皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第一章 必ず勝てる賭け

第15話 奴隷のくせに

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「そりゃあ、あんたはいつも、暗殺や襲撃に合う心構えは、あるだろう。だけど、俺みたいに強請ゆすりや強姦や殴られる恐怖に、四六時中さらされることはないからな。だから、俺の身に降りかかる危険なんて頭になくて、平気で顔を出しやがる」

「貴様! 陛下に対して何だ、その口の利き方は! 奴隷のくせに、わきまえろ!」

 たまりかねたかのように声を荒げ、若い護衛兵が一歩前に進み出た。
 顎を突き出し、食ってかかる、血気盛んな兵士が目の前に迫っても、サリオンはせせら笑いを浮かべて答える。


「私は、アルベルト陛下の御望みとあれば、今すぐにでも口の利き方も改めさせて頂きます。隷属国クルムから連れて来られた奴隷として、しかるべき礼節をもって、皇帝陛下にお仕え申し上げる所存にございます」

「待て、サリオン!」

 兵士を挑発さえする二人の間にアルベルト自身が割り入った。そして、彼が声高にいさめたのは、サリオンではなく、罵声を浴びせた若い兵士の方だった。


「サリオンに、俺と対等に口を利くよう命令したのは、この俺だ。彼は、その俺の命に忠実に従ってくれている。それは、お前達も承知している話のはずだ。俺の預かり知らない所で万が一、制裁なんてしようものなら、首が飛ぶのは、お前達だ」

 アルベルトはたかのように鋭い目つきで、護衛兵を恫喝どうかつした。サリオンに食ってかかった若い兵士は忌々しげだが、口を歪めて目を伏せる。

「申し訳ございませんでした。出過ぎた真似を致しました、陛下」

「肝に銘じて下がっていろ」


 それでもアルベルトは腹の虫が収まらないといった顔つきだ。
 非を認めたはずの護衛の兵士を、目つきで咎めるアルベルトに、サリオンは辟易へき辟易えきした。


 護衛兵にしてみれば、奴隷のオメガに骨抜きにされ、機嫌取りばかりする君主が歯痒いのだろう。
 彼等は自分の命を盾にして、皇帝アルベルトを守護している。それが彼等にとっての誇りの源。

 それなのに、その神にも等しい存在が、誇るべき帝国の皇帝が、オメガの言いなりになっている。

 そんなアルベルトの言動の、ひとつひとつが彼等を傷つけ、悔しい思いをさせているのか、我が道を行く皇帝は、やはり思い至らない。

 だからサリオン自身も、もどかしくなる。やるせなくなる。

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