皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

文字の大きさ
18 / 306
第一章 必ず勝てる賭け

第19話 また今夜

しおりを挟む
 公娼が帝国の市街地に新設され、アルベルトも通うようになってから、公務以外の理由で公娼に、現れない日はなかったといっても過言ではない。

 宮殿の後宮で、皇帝からの寵愛を奪い合った女官は全員死去したが、オメガの美少年や美青年等がアルベルトを筆頭に、王侯貴族の寵を得ようと着飾って、夜毎待ちわびているはずだ。

 その後宮に赴けば、公娼で金など出さずに好きなだけ皇太子作りに専念できる。

 それなのに、どうしてわざわざそこまでと、サリオンが呆れ顔で目を見張るなり、アルベルトは憂いを帯びて沈んだ顔を、心持ち和らげた。


「俺がお前に会える場所は、今の所はここしかない」

 切なげに双眸を細め、掲げたサリオンの指先に口づける。
 離された唇が微かに立てた濡れた音が、心の琴線を震わせる。サリオンは不覚にもときめいた。


「また今夜、会いに来る」

 アルベルトはサリオンの頬にもキスを落とし、トガの裾をひるがえしながら きびすを返した。尽きない未練を断ち切るような広い背中だ。


 アルベルトが馬車に戻った時には、御者が慇懃に扉を開けて頭を下げつつ、皇帝の乗車を待ち受ける。
 アルベルトは振り返らずに馬車に乗り込み、御者が静かに扉を閉めた。そして、素早く御者台に戻った男が、二頭引きの馬の手綱を強く引くなり声を張り、程なく馬車を走らせた。


 裏口に佇むサリオンに、アルベルトは、馬車の窓から物言いたげな眼差しを寄越したが、サリオンは見せつけるようにキスされた頬を手の甲で、ぐいと拭って睨みを利かせる。


 妙な空気に流された、自分が自分で腹立たしかった。忌々しかった。
 あの男が持つ存在感に圧倒され、気づいた時には、頭から呑み込まれそうになりかける。

 だからこそ、もっと自分を戒めなければならないと、固く唇を引き結び、アルベルトの視線を跳ねのけた。

 去り行く彼と目が合ったのは一瞬だ。
 頬を拭った自分に対してアルベルトが見せた表情までは、わからない。

 皇帝を乗せた馬車は、車輪と蹄ひづめの音をさせながら、すぐに視界から遠のいた。

 サリオンも公娼内の自分の部屋で、昼営業の支度が始まる朝の八時まで仮眠を取るべく、裏口に足を向けかけたのだが、裏口のドアを押し開けて、館の中から華奢な誰かが表に出て来た。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...