」
「お前はいいだろうな。爽やかなんだから。一回でもいいから体を交換してやりたいよ」
「お断りするよ」
俺の前にいたエリオットさんはお父上様の方にトボトボと歩いて行き、俺の前にノエルと呼ばれる女の子が来た。
「私はノエル・サグラモール。あなたは?」
「アーサー・ランスロットです」
「ふーん……」
ノエルさんは俺を値踏みするような視線を向けてくる。別にこの人に気に入ってもらいたいとは全く思わないから気に入られなくてもいいから早く終わらせてほしい。
「ふーん、私みたいな人間もいたんだ……」
「えっ?」
「私ね、男らしい、醜い、才能がない人、才能を上手くいかそうとしない人みたいな人たちが大っ嫌いなんだよね。お父さまもね」
「……エリオット、家でもこんな感じなのかい?」
「……こんな感じだ」
「……晩酌、付き合うよ」
「……頼む。たらふく飲んでやる」
いや、普通にエリオットさんが可哀そうなのだが。それにどうしてこんな好き嫌いを話し始めたのだろうか。
「キミは……そう、例えるならば太陽と言ったところかしら。太陽がないと人は生きていけないし、それが中心に回っている、そんな感じね」
えっ、これは褒められているのか? 褒められているのならべた褒めな気がするんだが……。
「お父さま、私の結婚相手はこのアーサー・ランスロットにします」
「いや待て。お前はサグラモール家を継がないといけないだろ。それにアーサーはクレアと婚約するんだから」
「いいじゃありませんか、サグラモール家が潰れて。それにクレアと私、両方アーサー・ランスロットの元に嫁ぎます」
ノエルさんは俺を抱き寄せてエリオットさんにそう言い放ったことで、辺りは衝撃が走った。
「笑止千万。しばらく会わない間にバカになった?」
「あんたみたいな女がアーサーを幸せにできるわけないわよ! 自己中心女のくせに!」
「アーサーくんのお嫁さんになったらシルヴィーとルーシーがお姉ちゃん? それならがぜんお嫁さんになりたくなってきた~」
ノエルさんとルーシー姉さんがが俺の取り合いをしてシルヴィー姉さんはノエルさんを引っ張って俺から離そうとしているが、さすがにやめてほしい。というかノエルさんのこの感じ、グリーテンみたいだな。
そういうのは間に合っているんだよなぁ。十分です。
「まさか……ノエルが気に入るなんて」
「そうよねぇ、あの才能主義のノエルちゃんが一目見ただけで太陽って言うだなんてぇ、もうアーサーとしか結婚する気がないんじゃないのぉ?」
「それは勘弁してほしいぞ、全く」
「だけどいいことじゃないか。アーサーがいることは、少なくともノエルに結婚する気はあるということになるね」
大人たちは大人たちでノエルさんのことで何やら話しているし。
だが、ただ一人だけこの状況で一切関わっていないクレアさん? はこちらを少し羨ましそうな目で見ていた。
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