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29. アジョワン
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それからあっという間にアジョワン様を迎える日となった。
僕は「(アジョワン様ってどんな人なんだろう…騎士団の幹部ってことだからガタイのいい人なのかなぁ…。」とドキドキしていた。
そういえばキーワ様を見送ったその日の内にキーワ様から手紙が届いた。
なんでも、どうにかして予約してる2人に僕のことを諦めるよう交渉したが駄目だったということ、僕には身体は許しても心だけは許さないでくれ、という懇願内容が綴られていた。
「(キーワ様…僕が誰の相手をするかナックスさんに聞いたんだ…多分、聞いたっていうか脅したんだろうな…。)」
と手紙を読んだ瞬間そう思った。
それから18時となり、アジョワン様が受付に現れたという知らせを受けた。先日と同様、僕はアジョワン様に対して決められた自己紹介内容を告げる。
「本日は当店にお越し下さり、誠にありがとうございます。私はヨウと申します、宜しければ私のことはヨウとお呼び下さい。アジョワン様、顔を上げても宜しいでしょうか?」
「ええ、構いません。」
その返事を受け、僕は下からゆっくりアジョワン様の体型を確認しながら顔を上げる。すると、そこには体格がいいどころか細身の綺麗な男性が立っていた。
「(…予想外。)」
僕は内心の動揺を悟られないよう笑顔を作る。
「ありがとうございます、アジョワン様。」
僕はアジョワン様に近寄ると「何かお飲みになりますか?」と伺う。
「では、ワインを。」と言われたのでグラスに用意して差し出した。その時「ヨウさんもどうぞ。」と言われたのでありがたく頂く。
といっても僕は元々お酒が得意ではないのでグラス一杯ほどで酔いがまわった。その様子にアジョワン様はクスッと笑うと「ワインは得意ではなかったですか?」と僕の赤くなった頰を撫でる。
「んっ…もっ…申し訳ございません。」
「フフッ…いいのですよ。お酒に慣れていない姿も初々しくて可愛らしい。」
と微笑む。機嫌を損ねてはいないようだ。
僕はアジョワン様のその笑みに見惚れるながら「…アジョワン様はとてもお綺麗ですね。」と零す。
アジョワン様はフッと自嘲気味に笑うと「まぁ騎士団の中では細身の方ですからね、よく声は掛けられます。ですが、私は自分より大きい方は好みではないのでこうやって娼館を訪れるのですよ。騎士団はガタイの大きい者ばかりで暑苦しい。」とアジョワン様は苦い顔をする。それが彼の本心のようだ。
「…あの…アジョワン様はどうしてあの日ここへ?」
「ああ…あの日はこの辺りを見回りしていたんです。すると何名かの獣人が集団で走っていくのが見えまして怪しいと思って追いかけたんです。すると、この娼館から好ましい匂いが香ってきて気付くと私も娼館の扉を叩いていました。私は今まで我を忘れる程の香りに出会ったことがなかったので、同僚も驚いてました。そして何名かの獣人を帰宅するよう促し、その後はヨウさんもご存知の通り、店主にヨウさんのお相手をさせてもらうように交渉した、というわけです。
そして今日、初めてヨウさんの姿を見て納得しました、やはり貴方は可愛らしくて私の好きな香りを纏っています。」
アジョワン様は僕の首筋に鼻を擦り付けると「ハァー…。」と吐息を零す。
「…それにしてもヨウさんはキーワ様にとても気に入られてるようですね?」
「…えっ?
(どうしよう…はい、って答えていいのかな?本当はお客様の個人情報だから言っちゃいけないけど、もうバレてるんだよね…。)」
「私の元にキーワ様が来られました、ヨウさんとの予約を取り消せと。」
「(えぇ!?キーワ様、そんなことしてたの!?)
