銀の花と銀の月

JUN

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探索者協会

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 セレムの探索者協会は、帝都よりも賑やかだ。何せ、迷宮に一番近い。
 迷宮。魔素が濃く、常識の通用しない場所だ。植物も動物も、普通の物とは大きさや生態、行動が違う。中にはおとぎ話に出て来そうな化け物もいる。その上中に入ると、奥行きや上下の階層など、見た目以上に広くなっているし、時間によって明るくなったり暗くなったりもしたり、空があったりもする。気候が激変する場所も珍しくもない。
 しかも、死んだ魔物は放っておくといつの間にか消えて無くなってしまうし、狩ったはずの魔物も、時間が立てば復活して来る。
 どうせ復活するならと放っておくと、魔物が増えて外まで溢れ出す事になる。
 探索者とは、そんな迷宮に入って魔物を狩ったり、植物を採取したり、鉱石を採ったりし、また、迷宮の外で魔素を浴びて魔物になったはぐれの魔物を狩ったりする仕事をする者だ。
「はい、探索者免許証をお預かりします。ユーリ・セレムさん、カイ・レントさん、ジン・ホランドさんですね。
 え?それって、ドラゴンの卵を帝都に持ち込もうとした!?」
 受付係の職員の声が響き渡り、騒がしかったロビーがシンと静まり返った。
 ついで、騒がしくなる。
「何!?あのバカ共か!?」
「どんな顔してやがるんだ」
「ここでおかしな事をしでかすんじゃねえだろうな」
「おいおいおい。勘弁してくれよ」
 そんな声が、四方八方から湧き上がるのに、ユーリ達は憮然とし、受付の職員は目を吊り上げた。
「常識を疑います」
「いや、俺達は冤罪なんだけど」
「反省しているんですか」
「聞いてないよ、このお姉さん」
 ジンが困ったように言い、ユーリが嘆息し、カイが不機嫌そうに腕を組む。
 と、カウンターの奥にいた先輩職員がカウンターまで出てきて、受付係の隣で頭を下げた。
「申し訳ございません」
「先輩?何で謝るんですか」
「あなたが、明かしてはいけないのに、ここで個人情報を大声で明かしたからよ」
 受付係は、ムッとしたように口を尖らせる。
「でも、誰でも知ってる事件じゃないですかぁ」
「それでもよ」
 職員同士が言い合いを始め、ロビーにいた探索者達は、ユーリ達をジロジロと眺めて互いに言い合う。
「冤罪?」
「調査されて、有罪だったから追放になったんだろ」
「あんなひよっこだったのか」
「ドラゴンから卵を盗み出そうとか考えるようなアホ、探索者なんてやめちまえ。やりたきゃ、魔の森で暮らせ」
 その中から、同年代の男がユーリの近くに進み出た。
「ユーリじぇねえか。天才魔術師とか言われてたのに、ざまあねえな」
 ユーリは相手をよく見た。
「……」
「……」
「……」
「俺だよ!トニー!」
「ああ!」
 子供の頃はよく一緒に遊んだものだとユーリは思い出した。
「そう言えば面影があるな。ここんところのハゲ、転んでけがした時のやつだよな」
 それに、何人かがこそこそと言う。
「え。グレーファングベアに襲われた時に付いたんじゃないの?」
「グレイトウルフから受けたって聞いたわよ?」
 それで数人が忍び笑いをし、トニーは慌てた。
「こ、これは、名誉の負傷だ!」
 ユーリとカイとジンは、
「うんそうだね」
と慈愛の笑顔を浮べた。
「それよりユーリ、探索者ならドラゴンの卵を持ち帰るなんてしねえだろ。向いてねえんじゃねえの?」
 それにカイが怒って前に出る。
「だから、俺達じゃねえって言ってるだろうが。耳悪いのかてめえ」
「なんだと、この野郎」
 カイとトニーが揉めだすが、ケンカはご法度だ。手を出さず、肩をぶつけ合って威嚇するのみだ。
「へっ。大人しく銀花楼で客でもとってればいいんじゃねえの?」
 それに、周囲の者は乗った。
「銀花楼の?」
「ああ、聞いた事がある。禿になる前に魔術の才能がわかって、帝都に行ったやつがいるって」
「こいつか」
「へえ。見かけはいいな。ちょっと愛想が足りねえけど」
 ジンが怯えたようにユーリにくっつき、カイはトニーの襟元に掴みかかった。
「カイ」
 ユーリはカイを止めて、トニーの前に出た。
「構って欲しいのか、トニーちゃんよ」
「なっ!」
「悪い。魔術か魔道具にしか興味ないわ」
 それにゲラゲラと周囲は笑い出し、トニーは顔を赤くしてユーリを睨む。
 先輩職員は溜め息を付き、新人はユーリ達を睨みつけた。
 その奥では、ほかの職員達が溜め息をついたり、オロオロとしながらその騒ぎを見ていた。
「申し訳ございません。チーム『銀月』、登録させていただきました」
 先輩職員はそう言って免許証を返しながら、深々と頭を下げた。
 それを受け取りながら、ユーリ達は溜め息をついた。
「くそう。ナジムの野郎」
「なあ。俺は無理だけど、カイとジンはよそへ行ってもいいんだぞ」
「一緒にやろうよ。ね」
「ああ。逃げるのは性に合わねえしな。いつかギャフンと言わせてやろうぜ」
 騒がしくなりそうだと、誰もが思った。



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