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真犯人(2)拉致監禁

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 管理官はその報告に考え込んだ。刑事の1人が、昔の捜査の時に気になった男子生徒がいたと言ったのだ。その生徒は被害者のクラスメイトで、事件の後渡米していたが、今回事件が再開される少し前に戻って来ていた事がわかったのだ。
「タイミングは合うな。
 よし。そいつを調べろ」
 捜査方針を間違えると、事件解決が遅れたり、未解決になったりする。だから舵取りは重大だ。しかしこの報告は、行き詰まった現在、唯一の新しい光に思えた。

 刑事は堀迫の家に向かっていた。
「でも、当時は被害者と同じ高校生でしょ?これほどの事件を引き起こしますか?グレていたとかじゃないんですよね」
 若い方が言うと、先輩の刑事が真面目な顔で答える。
「一見真面目だとか大人しいやつが大事件を引き起こすのなんて珍しくもねえだろ」
「まあ、そうですけど」
 言いながら、住所を頼りに家へ向かう。
 と、車が一台横を通り過ぎた。
 白のセダンで、後部席では若い女性が窓に寄りかかるようにして眠っているように見えた。そして運転席には、若い男が笑みを浮かべて乗っているのが見えた。
「チェッ。いいねえ、全く」
「妬くな、妬くな」
「この事件が片付いたら、絶対に合コンに行ってやる」
「合コンって、お前なぁ。まあいいか」
 刑事コンビが歩き出したが、偶然見た今の車が、堀迫と拉致された律子だとは、全く予想だにしていなかった。

 セレが家に走って戻ると、リクもモトもパソコンの前にいた。
「お帰り。
 その男の出て行った方向はわかったぜ」
 駐車場の防犯カメラから、セレに話しかけて来た男が駐車場に停めていた白いセダンに乗って出て行った事を突き止め、あとは付近のカメラを覗いて進んで行った道を辿り、自転車に乗っていた律子の横に停まって何か訊くフリをしてスタンガンを押し付けて律子を拉致したのを確認した。
「律子ちゃんを拉致した後を追っかけてるところだ」
 モトが難しい顔でそう言う。
「まだ走ってるから、先に買い物を片付けておいて」
 リクにのんびりと言われ、セレはそれもそうかと買い物して来たものを片付けた。
 と、リクが呼んで、リクの部屋へ戻る。
「止まったぞ。この家だな」
 住宅街の端にある家で、敷地は広い。そして周囲は雑木林と広い更地になっていた。
「薬師に言って、上手く救出してもらおう」
 パトロールでも何でも、上手い言い訳をつけるだろう。
 そう言ってモトが薬師に電話を入れようとした時、セレの電話が鳴り出した。
「桐原さんだ」
 すなわち、恐らく犯人からだ。
『あ、梶浦君?』
「さっきの男だ」
 セレは口だけでそうリクとモトに言った。
「そうだけど。桐原さんの電話ですよね」
『彼女は今、家で寝てるんだよ。それで、君にも来てもらいたいなと思って』
「ええっと、どうしてですか」
『傲慢な女子高生に裁きを下すんだ。君もそれをする権利があるだろう?』
 セレ達はスピーカーでそれを聞いていたが、3人共眉をひそめた。
「何を言っているのか、よくわからないな」
『来てくれればいいよ。わかるから。君には見てもらいたい。いや、見なくてはいけないんだよ。君が梶浦真之の息子である限り』
 と、電話の向こうで、律子の声が割り込んだ。
『危ないから!来ないで!』
 続いて、頬でも打つような音と、短い悲鳴が聞こえる。
『これから言う所に10分以内に来てくれないかな。警察が来たり君が来なかった時には、さっさと殺すから』
 それで場所を告げて、電話は切れた。
「10分?自転車でギリギリかよ」
 モトがそう言って舌打ちする。
「行って来るから、連絡を入れておいて」
 セレはそう言いおいて家を出た。

 律子はスタンガンを押し付けられたところが火傷で痛かったが、今は殴られた頬が痛く、火傷は気にならなくなった。
 道がわからないと言ってメモを見せられたので覗き込んだのだが、まさか拉致されるとは思っていなかった。
 単純に拉致されたというのは怖い。ただそれ以上に、「裁き」「梶浦真之の息子」などという単語が出て来て、別の怖さもあった。
 この男は、連続女子高生拷問殺人事件の真犯人ではないのか、と。

 


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