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第一章 必ず勝てる賭け
第24話 なぶり殺し
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「俺の 番のユーリスは、テオクウィントス帝国の軍人に、なぶり殺しにされたんだ。その侵略国の皇帝の愛人になんて、死んでもならない。だから、レナ。アルベルトが俺をどんなに口説いてきても大丈夫だ。俺は、アルベルトだけは許さない」
サリオンはレナの滑らかな金髪を梳き撫でながら言い聞かせた。
声に出して言うたびに、アルベルトへの憎悪がみなぎる。そして同時に、ついさっき、アルベルトが持つ抗い難い魔力に毒され、鼓動を昂ぶらせていた自分を深く恥じ入った。
「だけど、お前がアルベルトをそれほど好きなら、アルベルトの番になれるように手を尽くす。大丈夫だから、心配するな」
「……サリオン」
ようやく顔を上げたレナの頬が、可憐な涙で濡れていた。
アルベルトはレナの気持ちを知りながら、公娼において最高位の昼三男娼のレナではなくて、奴隷の側付きにばかり、つきまとう。
だからといって公娼における規律として、売りものの男娼以外に、手を出す行為は許されない。
公娼では、ダビデが提督だろうと、アルベルトが皇帝だろうと、その規律にだけは従わざるを得なかった。
このような独立した権限を与えた当人が、売りものではない奴隷の下男にまとわりついて何になる。
今や帝国一の美少年と、 誉も高いオメガのレナに、 籠絡されたと、笑われたくない虚栄心から、レナを焦らしているだけか。
誰から見てもレナの方から自分に堕ちたと、思わせたいが為だけか。
だとしたら、その目的は充分達成されているはずなのに、レナを袖にし続ける。
サリオンは、レナが寝そべる長椅子の前で膝をつき、レナの頭をかき寄せた。
何事においても、常に行動の真意を悟らせない。それが広大な領土を統治する皇帝の度量といったものなのか。
「お前が幸せになれるなら、どんなことでもしてやるから」
サリオンは故国を滅ぼし、最愛の恋人を奪った仇の国の皇帝に、たじろぎながらも 渾身の力で跳ね除けるべく、固く奥歯を食いしばる。
そして、肩口に抱き寄せたレナの濡れた金髪に、決意も新たに口づけた。
サリオンはレナの滑らかな金髪を梳き撫でながら言い聞かせた。
声に出して言うたびに、アルベルトへの憎悪がみなぎる。そして同時に、ついさっき、アルベルトが持つ抗い難い魔力に毒され、鼓動を昂ぶらせていた自分を深く恥じ入った。
「だけど、お前がアルベルトをそれほど好きなら、アルベルトの番になれるように手を尽くす。大丈夫だから、心配するな」
「……サリオン」
ようやく顔を上げたレナの頬が、可憐な涙で濡れていた。
アルベルトはレナの気持ちを知りながら、公娼において最高位の昼三男娼のレナではなくて、奴隷の側付きにばかり、つきまとう。
だからといって公娼における規律として、売りものの男娼以外に、手を出す行為は許されない。
公娼では、ダビデが提督だろうと、アルベルトが皇帝だろうと、その規律にだけは従わざるを得なかった。
このような独立した権限を与えた当人が、売りものではない奴隷の下男にまとわりついて何になる。
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誰から見てもレナの方から自分に堕ちたと、思わせたいが為だけか。
だとしたら、その目的は充分達成されているはずなのに、レナを袖にし続ける。
サリオンは、レナが寝そべる長椅子の前で膝をつき、レナの頭をかき寄せた。
何事においても、常に行動の真意を悟らせない。それが広大な領土を統治する皇帝の度量といったものなのか。
「お前が幸せになれるなら、どんなことでもしてやるから」
サリオンは故国を滅ぼし、最愛の恋人を奪った仇の国の皇帝に、たじろぎながらも 渾身の力で跳ね除けるべく、固く奥歯を食いしばる。
そして、肩口に抱き寄せたレナの濡れた金髪に、決意も新たに口づけた。
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