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第一章 OBEY

第九話 徳川御三家

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 つまり、同じ京都守護職の会津若松藩主配下とはいえ、事実上、壬生浪士組はろくを受けない無頼者の集団だ。


「幕府の歴とした遠国奉行おんごくぶぎょうであらせられる、京都町奉行の与力殿が、非正規の壬生浪士組に検断権を譲渡するなどできないと?」
 
 温厚な沖田が珍しくいきりたったその刹那、店の中から前髪の彼が駆けつけるなり、番傘を差す与力の袖に縋りつく。

「でしたら、私も千尋ちひろさんと一緒にお連れ下さい!」
久藤くどう様……っ!?」
「お願いですから、どうか私も……」
 

 先程までの殺気を葬り去り、可憐な上目使いで哀訴する。

「馬鹿を言うな!」
 
 蔦屋つたやは、すぐさま怒鳴りつけた。

 だが、彼は蔦屋の主人をいさめるように冷然とした目で一瞥し、再び与力よりきに詰め寄った。


「私も二人斬りました。ですから私も同罪です」
「しかし、……久藤様を、町人の蔦屋と同罪というわけには参りません」
「ですから、この通り。後生でございます。本間ほんま様!」
 
 蔦屋に対しては、傲然として振る舞った与力の本間の腰が、引けている。

 そのうち久藤と呼ばれた前髪は、困惑しきりの与力に痺れを切らしたように、ぬかるんだ道に直に座ると平伏した。

「私もお連れ頂けないのでしたなら、千尋さんが戻って来るまで、こうしてここで待つまでです」
佑輔ゆうすけ、やめろ……!」
「ですが、あなた様は、水戸藩附家老みとはんふかろう久藤家の御三男で、あらせられます。抜刀ばっとうして、とがを受ける御身分ではございません」

 沖田は与力の口から、水戸藩附家老の身分を明かされ、絶句した。


 尾張、紀州、水戸の、いわゆる御三家水戸藩附家老の若君が、町奉行如きに平身低頭せがんでいる。

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