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第一章~子供扱編~
017 キスの習慣
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私と黒将軍フェルディナン・クロスとの半同棲生活が始まってから早二ヶ月が立とうとしていた。この二か月間、軍務に勤しむフェルディナンに警護してもらいながら、私は必死に正規のルート以外で元の世界へ帰る方法を探していた。
軍の最高位、将軍職のそれも多忙なフェルディナンが何故私の警護に当たっているかというと――私が外出する際最初の内はフェルディナンが管轄している黒衣の軍の中から適切な人を数人選んで護衛を付けていたのだがそれは始めだけだった。
必死に元の世界に帰る方法を探して不慣れな世界をフラフラと幼子のように歩き回る私がフェルディナンにはとても危なっかしく見えていたのかもしれない。
――そしてついには一人で男娼館とは知らずにグレーローズに突っ込んで行ったのが不味かった。知らず知らずのうちに無防備な状態で危険地帯に踏み込んだ私を見かねて、最終的には黒将軍の異名を持つこの国最強の将軍自らが護衛を買って出るという異例の事態になってしまったのだった。
「それにしても問題は正規のルート以外で元の世界に帰る方法なんだよね……」
不安に思わずポツリと呟いてしまう。
この乙女ゲーム世界で唯一、元の世界へ帰還出来るルートに到達する為の条件は攻略対象キャラの誰かと結ばれて、結婚し女の子を産むこと。
つまり、《攻略対象キャラと結婚して女の子を出産》が必須条件となる。
――そしてその必須条件をクリアした後には更に過酷な現実が待ち受けている。
条件クリア後、用意されているルートは以下の二パターン。
ちなみに主人公は①と②、そのどちらも自由に選ぶことができる。
① バッドエンド――悲哀ルート。『元の世界に帰る』を選択。
元の世界に帰る為に、自分が産んだ女の子を自身の身代わりとして置いていくことで元の世界に戻れるパターン。攻略対象キャラの夫と子供を残して帰還。
② ハッピーエンド――情愛ルート。『元の世界に帰らない』を選択。
乙女ゲーム世界で女の子を産んだ後も元の世界に帰ること無く、表面上は攻略対象キャラの旦那様と子供と一緒に末永く仲良く暮らすことになる。
が、心理的には旦那様とそして自分が産んだ子供を置いて元の世界へ帰還することを選べず愛よりも情が先に働いてしまった結果であり、半ば強制的に乙女ゲーム世界に残された状態。本当にハッピーエンドなのかと疑いたくなる要素が満載。
この乙女ゲームでは”元の世界に帰れるルートが一つしかない”。
それも①の悲哀ルートと呼ばれるバッドエンドのみ。
そして②のハッピーエンドもハッピーエンドらしからぬ終わり方。
「何なのこの乙女ゲーム世界はっ!? エンドが全部酷いのしかというか煮え切らない中途半端な後味悪いものしか無いんですけどっ!?」
と言っても、この『女の子を産まないと帰れない!?~乙女ゲームの世界に転移しちゃいました~』略してプレイヤーの間では「のをない」(女の子を産まないと帰れないの略)と呼ばれている乙女ゲームは、18禁のゲーム恋愛部門で売上1位を獲得した超人気ゲームだ。困ったことに。
「そういえば確か他のルートはもっと中途半端なエンドだったっけ。お友達でいましょうとか攻略対象キャラ死亡とか、はたまた主人公が他の攻略対象キャラと浮気して修羅場に……うわぁ~……最悪……」
――もし目指すならこのバットエンドの悲哀ルートで帰還しかない。
でも私はそのルート以外の方法を探していた。出来るなら正規の悲哀ルートによって元の世界に帰る以外の帰還方法でお願いしたい。が、一向にそんな方法は見つからず。私は焦りと失望に落胆の思いを隠せないでいた。
「貞操守りつつ、攻略対象キャラと親密にもならず正規の悲哀ルート以外で元の世界に帰る、か……」
もしも見つからない場合は悲哀ルートを攻略出来る様に動くしかない。――ってどうやってっ!? やり方なんて分からないんですけど……
「もしかして、正規の悲哀ルート以外の帰還方法が見つからなかったら……そもそも悲哀ルートを攻略出来るかも不安なんですけど!? もし別の中途半端なルートに入っちゃったりしたらそれこそ目も当てられないじゃない……というか最早今自分がどの位の位置にいるのかそれすら分からない――だから神様は私に自由に行動していいって言ったのかな? 神様は私のことを破壊者って言ってたけどもしかして……」
――私の行動が原因でこの正規ルート自体がもう破綻しているとしたら?
