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魔法のサプリメント(1)連続死する高校生

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 毎日どこかで人が不審死を遂げている。しかし、同じ年頃の人間が、同じような状態で、遠くもない場所で死んでいるとなれば、不自然さが生じる。
「またか」
 新聞を広げていたモトは、社会面に目を落としながらそう呟いた。
 セレが覗き込むと、そこには高校生の遺体が見つかったという記事が載っていた。
 最近この近辺で、高校生の遺体がちょくちょく見つかっている。どれも、ケンカかリンチの末という状態で、殴られたり刺されたり切られたりして死んでいた。
 そしてどの遺体も、どこかから運ばれて来て遺棄されていた。
「あれか。ハングレ集団とかの縄張り争いみたいな」
 リクがそう言うのに、セレはいやと首を振る。
「ここには、真面目とか書いてあるな。まあ、表面だけかも知れないけど」
「じゃあ、そういう集団に目を付けられて、殺されたとかかも知れんな」
 モトが言う。
 セレは時計を見て、
「あ、時間だ。行って来る」
とカバンを取り上げた。

 バス通りから校門前までは1本道で、登下校の時間帯は、ほぼこの学校の生徒ばかりが通行する事になる。
 セレはそんな生徒の群れに紛れて、歩いていた。
 と、そのセレの背中に声がかかる。
「梶浦!おっはよう!」
 クラスメイトの笠松が小走りで隣に並んだ。
 笠松茂留、通称ゲル。比較的セレと話をする間柄で、授業で2人組を作る時などは、大抵一緒になる。
「おはよう」
 しかし今日は、もう2人加わった。同じくクラスメイトの、桐原律子と佐藤琴美だ。2人共明るくてかわいく、女子にも男子にも友人が多い。
 その2人がセレの斜め前にいたのだが、笠松の声で、振り返ったのだ。
「梶浦君と笠松君。おはよう」
「おはよう。一緒に行こ」
 セレは気付いていて声をかけずにいたのだが、努力は無駄になり、やや目立ちながら4人で教室へ向かうことになった。
「また、高校生が死んだのね。りっちゃんのお姉さん、張り切ってるでしょ」
 琴美が笑いながら言う。
「え、何で?」
 セレと笠松はキョトンとして、琴美と律子を見た。
「私のお姉ちゃん、週刊誌の記者なの。フリーで、年中バタバタしてて」
 律子は苦笑する。
「へえ」
 セレは、心に生じた冷たいものを、表に出さないようにしながらそう言った。
「カッコいいじゃない!ねえ」
 琴美が言うのに、笠松はうんうんと頷く。
「記者かあ。俺だったら、自衛隊に密着取材したい」
 笠松はウットリしながらそう言った。
「ふうん。梶浦君だったら?」
 律子が訊くのに、セレは笑顔を浮べた。
「僕は……記者は向いてないかな。無理そうだよ」
「梶浦君って、何に興味があるの?」
 琴美がそう言えばという感じで訊く。
「まあ、本は好きかな。その程度」
「どんなジャンルの――」
 律子が重ねて訊いて来た時、もう1人が加わった。
「あれ。桐原さんと佐藤さん。と、梶浦と笠松か。おはよう」
 前半と後半で、声の感じが全く違う。
 クラスメイトの坂上学人だ。
「そうだ。高校生がまた死体で見つかっただろ」
 どこか弾んだ声で言う。
「あれ、知り合いなんだよね。びっくりしたよ」
 それに、セレ以外はあからさまに食いついた。
「ええ!?どんな子?」
「陰でヤバイ事をしてたとか?」
「それとも虐められてた方とか?」
 勢い込んで律子、琴美、笠松が訊き、周囲もさり気なく聞き耳を立てる。
「中学が一緒で、塾も一緒なんだ。両親と兄貴が医者で、殺された山田も医者にならないといけないって言ってたな。
 成績は良かったよ。真面目で神経質で、ボッチ。でも、第一志望の高校に落ちて、いつも焦ってたなあ。
 それと、変にケチなんだぜ。塾で、テスト前とかにミントタブレットを舐めてるんだ。1個くれって言ったら、もの凄い勢いで断るんだ、引くくらいに。
 ミント、1個だぞ?1ケースじゃなく」
(それにこだわるお前もどうなんだ)
 全員が奇しくもそう思ったが、空気を読んでそれは口にはしなかった。
「ふうん。何か、特別だったとか?」
 律子が言うと、琴美が即反論する。
「特別って何?神棚にお供えしたとか?」
「そ、そうかもよ?」
 律子も、自分でも思っていない感じで苦しそうに答える。
「まあ、変な奴だな」
 笠松がそう簡単に言って、それで坂上は我が意を得たりという顔付きで何度も
「そうだろ、そう思うよな」
と言った。
 セレは何でも無い顔でそれを聞きながら、
(特別か……)
と考えていた。
 この件に関わる事になるのが知らされるのは今夜の事になるのだが、この時はまだ、無関係の事件として捉えていたのだった。







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