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それぞれの時間
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時計をひっきりなしに見て、軽く溜め息をつく。
「どうでしょうかねえ」
カリムの独り言に、銀花楼へ来ているニキータが嘆息する。
「竿やリール、ルアーに不具合は起きてないでしょうか」
ミリアも祈る。
「今回釣れたら一生ボウズでもいいから、神様!」
そして、またも時計を確認する。
「しかし、見世だしの準備も進めておく必要があるかも知れないですね。部屋や調度品、身に着けるもの。まあ、作法やらは詰め込みになりますが。
ほかの見世の楼主からも、ユーリを見世だしさせるべきだと言われているんですよ」
「くそ!ドラゴンの卵の時にも罪を擦り付けて来た相手ですよ。客として、何をするつもりかわかったもんじゃない」
ニキータはそう言って拳を白くなるほど握りしめた。
時計を見て、ナジムは機嫌よく足を組んだ。
透明アンコウがどのくらい幻扱いなのかは知っている。そしてどうにか吊り上げたとしても、透明なまま持って帰るには、生かしたまま運ぶしかない。その為に、大抵は水槽を準備して、そこで泳がせて運ぶのだ。
重いし、運ぶ間にも魔物が襲って来るだろうし、人数もかかるし、時間もかかる。
到底1週間で3人でできるとは思えない。
「このわたしに生意気な態度をとった罰だ。フン。
ああ、何をさせてやろう。
そうだ。世話になった部下をねぎらうのも上司の務めだ。部下を連れて行って、相手をしてもらおうじゃないか。それに、先輩も忘れてはいけないよな。あいさつ代わりだ。先輩方の世話もしてもらおうか。
さあ。どこで、何人でギブアップするかな。休暇って、こんなに待ち遠しいものなんだな」
ナジムは笑顔を浮べながら、休暇に誘う人間の選定を始めた。
副団長は、ナジムのやりたい放題の態度とそれを咎めない団長に頭を悩ませていた。
団員達は皆、ナジムと団長に呆れているが、文句を言えないので、フラストレーションを溜めている。もし今何かあったら、団長の命令に従うかどうか疑問を感じるほどだし、間違いなく士気は落ちている。
遠征訓練でも、ナジム達は気が向いた時だけ訓練に参加しただけで、何もしていない。それでは困ると言ったのだが、団長に口を出すなと命令され、それ以上は苦言を呈する事ができなかった。
「このままでは、団はダメになる」
副団長は溜め息をついて、遠征訓練についての報告書をまとめ始めた。
ジンの針に何かがかかった。
「来たよ!これは、大きい、巻けないよぉ!」
リールを巻こうにも負けず、糸がジイジイと音を立てて出て行く。
「大物だな!今度こそいけたかも!」
「ジン、竿を立てろ!」
「た、立てられないんだよお」
暴れて引く獲物に竿が引かれ、体ごと前へ引き込まれそうになる。
カイとユーリは、そんなジンを支え、竿に手を添える。
「糸が出て行く時はそのままでいいからな。無理したら糸が切れる。フッと弱まる時に巻けよ、ジン」
「わ、わかったよ」
カイはこの中で1番釣りの経験があったのだ。
そのカイの助言に従って、竿を保持し、余裕ができた時に巻き、また魚が暴れて糸が出る。それを繰り返しながらも、少しずつ、少しずつ、魚が近付いて来ている。
「竿尻は腹に付けて、竿はなるべく立てたまま。それで、絶対に糸を緩めるなよ」
「う、うん」
焦りと期待とで時間の感覚がない。糸が切れないように、針が外れないように、これが透明アンコウでありますようにと、祈りながらリールを巻き、魚を引き寄せる。
「あと11メートル」
いい加減腕も疲れ切っているが、泣き言を言う暇も余裕もない。
「あと9メートル」
今はどの魔物も出て来ておらず、邪魔されないだけでもありがたいと思う。
「あと6メートル」
このフロアは薄暗く、ほかに誰もいないので、不思議な感じがする。
「あと4メートル」
少し魚の抵抗が弱まり、軽くなる。カイは竿から手を離して、子供が3人入れそうなタモを手にした。
「慌てるな、ゆっくりでいいぜ」
水面に影が映る。薄いオレンジ色が見えた。
カイは水面にやっと顔を出したその魚を、頭の方からタモに入れ、陸上に引っ張り上げた。
「重っ!ビッグサイズのシマハタだ。高級魚だぜ」
カイはそう言って腕をもみ、1メートルを超すその魚を眺めた。
「絞めてバッグに入れておくぜ」