不安が不安を呼んで酷い妄想に取りつかれそうになるので、私は悲哀ルートについてはなるべく考えないようにしていたのだがどうしても気になって仕方がない。
「はぁー、どうしてこんな事になっちゃったんだろう……。それにしても毎日毎日、こんなに頑張っているのになんで見つからないのよ! 帰る方法――ッ!」
ガックリと首を垂れて、思わず私は絶叫した。
悲哀ルート以外の元の世界に帰る方法を探す。と言っても実際は町で聞き込みを繰り返すだけで他に有益な方法も見つからず、立往生しているような状態だった。
「――落ち着け月瑠」
その私の絶叫を聞きつけたフェルディナンがいつの間にか後方に立っていた。
「だって、フェルディナンさん……私まだ16歳だし! 結婚とか出産とか本当に無理なんですけど!?」
後方のフェルディナンに涙目で振り返ると、私は必死な表情で唇を尖らせて訴えた。
「そうだな。月瑠の気持ちは分かっているよ。だから少し落ち着け」
困った様な顔をしてフェルディナンは子供をあやすように、私の頭をポンポンと軽く叩いて慰めた。フェルディナンの青い紫混じった瞳に優しく見られて、私は思わず視線を外してしまった。
ドキドキしているのを知られたくない――
私が今いる場所はフェルディナンが所有している屋敷だった。もう二ヶ月も立つというのにどうにも落ち着かないというか慣れない。それというのもこの屋敷が余りにも現実離れし過ぎているからだろう。
フェルディナンはこの国の将軍という立場で、住む場所はその身分にあった――相応の立派な屋敷だった。それもこの国で五本の指に入る程の立派な造りをしていて広大な面積の敷地の中に建てられている。あまりにも華やかな造りは屋敷というよりも豪邸という表現の方が正しいのかもしれないが、どうにも言い慣れないので屋敷と言うことにする。
そしてそこは元の世界で言うところの屋敷まで車で移動しないと辿り着くのに時間が掛かる――というのをそのまま体験しているような環境で。事実、門から屋敷まで馬車での移動を余儀なくされている。まあ、たまに運動がてら歩くこともあるにはあるのだが。
その屋敷の一室を貸し与えられて私はこの乙女ゲーム世界で生活していた。そして私は今その貸し与えられた部屋の机に突っ伏していた。
私はフェルディナンの大人の魅力にやられっぱなしで、心拍数が上がってドキドキしている心臓を何とか落ち着かせようと、目前の机に突っ伏して両腕を伸ばしうーんと伸びをした。伸びをした両腕に絡む華奢なつくりの西洋風ドレスの袖がひらひらと儚げに揺れて視界に入って来る。
今の私の恰好はこの乙女ゲーム世界に来た時に着ていた制服ではなく、フェルディナンに用意してもらった西洋風のドレスを着ている。綺麗で繊細な模様のあしらわれたレースやひらひらのフリルが付いた綺麗な衣装。フェルディナンは将軍ということもあってその有り余る財力で取り揃えられた西洋風の衣装はどれも豪華で高価なものしかない。
女がいない世界ではそこいらで女物の服が売っている訳もなく。フェルディナンによって揃えられた衣装は全て特注品となる。一介の高校生には余りにも分不相応な豪華な衣装を着ていると本物のお姫様にでもなった気分になる。
といっても何時も西洋風のドレスを着ている訳ではない。西洋風のドレスだと何かと動きにくくて不便なので、気軽に屋敷内を散策する程度ならむしろ制服を着ていた方が身軽でいい。その時と場合で私は制服と西洋風のドレスは着分けることにしていた。
――まあ、どちらを着るにしてもまだ西洋風のドレスの方が幾分かましというだけで、この世界では私が女である以上目立つという事に変わりはない。外套を着てフードを目深に被らなければ外出もままならないのはどちらも一緒だ。
そう言う訳で、今私が西洋風のドレスを着ているのは、本日既に情報収集の為の外出を済ませて帰ってきたからなのだが……
「異邦人の私を此処に置いてくれて、その上フェルディナンさんの傍にいることを許してくれて本当に感謝してます。でも少しも成果がないなんて何だか申し訳なくて……」
申し訳なさ過ぎて声に力が入らない。憔悴したように小声で話す私の様子を見て少し心配したのか、フェルディナンは頭に置いた手をそのままに膝を曲げて姿勢を低くすると目線を机に突っ伏している私に合わせてくれた。
「気にすることはない。そう簡単に見つかるものではないからな。ゆっくり探せばいいさ」
