村田君と佐々木さん

紀村 紀壱

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小ネタ設定集

あるお正月の小話とか猫の日とかLINEネタ

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■とあるお正月の話《同棲後》

 コタツの上に置いた佐々木の端末が震え、軽快な音がメッセージの受信を教える。
  
 ▶ ごめん】
 ▶ やっぱり帰るの明日になりそう】
  
 ◁ 大丈夫だよ。無理しないでね】

 ▶ ほんとごめん】
 ▶ 一緒に正月を過ごしたいって言ったの俺なのに…】

 ◁ 気にしないで】
 ◁ 実家に居るよりゆっくり過ごしてて気楽だよ】

 ▶ 明日の昼には必ずかえれから!】

 ◁ うん、わかった】

 珍しく誤字のまま送られてきたメッセージと、いつもなら返信にすぐつく既読はいつまでもつかない。
 それに、きっと忙しい合間に慌てて送ってきたのだろう村田が想像できて、佐々木は無理しないでほしいなぁと思う。
 文字でのやり取りは仕事のメールくらいしかないから。
 慣れていなくて、どことなくそっけない文章になってしまう自分の返信を見返して眉を下げる。

『今年のお正月は一緒に過ごしたいな』

 そう言った村田の要望に、実家への帰省を取りやめにしたのは事実だ。しかしこの歳になると、毎年帰っていたわけではなくて。気に病む事は無いと、上手く伝えられない自分に佐々木は溜め息をつく。
 ちなみに村田の方どうなのかと言えば、アパレルショップに就職してからは正月の初売り準備で帰らないのが通常になっていたらしい。だから、一般とは時期をずらして、のんびり実家に帰っていたと笑って。
 転職をして、今年はゆっくりしたお正月を過ごせそうだ、と思ったのだけれども。


――30日の夕方、掃除も買い物も終えた村田と佐々木が、さあのんびりとしよう、とコタツに潜りこもうとしたその時、村田の携帯が鳴り響いた。

 着信は職場のボスである雪川から。 酷く申し訳なさそうに、今から出てこれないだろうか、と言う要望で。
 雪川の話によると、同業者の事務所メンバーが風邪で全員潰れてしまい、年末年始のイベントの仕事に穴をあけてしまうと村田の所属している事務所へヘルプが入ったと言う事で。
 同業者はライバルでもあるが、横のつながりと言う物は大切だ。特に小さな事務所なんかは他の穴を埋めると言った仕事は多い。――とは言っても。
 あんまりなタイミングに、年明けまでの緊急出勤して欲しいと連絡を受けた村田は顔をこわばらせる。
 佐々木との約束と今後の仕事、どちらを優先すべきか。
 迷う様子の村田に、電話の受け答えからなんとなく状態を把握した佐々木は「大丈夫だと、行っておいで」と、その背中を押したのだが。
 やはり村田の事だから気にしてしまっているのだろう。
 携帯端末をテーブル戻して伏せ、佐々木はコタツに潜り込みつつ、村田には申し訳ないが、なんというか今年の正月は平和だな、と佐々木は思う。
 もちろんきっと村田が一緒の方が良かったが、明日には村田がこの家に帰ってくるのかと思うとなんだか心がフワフワするのだ。朝から晩まで村田と一緒というのは同棲を始めて何回もあるが、連日となるとまだ数えるほどしか無い。
 村田は残念がったが、明日から少なくとも3日は一緒なのかと思うと、佐々木はそれだけでも十分に幸せだなあと思う。
 コタツでぼんやりとTVを見てるとうとうとする。
 このまま眠ってしまったら気持ちが良さそうだが、風邪を引いてしまったら残りの休日が勿体ない。
 そして何より村田を心配させたくないな、と。佐々木はコタツからふらふらと這い出て、自室の寝床を目指そうとして。

