皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第三章 争奪戦

第19話 決してひとりで逝かせない

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 クリストファーがレナを買ったのは三時間。

 饗宴は、前菜からデザートまで出し終えるまでに最短でも二時間かかる。
 また、公娼では男娼は、一時間単位で買うよう定められている。

 今夜、双方合わせて最も短い時間に指定したのは、クリストファーが多忙だからか、金の余裕がないからなのかは、わからない。

「クリストファー様は貴族といっても、家柄自体は高くもなければ低くもない。昼三を三時間買うのはキツイんだろ。だったら、少しでも早く床入りさせてやった方が感謝される」


 見番役はサリオンの心中を読んだように言いながら、テーブルに設置した振り子時計に目をやった。


「床入りは午後七時。……ってことは、床引けは八時だな」

「そうなるな」


 公娼のオメガが産んだ子が、誰の子供であるのかを証明するため、見番役は床入り時刻と退室時間を記帳する。

 オメガの男は、アルファやベータの子供を身籠ると、受胎した日の二百日後に出産する。
 しかも射精された時刻から、二百日後の同時刻に破水が始まる正確さだ。

 だから、どの男娼が、何月何日の何時に誰と床入りし、何時に房事を終えたのか、公娼では公文書として記録する。

 公娼の男娼達は、一晩で何人客を取ろうとも、出産した際、記録をたどれば、どの客の子供であるかが判明する。



 この館は、子供のいないアルファや富裕層のベータの子息達が、選りすぐりの若いオメガに跡継ぎを産ませるため、国が設けた公的機関だ。
 見番に報告するたび、それを痛感させられる。


 アルベルト以外の客を取らざるを得ない時、レナは内密に避妊薬を呑んでいる。

 妊娠する可能性は限りなく低くても、表向きはこうして見番役に報告している。

 レナは、あくまで妊娠も出産もできる健康で若いオメガなのだが、残念ながら未だに受胎に至っていないと、言い張るための偽装作。
 ただし、そんな言い訳が、いつまで通用するのかに、なるのだが。


 避妊薬服用疑惑が事実だったと判明すれば、レナは重罪人として捕らえられ、円形闘技場で柱に縛りつけられ、生きながら猛獣に食い殺される『見世物』にされてしまうだろう。

 いわゆる公開処刑に処されるのだ。

 アルベルトのように一晩買い占められれば、床入り時刻も退室時間も知らせる必要はないのだが、連日連夜、昼三を買い占める財力を持つ男など、国中探しても五本の指に入るかどうかだ。


 レナの側付きも廻しも兼ねるサリオンは、今夜レナが誰と何時に床入りしたのかも、何時に客が退室したのかも、見番役に何食わぬ顔で言い述べる。

 禁忌を犯せばレナと同じ末路が待っている。

 それでもサリオンは決してレナを一人で逝かせはしないと、とっくに腹をくくっている。


「だけど、クリストファー様はレナ様を身請けする金を用意しようとされていて、ここでは散財されないだけかもしれないな」

 サリオンも、振り子時計に視線を移して呟いた。

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