そう言ってフェルディナンはとても45歳とは思えない端正な美貌に優しい笑みを浮かべた。眉尻にある戦闘で受けたと思われる大きな古傷すらも格好良く見えてしまう程の美丈夫。
彼は大柄の体躯に強靭な鋼の筋肉を持つ、金髪碧眼の誉れ高い将軍で、漆黒のマントを背中に黒と金を基調とした鎧で身を包んだ姿は誰もが圧倒される。
フェルディナンは”黒将軍”と呼ばれるこの国最強の将軍だ。
今私の頭に乗せられている武骨な男の手には、眉尻の傷と同様の戦いによる古傷が幾つか刻まれている。その大きくて暖かくてがっしりした手を、やっぱり好きだなぁーと頭にその手が乗る度についつい私は思ってしまう。
「……フェルディナンさん――何だかお姉ちゃんみたい」
「月瑠には姉がいるのか?」
「はい、誄歌って名前なんですけど私とは5つ離れていて……だからかな? 面倒見がすごくよくて優しくて、仲の良い姉妹だっていつも言われてて――フェルディナンさんは初めて会った時ちょっと怖かったけど本当はお姉ちゃんみたいに面倒見がよくて優しい人だって分かったから何となくその、……思い出してしまって」
お姉ちゃんを思い出すと、元の世界に帰りたい思いが一層強くなる。少し目に涙が滲みそうになった。
「……そうか」
「そうすると、フェルディナンさんはお姉ちゃんじゃなくって――お兄ちゃんかな? それともお兄様?」
「月瑠が私の妹か……年齢的には子供でもおかしくはないな」
フェルディナンの言葉に私はうーんと頭を悩ませた。フェルディナンの子供……と言うのはどうしてかしっくりこなくて、私は眉間に皺を寄せながら複雑な顔をしてしまう。
「フェルディナンさんの子供――やっぱり妹の方がいいかな」
「……それを月瑠が望むのなら私は何方でもかまわないが」
子供でも妹でも大して変わりはないと言うようにフェルディナンは苦笑してまた私の頭をポンポンと軽く叩いた。どう考えてもフェルディナンは私を子供扱いしているようにしか思えない。
乙女ゲーム世界に転移して三日目の真夜中。部屋を訪ねて来たフェルディナンに押し倒されて、半ばけんか腰に反論していたら無理やりキスをされて――あの日以来、一度もフェルディナンは私に手を出そうとはしなかった。それどころかすっかり子供扱いに戻っている。
やっぱりそうなんだよね……
って私は何を考えているんだろう。好きになったらダメなんだってばっ! 好きになってそのまま流されてしまったらきっと元の世界に帰れなくなる。……帰りたいけれど帰れなくなる。
正にそれって乙女ゲーム世界の主人公と同じ情愛ルートそのもののような気がした。最も今の段階では情が先なのかそれとも愛が先なのか、気持ちが複雑過ぎてどちらに比重が傾いているのか判断できない。
だからフェルディナンが子供扱いしてくれることは願ったり叶ったりなのに、それが寂しかったり恋しかったりするなんて――矛盾してる。
段々と抑えられなくなっている自分の心に正直目眩がする。
――私、フェルディナンさんのこと諦めるしかないんだよね。
そう思った時、胸にツキンと痛みが走ったような気がして思わず口から声が漏れてしまった。
「――えっ?」
「……? 月瑠?」
私の異変を敏感に察知したのか、フェルディナンが顔を覘き込んできた。
「えっと、……何でもないです」
「そうか」
この乙女ゲーム世界に来てからの二ヶ月の間で、私とフェルディナンとの間には奇妙な親子関係のような絆が結ばれていた。
それというのも、フェルディナンは私が外に出る時は何時も近くにいて片時も傍を離れず、私の護衛をしながら黙々と仕事を熟す風景が黒衣の軍の中でも日常的になりつつある位に互いの距離感が非常に近かったせいもある。
その位近くに何時もいるせいなのか、普段の行動が危なっかしく映るのか、どうやら私はフェルディナンの保護欲を相当に掻き立ててしまったようだ。今となっては雛を守る親鳥のようにフェルディナンは私が外出する時は絶対に私の傍を離れようとしないし、屋敷内にいる時もそれぞれの部屋で過ごせばいい筈なのに何故か最終的には一緒に過ごしていることが多かった。
将軍という地位に付いているフェルディナンは戦いの現場へ赴く事が多いのだが、そんなフェルディナンの傍でちょこまかと動き回る私を鬱陶しがらずに、粗雑に扱う事もなくフェルディナンは私の好きなようにさせてくれた。母性本能の代わりとでもいうべきなのだろうか、女がいない男しかいない世界だから男性も頗る優しい人が多い気がする。
そう言った訳で一緒にいる時間が長い分、私達はかなり打ち解けあって仲良くなっていた。