そっ…そうなんですか…ご迷惑をお掛けしました…。」
と僕が謝るとアジョワンは「いえいえ。」と気にした様子もない。
「キーワ様は愛情深い方として有名です、気に入った方がいたら近付けたくないというのが本能です。それは私だって言えること、気に入れば一生その方としか添い遂げません。正直、ヨウさんが私のそういう方であるかはまだ分かりませんが、その香りはとても魅力的であることは事実です…そろそろ私も香りにあてられてきました…始めても宜しいですか?」
アジョワン様はそう言うと早急に僕に口付ける。
僕は「(アジョワン様ってどんな人なんだろう…騎士団の幹部ってことだからガタイのいい人なのかなぁ…。」とドキドキしていた。
そういえばキーワ様を見送ったその日の内にキーワ様から手紙が届いた。
なんでも、どうにかして予約してる2人に僕のことを諦めるよう交渉したが駄目だったということ、僕には身体は許しても心だけは許さないでくれ、という懇願内容が綴られていた。
「(キーワ様…僕が誰の相手をするかナックスさんに聞いたんだ…多分、聞いたっていうか脅したんだろうな…。)」
と手紙を読んだ瞬間そう思った。
それから18時となり、アジョワン様が受付に現れたという知らせを受けた。先日と同様、僕はアジョワン様に対して決められた自己紹介内容を告げる。
「本日は当店にお越し下さり、誠にありがとうございます。私はヨウと申します、宜しければ私のことはヨウとお呼び下さい。アジョワン様、顔を上げても宜しいでしょうか?」
「ええ、構いません。」
その返事を受け、僕は下からゆっくりアジョワン様の体型を確認しながら顔を上げる。すると、そこには体格がいいどころか細身の綺麗な男性が立っていた。
「(…予想外。)」
僕は内心の動揺を悟られないよう笑顔を作る。
「ありがとうございます、アジョワン様。」
僕はアジョワン様に近寄ると「何かお飲みになりますか?」と伺う。
「では、ワインを。」と言われたのでグラスに用意して差し出した。その時「ヨウさんもどうぞ。」と言われたのでありがたく頂く。
といっても僕は元々お酒が得意ではないのでグラス一杯ほどで酔いがまわった。その様子にアジョワン様はクスッと笑うと「ワインは得意ではなかったですか?」と僕の赤くなった頰を撫でる。
「んっ…もっ…申し訳ございません。」
「フフッ…いいのですよ。お酒に慣れていない姿も初々しくて可愛らしい。」
と微笑む。機嫌を損ねてはいないようだ。
僕はアジョワン様のその笑みに見惚れるながら「…アジョワン様はとてもお綺麗ですね。」と零す。
アジョワン様はフッと自嘲気味に笑うと「まぁ騎士団の中では細身の方ですからね、よく声は掛けられます。ですが、私は自分より大きい方は好みではないのでこうやって娼館を訪れるのですよ。騎士団はガタイの大きい者ばかりで暑苦しい。」とアジョワン様は苦い顔をする。それが彼の本心のようだ。
「…あの…アジョワン様はどうしてあの日ここへ?」
「ああ…あの日はこの辺りを見回りしていたんです。すると何名かの獣人が集団で走っていくのが見えまして怪しいと思って追いかけたんです。すると、この娼館から好ましい匂いが香ってきて気付くと私も娼館の扉を叩いていました。私は今まで我を忘れる程の香りに出会ったことがなかったので、同僚も驚いてました。そして何名かの獣人を帰宅するよう促し、その後はヨウさんもご存知の通り、店主にヨウさんのお相手をさせてもらうように交渉した、というわけです。
そして今日、初めてヨウさんの姿を見て納得しました、やはり貴方は可愛らしくて私の好きな香りを纏っています。」
アジョワン様は僕の首筋に鼻を擦り付けると「ハァー…。」と吐息を零す。
「…それにしてもヨウさんはキーワ様にとても気に入られてるようですね?」
「…えっ?
(どうしよう…はい、って答えていいのかな?本当はお客様の個人情報だから言っちゃいけないけど、もうバレてるんだよね…。)」
「私の元にキーワ様が来られました、ヨウさんとの予約を取り消せと。」
「(えぇ!?キーワ様、そんなことしてたの!?)
そっ…そうなんですか…ご迷惑をお掛けしました…。」
と僕が謝るとアジョワンは「いえいえ。」と気にした様子もない。
「キーワ様は愛情深い方として有名です、気に入った方がいたら近付けたくないというのが本能です。それは私だって言えること、気に入れば一生その方としか添い遂げません。正直、ヨウさんが私のそういう方であるかはまだ分かりませんが、その香りはとても魅力的であることは事実です…そろそろ私も香りにあてられてきました…始めても宜しいですか?」
アジョワン様はそう言うと早急に僕に口付ける。
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