「んー……そういえば今日見る夢は初夢か……」

 ふと、そんな事を思いだし、くるりと、半ば睡魔に片足を突っ込んだまま踵を返す。
 そして向かったのは。そこのほうが、よく眠れそうだと思った場所だった。




 ――疲れた。と溜め息を吐いて。
 村田はなるべく音を立てないようにマンションの鍵を静かに開ける。
「もう大丈夫だ、ホントに悪かったな」と自身も顔色をくすませながら、申し訳なさそうに謝る雪川の言葉に現場を上がらせてもらったのは深夜1時を回った頃だった。
 シンと、空気も冷たく静まった部屋に、村田がブーツとコートを脱ぎ捨てる音が思いのほか響く。
 業種の違いにより、生活リズムも違うからと、分けた佐々木の寝室は玄関に違い。
 佐々木は寝付きのいい方なのできっと多少の物音では起きない。
 むしろ壁の薄いアパートで長年暮らしていたせいか、ちょっとやそっとじゃ起きない佐々木を心配するぐらいなのだが、それはそれ、これはこれで、なるべく音を立てないようバスルームへと向かう。
 スタイリストがクサい、とかはありえない。
 泊まり込みで服もシャワーも借りて浴びてはいたが、冷え切った体を温めたいとシャワーを浴びて。
 明日はゆっくりお風呂に浸かりたいな、と思いながら、脱衣所で頭を拭いているうちにすぐに冷えてくる身体に、シャワーを浴びる前にエアコンで寝室を温めておけばよかったと後悔をする。
 しかし、己の寝室の扉を開けた瞬間、暖かい空気がふわっと溢れて驚く。
 部屋が暖かい。
 もしかしてエアコンの電源を消し忘れた? と思うが、その考えはベッドが目に入ってぱっと離散した。
 こんもりと盛り上がった掛け布団。ソレが規則正しくゆるゆると上下していた。
 村田は口の端が引き上げて、そろそろと布団をめくって『隙間』に体を滑り込ませる。
 起こすだろうか、と心配したが少しモゾついて、すぐに佐々木はまた規則正しい寝息を立てた。
 村田は自身の身体が布団の中で温まるのを待って、そのほかほかの身体をそっと引き寄せて抱き込む。いたずらなんてするつもりもはない。流石に体力も気力も尽きている。
 ただ、くっつけたところから混じり合ってゆく体温がひどく愛おしくて心地が良いな、と思いながら。

 ああ、良い初夢を見られそうだと、村田は目を閉じた。



=====================

■猫の日ネタ
村田の妹、美幸ちゃんが佐々木さんが猫カフェに行ったことを知る村田。


美幸「この前、猫カフェいったんだけど、猫がおやつあげるとき以外全然近づいてくれなくてさー」

村田「へー…どうせお前が、構いすぎるからだろ」(興味なさげ)

美幸「ちなみに佐々木さんと」

村田「は!?」

美幸「佐々木さん、めっちゃ恐る恐る触るから、逆に猫から面白がられて群がられて、笑った」

村田「待って、お前いつの間に、いやなんで佐々木さんと猫カフェ行ってんだよ」

美幸「その時の猫に囲まれて戸惑う佐々木さんの写真がコチラ」

村田「は? さっさとその画像こっちに送れよ」

美幸「猫にモテてムカつくよね」(真顔)

村田「いや、八つ当たりすんなよ。てかなんで猫カフェ…」

佐々木「ご、ごめんね、この前の激辛料理の帰りに…」(実はそばにいた)

美幸「こう兄ぃ猫カフェ付き合ってくれないし」

村田「いやお前、友達と頻繁に猫カフェ行ってんだろ」

美幸「ネコ信者を増やしたくて…」

村田「お前、佐々木さんを巻き込むなよ」

佐々木「あ、いや、猫は可愛いし、楽しかったよ」

村田「え、佐々木さん、猫好きなの?  可愛いよな、猫。今度一緒に行く?」

美幸「なにその手のひら返し」


ーーーーーーーーーーーーーーーー
■バレンタインデーについての兄妹LINE
村田の妹美幸ちゃんと村田のLINE











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