それにしてもフェルディナンは私を甘やかすことに長けていると私は常々感じていた。ちなみに私がそう思う理由の一つがこれだ。
「そう言えば、心配させまくっている自覚はあるのですが……私の部屋の隣に一時的にとはいえ引っ越してくるのは、いかがなものかと思うのですが……?」
どうしてフェルディナンが先程の私の絶叫に即座に反応できたのかというとそういう訳だった。
暗にやりすぎだと示唆しているのだが、フェルディナンは聞き入れてはくれない。本来、フェルディナンが使用している部屋は屋敷の中でも一番広く立派な部屋だ。屋敷の中心部に位置するその部屋から出て、別の部屋に引っ越してくるなど普通ならありえない行為だった。
「自覚があるのならば、少しは自制してもらいたいものだがな」
私の指摘をさらっと流すとフェルディナンは立ち上がって扉の方へすっと視線を向けた。
「もしかしてこれから外出するんですか?」
「ああ、少し市街地を視察に回るんだ。月瑠は此処で待っていてくれ」
「市街地の視察? 何かあったんですか?」
「最近、一部の地区の治安が悪化している。主に強盗や物取りといった小物の類なんだが放置するわけにもいかない。一時的な事だとは思うのだが念のための視察だ」
「ふーん……私も行きた――」
「だめだ」
私が皆まで言う前にフェルディナンが低い制止の声を上げた。それも少し怖い顔できっぱりと告げるフェルディナンに私は構わず聞き返した。
「えーっと、何でですか?」
「危険だからだ」
彼に慣れていない人ならその迫力に物怖じしそうなところなのだが、私はこの二ヶ月の間で大分フェルディナンに慣れてきたこともあって、多少のことなら何ともない位に受け止められるようになっていた。
それに何よりフェルディナンはとにかく私に甘い。年齢差のせいなのか子供としか思っていないせいなのか、それとも私が異邦人だからなのか。理由は分からないけれど私はそれに付け込んでいた――つまり私はフェルディナンに思いっ切り甘えきってしまっていた。
それをフェルディナンが嫌な顔一つせずに笑って受け止めて、許してくれるから私もついつい際限なく甘えてしまうという。甘える甘えさせるを永遠と繰り返す。所謂甘えの連鎖がここ最近の私とフェルディナンの間には発生していた。
お願いですから甘えるの少しは止めようとしてくれませんか?
なんて自分勝手なことを心の中で思ったものの、その心地よさにどっぷりつかって最早抜け出すことが出来ないところまで来てしまっていた。
「えっ? でも何時もは小競り合いになりそうな場所にも付いて行ってましたし、今回は視察なんですよね? だったら……」
「今回はだめだ」
「どうしてもですか?」
「ああ」
「…………」
私は無言でジーとフェルディナンを見つめて不満だと訴えた。
するとやがて根負けしたようにフェルディナンが硬い表情を崩した。困った顔で眉を半ば顰めながら紫混じる青い宝石のように綺麗な瞳を向けてくる。
「……月瑠、頼むから聞き分けてくれないか?」
そう言ってフェルディナンは私の額にそっと口づけてきた。
「……っ! ――フェルディナンさん前から思ってたんですけど……」
「?」
「どうしてそう何かある度に額にキスしてくるんですかっ!? ……もしかしてこの世界では額にキスするのは挨拶と一緒なんですか? あっ! それともそういうキスの習慣でもあるのでしょうか? ということは私も誰かに会った時にした方がいいのでしょうか?」
「……私もそんな習慣は聞いたことがない。それとそんなことは誰かに会った時も絶対にしなくていい」
何故だか”絶対にしなくていい”の部分に強い意志を感じて少し戸惑ってしまう。
「そ、そうなんですか? だってフェルディナンさん余りにもその、手慣れている感じがして……」
私の言葉を聞いてフェルディナンは無言で静かに頭を押さえた。
「……勘違いされても困る。私がこんなことをするのは月瑠しかいないんだが」
「それって私のこと完全に子供扱いしてますよね?」
むーっと頬を膨らませて怒った顔をしていると、フェルディナンは頭を押さえていた手をどけて、代わりにその手を私の膨らんでいる頬に添えてきた。
「――月瑠」
「はい」
「とにかく月瑠は此処にいてくれ。いいな?」
「…………」
膨れっ面のまま一向に返事をしない私に、フェルディナンは仕方ないなという顔をして私のおでこに自身のおでこをコツンと当てた。
「月瑠、約束だ。早く帰って来るから。だから君は此処にいてくれ。絶対に屋敷から抜け出したり付いて来ようとはするな。いいな?」
