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第一章 必ず勝てる賭け
第19話 また今夜
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公娼が帝国の市街地に新設され、アルベルトも通うようになってから、公務以外の理由で公娼に、現れない日はなかったといっても過言ではない。
宮殿の後宮で、皇帝からの寵愛を奪い合った女官は全員死去したが、オメガの美少年や美青年等がアルベルトを筆頭に、王侯貴族の寵を得ようと着飾って、夜毎待ちわびているはずだ。
その後宮に赴けば、公娼で金など出さずに好きなだけ皇太子作りに専念できる。
それなのに、どうしてわざわざそこまでと、サリオンが呆れ顔で目を見張るなり、アルベルトは憂いを帯びて沈んだ顔を、心持ち和らげた。
「俺がお前に会える場所は、今の所はここしかない」
切なげに双眸を細め、掲げたサリオンの指先に口づける。
離された唇が微かに立てた濡れた音が、心の琴線を震わせる。サリオンは不覚にもときめいた。
「また今夜、会いに来る」
アルベルトはサリオンの頬にもキスを落とし、トガの裾をひるがえしながら 踵を返した。尽きない未練を断ち切るような広い背中だ。
アルベルトが馬車に戻った時には、御者が慇懃に扉を開けて頭を下げつつ、皇帝の乗車を待ち受ける。
アルベルトは振り返らずに馬車に乗り込み、御者が静かに扉を閉めた。そして、素早く御者台に戻った男が、二頭引きの馬の手綱を強く引くなり声を張り、程なく馬車を走らせた。
裏口に佇むサリオンに、アルベルトは、馬車の窓から物言いたげな眼差しを寄越したが、サリオンは見せつけるようにキスされた頬を手の甲で、ぐいと拭って睨みを利かせる。
妙な空気に流された、自分が自分で腹立たしかった。忌々しかった。
あの男が持つ存在感に圧倒され、気づいた時には、頭から呑み込まれそうになりかける。
だからこそ、もっと自分を戒めなければならないと、固く唇を引き結び、アルベルトの視線を跳ねのけた。
去り行く彼と目が合ったのは一瞬だ。
頬を拭った自分に対してアルベルトが見せた表情までは、わからない。
皇帝を乗せた馬車は、車輪と蹄ひづめの音をさせながら、すぐに視界から遠のいた。
サリオンも公娼内の自分の部屋で、昼営業の支度が始まる朝の八時まで仮眠を取るべく、裏口に足を向けかけたのだが、裏口のドアを押し開けて、館の中から華奢な誰かが表に出て来た。
宮殿の後宮で、皇帝からの寵愛を奪い合った女官は全員死去したが、オメガの美少年や美青年等がアルベルトを筆頭に、王侯貴族の寵を得ようと着飾って、夜毎待ちわびているはずだ。
その後宮に赴けば、公娼で金など出さずに好きなだけ皇太子作りに専念できる。
それなのに、どうしてわざわざそこまでと、サリオンが呆れ顔で目を見張るなり、アルベルトは憂いを帯びて沈んだ顔を、心持ち和らげた。
「俺がお前に会える場所は、今の所はここしかない」
切なげに双眸を細め、掲げたサリオンの指先に口づける。
離された唇が微かに立てた濡れた音が、心の琴線を震わせる。サリオンは不覚にもときめいた。
「また今夜、会いに来る」
アルベルトはサリオンの頬にもキスを落とし、トガの裾をひるがえしながら 踵を返した。尽きない未練を断ち切るような広い背中だ。
アルベルトが馬車に戻った時には、御者が慇懃に扉を開けて頭を下げつつ、皇帝の乗車を待ち受ける。
アルベルトは振り返らずに馬車に乗り込み、御者が静かに扉を閉めた。そして、素早く御者台に戻った男が、二頭引きの馬の手綱を強く引くなり声を張り、程なく馬車を走らせた。
裏口に佇むサリオンに、アルベルトは、馬車の窓から物言いたげな眼差しを寄越したが、サリオンは見せつけるようにキスされた頬を手の甲で、ぐいと拭って睨みを利かせる。
妙な空気に流された、自分が自分で腹立たしかった。忌々しかった。
あの男が持つ存在感に圧倒され、気づいた時には、頭から呑み込まれそうになりかける。
だからこそ、もっと自分を戒めなければならないと、固く唇を引き結び、アルベルトの視線を跳ねのけた。
去り行く彼と目が合ったのは一瞬だ。
頬を拭った自分に対してアルベルトが見せた表情までは、わからない。
皇帝を乗せた馬車は、車輪と蹄ひづめの音をさせながら、すぐに視界から遠のいた。
サリオンも公娼内の自分の部屋で、昼営業の支度が始まる朝の八時まで仮眠を取るべく、裏口に足を向けかけたのだが、裏口のドアを押し開けて、館の中から華奢な誰かが表に出て来た。
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