皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

文字の大きさ
3 / 306
第一章 必ず勝てる賭け

第3話 貧民窟の美少年

しおりを挟む
 だが、サリオンの母国のクルムでは、アルファとベータとオメガに外見上の違いはない。


 クルムはテオクウィントス帝国の北に位置する小国だったが、ローマ帝国に匹敵する国力を誇る、テオクウィントス帝国に侵略され、属国化されて、滅亡した。
 

 そのクルム国でサリオンも、多くのクルム国民とともに捕虜にされ、帝国のアルファ階級やベータの富裕層に、奴隷として売られた他民族だ。


 半袖膝丈の 貫頭衣かんとういから、すらりと伸びた長い手足は、絹のように艶めく白い肌だと たたえられ、さほど長身でもない体型は、この国の典型的なオメガ性の特徴だけれど、髪はゆるい巻き毛の金髪で、瞳の色も薄碧。

 この国ならば、自分はベータだと言い張れば、それで通ってしまうだろう。

 ベータの男は、ベータ男性とは性交しない。
 オメガの十代から三十代前半までの男性が、三週間に一度、七日間ほど発情し、交尾相手を求めるフェロモンを発する間のみ、オメガのフェロモンに触発され、繁殖行為に至ることもあるだけだ。


 ベータの男はベータ性の女性と性交し、ベータ性の子供をもうける性であり、階級だ。


 サリオンはオメガ性だが、アルファやベータを興奮させたりしないよう、フェロモンの 経口抑制剤けいこうよくせいざいを飲んでいる。 
 だから、こうして酒の席をともにするベータの男を、欲情させる恐れはない。


 それはわかっているのだが、何しろ自分の見た目や若さが、男の劣情をそそるに充分な条件を、満たしているのは自分がいちばんわかっている。

 男女の見境なくサカる男に目をつけられたら、フェロモンを発していなくても、襲われないとは限らない。
 自分より確実に弱い相手、階層が低い相手を痛めつける行為そのもので、性的に興奮し、快感を得る たちの悪い やからもいる。

 フェロモンの抑制剤を飲んでいても、安心だとは言い切れない。


 だから、オメガではなくベータだと、強引にでも通した方が、強姦される危険は多少なりとも 忌避きひできる。
 そのため、サリオンは自分はオメガだとも言ってはいないが、ベータだとも言っていない。
 本当のことさえ言わなければ、身分を偽ったとして刑罰に処せられることもないからだ。

「さぁね。オメガの若い男が全員アルファ階級になりたくて、目の色変えるかどうかだなんて、わかんねぇな」

 サリオンは多少の皮肉を込めて言う。
 自分がそうではないからだ。


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

僕がそばにいる理由

腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。 そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。 しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。 束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。 愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】運命の番に逃げられたアルファと、身代わりベータの結婚

貴宮 あすか
BL
ベータの新は、オメガである兄、律の身代わりとなって結婚した。 相手は優れた経営手腕で新たちの両親に見込まれた、アルファの木南直樹だった。 しかし、直樹は自分の運命の番である律が、他のアルファと駆け落ちするのを手助けした新を、律の身代わりにすると言って組み敷き、何もかも初めての新を律の名前を呼びながら抱いた。それでも新は幸せだった。新にとって木南直樹は少年の頃に初めての恋をした相手だったから。 アルファ×ベータの身代わり結婚ものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...