「……はい」
返事を返しつつも不満たらたらですと構ってもらえず剥れていじけている子猫のような視線をフェルディナンに送ると、彼は苦笑してもう一度子供をあやす体で私の額に口づけた。そしてその紫混じった青い瞳を細めて目だけで再度私に付いて来るなと警告すると漆黒のマントを翻し部屋を出て行ってしまった。
軍の最高位、将軍職のそれも多忙なフェルディナンが何故私の警護に当たっているかというと――私が外出する際最初の内はフェルディナンが管轄している黒衣の軍の中から適切な人を数人選んで護衛を付けていたのだがそれは始めだけだった。
必死に元の世界に帰る方法を探して不慣れな世界をフラフラと幼子のように歩き回る私がフェルディナンにはとても危なっかしく見えていたのかもしれない。
――そしてついには一人で男娼館とは知らずにグレーローズに突っ込んで行ったのが不味かった。知らず知らずのうちに無防備な状態で危険地帯に踏み込んだ私を見かねて、最終的には黒将軍の異名を持つこの国最強の将軍自らが護衛を買って出るという異例の事態になってしまったのだった。
「それにしても問題は正規のルート以外で元の世界に帰る方法なんだよね……」
不安に思わずポツリと呟いてしまう。
この乙女ゲーム世界で唯一、元の世界へ帰還出来るルートに到達する為の条件は攻略対象キャラの誰かと結ばれて、結婚し女の子を産むこと。
つまり、《攻略対象キャラと結婚して女の子を出産》が必須条件となる。
――そしてその必須条件をクリアした後には更に過酷な現実が待ち受けている。
条件クリア後、用意されているルートは以下の二パターン。
ちなみに主人公は①と②、そのどちらも自由に選ぶことができる。
① バッドエンド――悲哀ルート。『元の世界に帰る』を選択。
元の世界に帰る為に、自分が産んだ女の子を自身の身代わりとして置いていくことで元の世界に戻れるパターン。攻略対象キャラの夫と子供を残して帰還。
② ハッピーエンド――情愛ルート。『元の世界に帰らない』を選択。
乙女ゲーム世界で女の子を産んだ後も元の世界に帰ること無く、表面上は攻略対象キャラの旦那様と子供と一緒に末永く仲良く暮らすことになる。
が、心理的には旦那様とそして自分が産んだ子供を置いて元の世界へ帰還することを選べず愛よりも情が先に働いてしまった結果であり、半ば強制的に乙女ゲーム世界に残された状態。本当にハッピーエンドなのかと疑いたくなる要素が満載。
この乙女ゲームでは”元の世界に帰れるルートが一つしかない”。
それも①の悲哀ルートと呼ばれるバッドエンドのみ。
そして②のハッピーエンドもハッピーエンドらしからぬ終わり方。
「何なのこの乙女ゲーム世界はっ!? エンドが全部酷いのしかというか煮え切らない中途半端な後味悪いものしか無いんですけどっ!?」
と言っても、この『女の子を産まないと帰れない!?~乙女ゲームの世界に転移しちゃいました~』略してプレイヤーの間では「のをない」(女の子を産まないと帰れないの略)と呼ばれている乙女ゲームは、18禁のゲーム恋愛部門で売上1位を獲得した超人気ゲームだ。困ったことに。
「そういえば確か他のルートはもっと中途半端なエンドだったっけ。お友達でいましょうとか攻略対象キャラ死亡とか、はたまた主人公が他の攻略対象キャラと浮気して修羅場に……うわぁ~……最悪……」
――もし目指すならこのバットエンドの悲哀ルートで帰還しかない。
でも私はそのルート以外の方法を探していた。出来るなら正規の悲哀ルートによって元の世界に帰る以外の帰還方法でお願いしたい。が、一向にそんな方法は見つからず。私は焦りと失望に落胆の思いを隠せないでいた。
「貞操守りつつ、攻略対象キャラと親密にもならず正規の悲哀ルート以外で元の世界に帰る、か……」
もしも見つからない場合は悲哀ルートを攻略出来る様に動くしかない。――ってどうやってっ!? やり方なんて分からないんですけど……
「もしかして、正規の悲哀ルート以外の帰還方法が見つからなかったら……そもそも悲哀ルートを攻略出来るかも不安なんですけど!? もし別の中途半端なルートに入っちゃったりしたらそれこそ目も当てられないじゃない……というか最早今自分がどの位の位置にいるのかそれすら分からない――だから神様は私に自由に行動していいって言ったのかな? 神様は私のことを破壊者って言ってたけどもしかして……」
――私の行動が原因でこの正規ルート自体がもう破綻しているとしたら?