「ああ。さあて。そろそろ透明アンコウの顔が見られるかな」
ユーリはそう言って、竿を手にし、ルアーを投げた。
「どうでしょうかねえ」
カリムの独り言に、銀花楼へ来ているニキータが嘆息する。
「竿やリール、ルアーに不具合は起きてないでしょうか」
ミリアも祈る。
「今回釣れたら一生ボウズでもいいから、神様!」
そして、またも時計を確認する。
「しかし、見世だしの準備も進めておく必要があるかも知れないですね。部屋や調度品、身に着けるもの。まあ、作法やらは詰め込みになりますが。
ほかの見世の楼主からも、ユーリを見世だしさせるべきだと言われているんですよ」
「くそ!ドラゴンの卵の時にも罪を擦り付けて来た相手ですよ。客として、何をするつもりかわかったもんじゃない」
ニキータはそう言って拳を白くなるほど握りしめた。
時計を見て、ナジムは機嫌よく足を組んだ。
透明アンコウがどのくらい幻扱いなのかは知っている。そしてどうにか吊り上げたとしても、透明なまま持って帰るには、生かしたまま運ぶしかない。その為に、大抵は水槽を準備して、そこで泳がせて運ぶのだ。
重いし、運ぶ間にも魔物が襲って来るだろうし、人数もかかるし、時間もかかる。
到底1週間で3人でできるとは思えない。
「このわたしに生意気な態度をとった罰だ。フン。
ああ、何をさせてやろう。
そうだ。世話になった部下をねぎらうのも上司の務めだ。部下を連れて行って、相手をしてもらおうじゃないか。それに、先輩も忘れてはいけないよな。あいさつ代わりだ。先輩方の世話もしてもらおうか。
さあ。どこで、何人でギブアップするかな。休暇って、こんなに待ち遠しいものなんだな」
ナジムは笑顔を浮べながら、休暇に誘う人間の選定を始めた。
副団長は、ナジムのやりたい放題の態度とそれを咎めない団長に頭を悩ませていた。
団員達は皆、ナジムと団長に呆れているが、文句を言えないので、フラストレーションを溜めている。もし今何かあったら、団長の命令に従うかどうか疑問を感じるほどだし、間違いなく士気は落ちている。
遠征訓練でも、ナジム達は気が向いた時だけ訓練に参加しただけで、何もしていない。それでは困ると言ったのだが、団長に口を出すなと命令され、それ以上は苦言を呈する事ができなかった。
「このままでは、団はダメになる」
副団長は溜め息をついて、遠征訓練についての報告書をまとめ始めた。
ジンの針に何かがかかった。
「来たよ!これは、大きい、巻けないよぉ!」
リールを巻こうにも負けず、糸がジイジイと音を立てて出て行く。
「大物だな!今度こそいけたかも!」
「ジン、竿を立てろ!」
「た、立てられないんだよお」
暴れて引く獲物に竿が引かれ、体ごと前へ引き込まれそうになる。
カイとユーリは、そんなジンを支え、竿に手を添える。
「糸が出て行く時はそのままでいいからな。無理したら糸が切れる。フッと弱まる時に巻けよ、ジン」
「わ、わかったよ」
カイはこの中で1番釣りの経験があったのだ。
そのカイの助言に従って、竿を保持し、余裕ができた時に巻き、また魚が暴れて糸が出る。それを繰り返しながらも、少しずつ、少しずつ、魚が近付いて来ている。
「竿尻は腹に付けて、竿はなるべく立てたまま。それで、絶対に糸を緩めるなよ」
「う、うん」
焦りと期待とで時間の感覚がない。糸が切れないように、針が外れないように、これが透明アンコウでありますようにと、祈りながらリールを巻き、魚を引き寄せる。
「あと11メートル」
いい加減腕も疲れ切っているが、泣き言を言う暇も余裕もない。
「あと9メートル」
今はどの魔物も出て来ておらず、邪魔されないだけでもありがたいと思う。
「あと6メートル」
このフロアは薄暗く、ほかに誰もいないので、不思議な感じがする。
「あと4メートル」
少し魚の抵抗が弱まり、軽くなる。カイは竿から手を離して、子供が3人入れそうなタモを手にした。
「慌てるな、ゆっくりでいいぜ」
水面に影が映る。薄いオレンジ色が見えた。
カイは水面にやっと顔を出したその魚を、頭の方からタモに入れ、陸上に引っ張り上げた。
「重っ!ビッグサイズのシマハタだ。高級魚だぜ」
カイはそう言って腕をもみ、1メートルを超すその魚を眺めた。
「絞めてバッグに入れておくぜ」
「ああ。さあて。そろそろ透明アンコウの顔が見られるかな」
ユーリはそう言って、竿を手にし、ルアーを投げた。
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