不安が不安を呼んで酷い妄想に取りつかれそうになるので、私は悲哀ルートについてはなるべく考えないようにしていたのだがどうしても気になって仕方がない。
「はぁー、どうしてこんな事になっちゃったんだろう……。それにしても毎日毎日、こんなに頑張っているのになんで見つからないのよ! 帰る方法――ッ!」
ガックリと首を垂れて、思わず私は絶叫した。
悲哀ルート以外の元の世界に帰る方法を探す。と言っても実際は町で聞き込みを繰り返すだけで他に有益な方法も見つからず、立往生しているような状態だった。
「――落ち着け月瑠」
その私の絶叫を聞きつけたフェルディナンがいつの間にか後方に立っていた。
「だって、フェルディナンさん……私まだ16歳だし! 結婚とか出産とか本当に無理なんですけど!?」
後方のフェルディナンに涙目で振り返ると、私は必死な表情で唇を尖らせて訴えた。
「そうだな。月瑠の気持ちは分かっているよ。だから少し落ち着け」
困った様な顔をしてフェルディナンは子供をあやすように、私の頭をポンポンと軽く叩いて慰めた。フェルディナンの青い紫混じった瞳に優しく見られて、私は思わず視線を外してしまった。
ドキドキしているのを知られたくない――
私が今いる場所はフェルディナンが所有している屋敷だった。もう二ヶ月も立つというのにどうにも落ち着かないというか慣れない。それというのもこの屋敷が余りにも現実離れし過ぎているからだろう。
フェルディナンはこの国の将軍という立場で、住む場所はその身分にあった――相応の立派な屋敷だった。それもこの国で五本の指に入る程の立派な造りをしていて広大な面積の敷地の中に建てられている。あまりにも華やかな造りは屋敷というよりも豪邸という表現の方が正しいのかもしれないが、どうにも言い慣れないので屋敷と言うことにする。
そしてそこは元の世界で言うところの屋敷まで車で移動しないと辿り着くのに時間が掛かる――というのをそのまま体験しているような環境で。事実、門から屋敷まで馬車での移動を余儀なくされている。まあ、たまに運動がてら歩くこともあるにはあるのだが。
その屋敷の一室を貸し与えられて私はこの乙女ゲーム世界で生活していた。そして私は今その貸し与えられた部屋の机に突っ伏していた。
私はフェルディナンの大人の魅力にやられっぱなしで、心拍数が上がってドキドキしている心臓を何とか落ち着かせようと、目前の机に突っ伏して両腕を伸ばしうーんと伸びをした。伸びをした両腕に絡む華奢なつくりの西洋風ドレスの袖がひらひらと儚げに揺れて視界に入って来る。
今の私の恰好はこの乙女ゲーム世界に来た時に着ていた制服ではなく、フェルディナンに用意してもらった西洋風のドレスを着ている。綺麗で繊細な模様のあしらわれたレースやひらひらのフリルが付いた綺麗な衣装。フェルディナンは将軍ということもあってその有り余る財力で取り揃えられた西洋風の衣装はどれも豪華で高価なものしかない。
女がいない世界ではそこいらで女物の服が売っている訳もなく。フェルディナンによって揃えられた衣装は全て特注品となる。一介の高校生には余りにも分不相応な豪華な衣装を着ていると本物のお姫様にでもなった気分になる。
といっても何時も西洋風のドレスを着ている訳ではない。西洋風のドレスだと何かと動きにくくて不便なので、気軽に屋敷内を散策する程度ならむしろ制服を着ていた方が身軽でいい。その時と場合で私は制服と西洋風のドレスは着分けることにしていた。
――まあ、どちらを着るにしてもまだ西洋風のドレスの方が幾分かましというだけで、この世界では私が女である以上目立つという事に変わりはない。外套を着てフードを目深に被らなければ外出もままならないのはどちらも一緒だ。
そう言う訳で、今私が西洋風のドレスを着ているのは、本日既に情報収集の為の外出を済ませて帰ってきたからなのだが……
「異邦人の私を此処に置いてくれて、その上フェルディナンさんの傍にいることを許してくれて本当に感謝してます。でも少しも成果がないなんて何だか申し訳なくて……」
申し訳なさ過ぎて声に力が入らない。憔悴したように小声で話す私の様子を見て少し心配したのか、フェルディナンは頭に置いた手をそのままに膝を曲げて姿勢を低くすると目線を机に突っ伏している私に合わせてくれた。
「気にすることはない。そう簡単に見つかるものではないからな。ゆっくり探せばいいさ」
そう言ってフェルディナンはとても45歳とは思えない端正な美貌に優しい笑みを浮かべた。眉尻にある戦闘で受けたと思われる大きな古傷すらも格好良く見えてしまう程の美丈夫。
彼は大柄の体躯に強靭な鋼の筋肉を持つ、金髪碧眼の誉れ高い将軍で、漆黒のマントを背中に黒と金を基調とした鎧で身を包んだ姿は誰もが圧倒される。
フェルディナンは”黒将軍”と呼ばれるこの国最強の将軍だ。
今私の頭に乗せられている武骨な男の手には、眉尻の傷と同様の戦いによる古傷が幾つか刻まれている。その大きくて暖かくてがっしりした手を、やっぱり好きだなぁーと頭にその手が乗る度についつい私は思ってしまう。
「……フェルディナンさん――何だかお姉ちゃんみたい」
「月瑠には姉がいるのか?」
「はい、誄歌って名前なんですけど私とは5つ離れていて……だからかな? 面倒見がすごくよくて優しくて、仲の良い姉妹だっていつも言われてて――フェルディナンさんは初めて会った時ちょっと怖かったけど本当はお姉ちゃんみたいに面倒見がよくて優しい人だって分かったから何となくその、……思い出してしまって」
お姉ちゃんを思い出すと、元の世界に帰りたい思いが一層強くなる。少し目に涙が滲みそうになった。
「……そうか」
「そうすると、フェルディナンさんはお姉ちゃんじゃなくって――お兄ちゃんかな? それともお兄様?」
「月瑠が私の妹か……年齢的には子供でもおかしくはないな」
フェルディナンの言葉に私はうーんと頭を悩ませた。フェルディナンの子供……と言うのはどうしてかしっくりこなくて、私は眉間に皺を寄せながら複雑な顔をしてしまう。
「フェルディナンさんの子供――やっぱり妹の方がいいかな」
「……それを月瑠が望むのなら私は何方でもかまわないが」
子供でも妹でも大して変わりはないと言うようにフェルディナンは苦笑してまた私の頭をポンポンと軽く叩いた。どう考えてもフェルディナンは私を子供扱いしているようにしか思えない。
乙女ゲーム世界に転移して三日目の真夜中。部屋を訪ねて来たフェルディナンに押し倒されて、半ばけんか腰に反論していたら無理やりキスをされて――あの日以来、一度もフェルディナンは私に手を出そうとはしなかった。それどころかすっかり子供扱いに戻っている。
やっぱりそうなんだよね……
って私は何を考えているんだろう。好きになったらダメなんだってばっ! 好きになってそのまま流されてしまったらきっと元の世界に帰れなくなる。……帰りたいけれど帰れなくなる。
正にそれって乙女ゲーム世界の主人公と同じ情愛ルートそのもののような気がした。最も今の段階では情が先なのかそれとも愛が先なのか、気持ちが複雑過ぎてどちらに比重が傾いているのか判断できない。
だからフェルディナンが子供扱いしてくれることは願ったり叶ったりなのに、それが寂しかったり恋しかったりするなんて――矛盾してる。
段々と抑えられなくなっている自分の心に正直目眩がする。
――私、フェルディナンさんのこと諦めるしかないんだよね。
そう思った時、胸にツキンと痛みが走ったような気がして思わず口から声が漏れてしまった。
「――えっ?」
「……? 月瑠?」
私の異変を敏感に察知したのか、フェルディナンが顔を覘き込んできた。
「えっと、……何でもないです」
「そうか」
この乙女ゲーム世界に来てからの二ヶ月の間で、私とフェルディナンとの間には奇妙な親子関係のような絆が結ばれていた。
それというのも、フェルディナンは私が外に出る時は何時も近くにいて片時も傍を離れず、私の護衛をしながら黙々と仕事を熟す風景が黒衣の軍の中でも日常的になりつつある位に互いの距離感が非常に近かったせいもある。
その位近くに何時もいるせいなのか、普段の行動が危なっかしく映るのか、どうやら私はフェルディナンの保護欲を相当に掻き立ててしまったようだ。今となっては雛を守る親鳥のようにフェルディナンは私が外出する時は絶対に私の傍を離れようとしないし、屋敷内にいる時もそれぞれの部屋で過ごせばいい筈なのに何故か最終的には一緒に過ごしていることが多かった。
将軍という地位に付いているフェルディナンは戦いの現場へ赴く事が多いのだが、そんなフェルディナンの傍でちょこまかと動き回る私を鬱陶しがらずに、粗雑に扱う事もなくフェルディナンは私の好きなようにさせてくれた。母性本能の代わりとでもいうべきなのだろうか、女がいない男しかいない世界だから男性も頗る優しい人が多い気がする。
そう言った訳で一緒にいる時間が長い分、私達はかなり打ち解けあって仲良くなっていた。
それにしてもフェルディナンは私を甘やかすことに長けていると私は常々感じていた。ちなみに私がそう思う理由の一つがこれだ。
「そう言えば、心配させまくっている自覚はあるのですが……私の部屋の隣に一時的にとはいえ引っ越してくるのは、いかがなものかと思うのですが……?」
どうしてフェルディナンが先程の私の絶叫に即座に反応できたのかというとそういう訳だった。
暗にやりすぎだと示唆しているのだが、フェルディナンは聞き入れてはくれない。本来、フェルディナンが使用している部屋は屋敷の中でも一番広く立派な部屋だ。屋敷の中心部に位置するその部屋から出て、別の部屋に引っ越してくるなど普通ならありえない行為だった。
「自覚があるのならば、少しは自制してもらいたいものだがな」
私の指摘をさらっと流すとフェルディナンは立ち上がって扉の方へすっと視線を向けた。
「もしかしてこれから外出するんですか?」
「ああ、少し市街地を視察に回るんだ。月瑠は此処で待っていてくれ」
「市街地の視察? 何かあったんですか?」
「最近、一部の地区の治安が悪化している。主に強盗や物取りといった小物の類なんだが放置するわけにもいかない。一時的な事だとは思うのだが念のための視察だ」
「ふーん……私も行きた――」
「だめだ」
私が皆まで言う前にフェルディナンが低い制止の声を上げた。それも少し怖い顔できっぱりと告げるフェルディナンに私は構わず聞き返した。
「えーっと、何でですか?」
「危険だからだ」
彼に慣れていない人ならその迫力に物怖じしそうなところなのだが、私はこの二ヶ月の間で大分フェルディナンに慣れてきたこともあって、多少のことなら何ともない位に受け止められるようになっていた。
それに何よりフェルディナンはとにかく私に甘い。年齢差のせいなのか子供としか思っていないせいなのか、それとも私が異邦人だからなのか。理由は分からないけれど私はそれに付け込んでいた――つまり私はフェルディナンに思いっ切り甘えきってしまっていた。
それをフェルディナンが嫌な顔一つせずに笑って受け止めて、許してくれるから私もついつい際限なく甘えてしまうという。甘える甘えさせるを永遠と繰り返す。所謂甘えの連鎖がここ最近の私とフェルディナンの間には発生していた。
お願いですから甘えるの少しは止めようとしてくれませんか?
なんて自分勝手なことを心の中で思ったものの、その心地よさにどっぷりつかって最早抜け出すことが出来ないところまで来てしまっていた。
「えっ? でも何時もは小競り合いになりそうな場所にも付いて行ってましたし、今回は視察なんですよね? だったら……」
「今回はだめだ」
「どうしてもですか?」
「ああ」
「…………」
私は無言でジーとフェルディナンを見つめて不満だと訴えた。
するとやがて根負けしたようにフェルディナンが硬い表情を崩した。困った顔で眉を半ば顰めながら紫混じる青い宝石のように綺麗な瞳を向けてくる。
「……月瑠、頼むから聞き分けてくれないか?」
そう言ってフェルディナンは私の額にそっと口づけてきた。
「……っ! ――フェルディナンさん前から思ってたんですけど……」
「?」
「どうしてそう何かある度に額にキスしてくるんですかっ!? ……もしかしてこの世界では額にキスするのは挨拶と一緒なんですか? あっ! それともそういうキスの習慣でもあるのでしょうか? ということは私も誰かに会った時にした方がいいのでしょうか?」
「……私もそんな習慣は聞いたことがない。それとそんなことは誰かに会った時も絶対にしなくていい」
何故だか”絶対にしなくていい”の部分に強い意志を感じて少し戸惑ってしまう。
「そ、そうなんですか? だってフェルディナンさん余りにもその、手慣れている感じがして……」
私の言葉を聞いてフェルディナンは無言で静かに頭を押さえた。
「……勘違いされても困る。私がこんなことをするのは月瑠しかいないんだが」
「それって私のこと完全に子供扱いしてますよね?」
むーっと頬を膨らませて怒った顔をしていると、フェルディナンは頭を押さえていた手をどけて、代わりにその手を私の膨らんでいる頬に添えてきた。
「――月瑠」
「はい」
「とにかく月瑠は此処にいてくれ。いいな?」
「…………」
膨れっ面のまま一向に返事をしない私に、フェルディナンは仕方ないなという顔をして私のおでこに自身のおでこをコツンと当てた。
「月瑠、約束だ。早く帰って来るから。だから君は此処にいてくれ。絶対に屋敷から抜け出したり付いて来ようとはするな。いいな?」
「……はい」
返事を返しつつも不満たらたらですと構ってもらえず剥れていじけている子猫のような視線をフェルディナンに送ると、彼は苦笑してもう一度子供をあやす体で私の額に口づけた。そしてその紫混じった青い瞳を細めて目だけで再度私に付いて来るなと警告すると漆黒のマントを翻し部屋を出て行ってしまった。
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